北米留学上級技術マニュアル - 留学関連文献解題
目次
- 海外旅行・生活技術解説
- 平成暮らしの研究会 (2000)『海外旅行の裏ワザ・隠しワザ』河出夢文庫 《留学生にも役立つ渡航の技術論》
- 別冊宝島編集部 (2001)『海外個人旅行完全入門』宝島社文庫 《ノウハウてんこもり》
- 杉浦一機 (2001)『エアライン<超>利用術』平凡社新書《リピーターにはおいしい情報》
- 『マイレージ獲得裏術 (’07)』 (ムック) 《毒にも薬にもなる秘技を披露》
- 静月透子(2000)『すっぴんスチュワーデス 教えