北米留学上級技術マニュアル - Financial Aidの交渉をする
目次
手広く声をかけておく↑
学内奨学金の出所は、大学、学部、学科などさまざまである。Assistantshipも、自分の学科だけでなく他の学科の仕事にも申し込めるので、やはり手広く調べておく必要がある。奨学金の方は時期が一定しているし大学がまとめて資料を作成している場合が多いのに対して、assistantshipは必ずしも定期的に求人しているわけではなく(秋からはじまることが多いが)求人も学科ごとにやっているので、仕事のありそうな部署にひとつひとつ連絡して情報を集める他ない。いますぐ仕事はないにしても、履歴書を相手に渡しておいて、将来求人があったら連絡してくれるように頼んでおくこともできる(とはいっても、相手がそれを覚えているとは限らないから、定期的に問い合わせる必要はある)。こういう時、整った英文履歴書が手元にあるとラクである。
Assistantshipのセールスポイント↑
理工系なら専門分野の実験や分析技術が売り物になるが、いわゆる人文社会系の学科でも、コンピューターの技術をもった人間に対する需要が増えている。Business, Commerceなどの学科では、リレーショナル・データベースや3次元スプレッド・シートの用法に精通した人間は重宝がられる。(マクロが自在に書ければ有利疑いない)。スプレッド・シートに詳しければ、一般事務職用のシステム開発の仕事が舞い込むこともある。そういう職場で使われている機種はPCが主流なので、アクセスやエクセル、ロータス123の経験があればその日から仕事が始められるが、それ以外のソフトを使っていた人も根底にある考え方が充分つかめていれば他のソフトへの転移は難しくないから、あきらめずに応募してみるべきである。
最近では、Desk Top Publishing(DTP)の専門家への需要も増えている。PageMakerが一番よく普及しているが、技術文書のマニュアル作成には、FrameMakerもよく使われるようである。
社会科学系の学科では、統計学および解析パッケージの専門家も求められる。SASとSPSSxが主流だが、この二つはお互い方言みたいなものだから、どちらか一方に詳しければ他方への転移は容易である。ただし、大きい大学へ行けば行くほど、数理統計学や社会統計学専攻の大学院生を数多くかかえているので、ライバルも多い。
教育学部を中心に、マルチメディアの技能が求められるケースも増えている。教育学部は概してマックを使うことが多いので、ハイパーカードの開発歴があれば有利だろう。ただし、今どきハイパーカードで簡単なスタックを作ったことがある人は山ほどいるので、その中で抜きん出る為には、C++やパスカルでX-コマンドが書けるぐらいの技能が必要だ。
最後に、コンピュータ・ーラボの保守やサーバー管理、ホームページの開発ができる人材の需要も増えつつある。WWW時代の到来とともに、自前でサーバー管理をする学科も多くなった。UNIX マシンのサーバー管理ができる人はまだ数が少ないので売り手市場ではあるが、サーバーの種類(機種、システム)は大学によって、学科によってまちまちであるし、これまで随分無茶な使い方をしてきていてそれを引き継がないといけない場合も多いので、下手にこの仕事を引き受けるととんだ苦労をしょいこむことにもなりかねない。(なお、小規模なWWWサーバー機のOSとしては、UNIX よりむしろマックやWindows に人気が集まっているようである。)
こういう特殊な仕事に申し込む時は、自分がそれに関してどういう経験と技能を持っているか、詳細に立証する必要がある。履歴書の職歴欄よりも詳しい当該職務経歴書をあわせて提出なさるのがよかろう。その場合、単に年次ごとに経歴を書き並べるスタイルよりも、扱った業務やそれに要する技能ごとにまとめた方が概してアピールしやすい。
また、その技能の習熟度を証言するような推薦状を書いてもらえるなら、送ってもらうと有利に働く。入学申し込みの推薦状の中でそのことが充分に言い尽くせていないようなら、追加の推薦状を然るべき人に頼むことも考えられる。
申込書実例(和文、英文)↑
RA/TA 用推薦状
次の推薦状は、外国人学生の世話係のアルバイトに応募した日本人学生(仮名)の為に筆者が書いたものである。アルバイトに的を絞った推薦なら、成績云々よりとにかく
- 仕事に必要な技能や適性があるか、
- 責任感のある人物か、
の2点が決め手になるので、そのあたりを強調した。
To whom it may concern:
This letter is with reference to Saburo Yasuda, who has been working as a tutor of my Japanese 327 course ("Intensive Intermediate Japanese") in the spring semester of 1994. I have been acquainted with him since February 1994.
Our conversational tutoring system requires particularly close and constant interactions with students from various cultural backgrounds. Every week Mr. Yasuda tutors four international students, three from Korea and one from Taiwan. He is responsible for individual tutelage in oral communication skills through role-plays, and subsequent feedback.
In addition, he is in charge of giving a weekly one-hour lecture in corroboration with his peers, which focuses on the basic features of the Japanese writing system. In the lecture, Mr. Yasuda demonstrates model dialogues and introduces aspects of the Japanese culture and lifestyle.
A good tutor must have effective crosscultural communication abilities, an understanding of cultural differences, the abiliy to plan effectively, a sensitivity to others' needs, and a strong sense of responsibility. Mr. Yasuda possesses all these chacteristics, and is accomplishing his duties as a tutor quite effectively.
Mr. Yasuda has impressed me above all with his strong international communication skills. I believe this is partly due to his high school and undergraduate education in the U.S. since his late teens.
I believe that Mr. Yasuda possesses the mental maturity and personal stability which is necessary to cope with international students from various cultural backgrounds. He has a solid future career plan, and his intimate experiences with two disparate cultures allow him to understand the perspective of any new cultures he may encounter.
I strongly recommend Mr. Saburo Yasuda to you. I believe he will provide a valuable addition to your program.
その場にいる強味↑
大事な仕事を頼む人を雇いたいという場合、その人物を見てから決めたいのが人情である。当然、他の条件が同じなら、物理的にインタビュー可能な場所にいる人間の方が有利になる。学期開始直前になってもassistantが見つからず困っているような先生もいるから、やはり少し早め(少なくとも授業開始の10日ぐらい前)に現地について、存在をアピールしたい。
Secretaryは情報通↑
Research assistantの求人などのFinancial aidの情報は、まっさきにsecretaryのところに入ってくる。中には、一日も早く人がほしいという急ぎの求人もある。secretaryと仲良くしておくと、こういう耳寄りな情報をいち早く教えてくれることがある。といっても、特別なことをする必要はない。顔を見たら、にこやかに挨拶をする、何か用事をしてもらったら、丁寧にお礼を言う、というぐらいで充分いい印象を持ってもらうことができる。なお、secretaryに学科のパーティーの会費を渡すような場合、現金は封筒に入れて渡すぐらいの気遣いはしたい---一見カジュアルな北米社会も、このあたりは結構形式を重んじるものである。(それから、Financial aidを探していることは、おりに触れてさりげなく周囲に知らせておくことである。)
税金申告↑
アメリカで給料をもらう身になったら、納税者は毎年、連邦および州に対してそれぞれ税金還付の申告をする。(大学の助手といえども、収入には原則的に課税される。労働対価なしの奨学金の場合は、課税されるかどうか、担当部署に確認されたい。)日本と違って雇用主の経理課が従業員の税務申告をまとめてやってくれるようなシステムになっていないので、自分でやらなければならず、これが結構手間である。毎回の給料から税金が一定の比率で天引きされて連邦や州政府に納められているが、これを暦年ごとに通算し、払いすぎならば還付を求め、過小なら追加納税しなければならない。さらに、銀行預金の利息も課税対象になるのでやはり申告しなければならない。申告締切は、なぜか翌年の4月15日が恒例になっている。2月ごろになると必要な申告用紙(Tax Return Form)および説明書が公立図書館や郵便局に置かれるので、必要なものをもらってくる(1度申告すると、次の年からは自動的に郵送してくれる)。
この申告の手続きは相当面倒であるが、学生でも場合によっては1000ドル以上手元に返ってくることもあるから、手を抜かないでやることである。(面倒だからといってほっておくと、あとで罰金などのペナルティーもある。)大抵の街では無料相談会を定期的に開いている(場所は公立図書館など)ので、そこに行ってチェックしてもらうとよかろう。また、大きな大学では、学生の為の無料相談会もやってくれる場合がある。大学独自の相談会の方が、学生に適したアドバイスをもらいやすいだろう。特に、学生ならではの控除などは、当然大学関係者の方がよく知っている。納税事務を取り扱っている事務所に直接出向いても相談にのってくれるが、不便なことには連邦政府の税務署と州の税務署はそれぞれ全く別の機関なので(日本の都道府県と違って、アメリカの州政府は連邦の委託事務などはほとんどやらない)、ひどく離れたところにあることも珍しくない。いずれにせよ、必要な書類・領収書などを整理した上、電卓持参で参加しよう。締切間際になってあわてないで済むよう、普段から必要な書類を要目ごとにファイルするフォルダーを作っておくと時間が節約できる。
注意点としては:
- 仕事や医療、求職、新しい勤務地への引っ越し、学会費、政党・篤志団体への寄付などに身銭を切った領収書は、しっかり保存しておく(必要経費として控除が認められる場合がある)。どの出費が控除されるか即座に判断できないなら、とりあえずもらった領収書は全部残しておくとよかろう。
年が明けてしばらくすると、雇用主や銀行から税金申告用の収入証明書(W-2 Form)が送られてくるので、これも保存しておく。万一紛失したら、すぐに連絡して再発行してもらう。
- 自分にあったTax Return Formを選ぶ。(永住権の有る無しなどによって、申告に使う用紙が異なる。)必要な書類が手元になければ、税務署に連絡して取り寄せないといけない。
- なるべく早く申告する(相談所もすいているし、早く申告すれば早く還付金が返ってくる。)
- 先に連邦政府への申告書を完成し、間違いがないことを確認した上で州の申告用紙に移る。(連邦に報告する課税収入額にもとづいて州への申告額を計算するようになっている。)
- 提出した書類は、コピーをとって保存しておく。(見本があると、次の年から作業がずっと楽になる。そのためにも、一年目にしっかりした書類を作っておくことである。)
- 在米中の収入に課される税金の申告を アメリカを離れてからする場合、在外アメリカ領事館で必要な書類がもらえる。
なお、所得州税のないTennesseeのような州も、稀に存在する。その分、間接税であるsales taxが高い。(Sales taxの税率は州によって異なる。ご参考までに、アメリカはとかく弱肉強食イメージがあるが、低所得層に対する配慮から必需食料品にはsales taxが免除されている。この措置については、保守派も含めて目だった反対はないようである。)
Sales tax を払わない法↑
州内の業者の売り上げを振興する趣旨から、他州へ向けて発送される物品に対してはsales taxが免除される。したがって、インターネット店舗や通信販売を利用して他州の業者から物品を発注すれば、sales taxを払わないで済むわけである。大口の買い物だと、かなりの節約になる。なお、稀にこの免税措置に不慣れな販売員もいるので、注文の際にきちんと免税になることを確認しておこう。
納税申告がアメリカ民主主義の原点?↑
アメリカ独立戦争の発端が、イギリス本国が植民地に課した新税にあるということはよく知られている。この話を聞いて筆者は最初、さしずめ天草島原の乱の時のような誅求の限りを英本国が尽くしたのだろうと想像していた。しかし調べて見ると、確かに「代表なくして課税なし」の原則に反した新税ではあったが税額はわずかで、しかもその税によって影響を受けるのはごく一部の業者に限られていたそうである。それを知って、「わずかなゼニカネのことで人殺しをはじめるなんて、何と野蛮な!」と仰天してしまった。(こういうことを公言すると、共和党の極右からアメリカ共産党にいたるまで、ほとんど全てのアメリカ人に嫌われてしまう。左右を超えて、独立戦争はアメリカの「聖戦」であり、その歴史は「神話」なのである。)しかしよくいえば、ことは金額ではなく原理原則の問題なのであろう。
それはとにかく、概してアメリカ人が日本人にくらべてずっと税制に敏感であることは確かである。大統領選挙戦でも、ほとんど必ずといっていいぐらい税制が主要な争点の一つになる。その原点ともいえるのが、全国民が年一度自分の税額を自分で計算するというこの納税申告であろう。申告事務を毎年自分でやってみれば、基礎控除額や課税率など、前年度からの税制の変化がいやでも目に見えるわけである。アメリカ中の納税者が申告事務に費やす時間と労力は膨大なものであるが(日本のように社員の納税事務は会社の経理課がまとめてやる方がずっと効率的ではある)、こういう経験を全国民がしているからこそ、税の徴収やその使い方に対して敏感になり、政府の支出に対しても厳しい監視の目が光るのだろう。そういう意味では、この納税申告こそがアメリカ流の民主主義の原点であり、その実物教育に対してアメリカ人は時間と手間という授業料を毎年払っているのだと言えよう。
契約書類と身分証明書を保存しておく↑
フルタイムの仕事はもちろんだが、パートタイムのアシスタント職といえども、契約 に関する書類や勤め先が出してくれた身分証明書はきちんとファイルし保存しておこ う。その仕事を退職したあとでも、うかつに捨ててはいけない。というのは、将来日 本で就職する場合、それまでの職歴(パートタイムを含む)を証明する書類を当時の 勤め先から発行してもらうよう求められることがしばしばあるからである。(職歴が 給与に影響する場合もある。)
ところが、こういう「職務内容証明書」などというものを出す慣習は北米には根付いていないので、応募者はあちこちに頼み込まねばならず苦労することになる。大学の 人事課では具体的にどんな仕事をしていたかというような細かい情報は持っていない し、逆に所属学科には「何月何日付けで赴任/離職したか」というような記録が残っていないことが多い。おまけに北米の大学は人の動きが激しいから、数年経つと学科 の顔触れが全て入れ替わってしまいもうあなたのことを誰も覚えていない、なんてこ ともありうる。
こういう時、在任当時の書類のコピーを送って記憶を取り戻してもらい、それに基づいて 証明書を作成してもらうと話が早い。また、最悪の事態が生じて「そんな証明書は出せない」と断わられたら、当時の契約書類のコピーを「在職を証明する書類」として そのまま提出するという奥の手もある。(手許に一式しかない書類だから、こちらとしてもオリジナルを手放したくはない。コピーを送るのが妥当だろう。)
もっとも、これも厳密にいえば、「書類のコピーをとる過程で改竄が行なわれたのではないか」というイチャモンをつけられるかもしれない。もしうるさいことを言われそうなら、コピーがオリジナルの書類をそのまま正しく反映しているということを証言する証人をたてるとよかろう。北米ではこういう時のために公証人(notary) と いう制度がある。その資格を持った人(床屋のおじちゃんが兼業でやっていたりする)のところにオリジナルとコピーの双方を持参 し、一筆添えてもらえばよい。(公証人は「書類の内容が正しい」と請け負うのではなく、「コピーがオリジナルと同一である」と証言するわけである。)費用は手数料程度で、法外な金額は請求されない。
なお、筆者の経験から言って、こういう在職証明書の類は人事課よりも所属学科に頼んで出してもらった方が概して話が早くつく。州立大学の人事課員は要するに「お役人」なので、規定外の書類となると一つ発行してもらうのもおおごとなので ある。
[TrackBack URL]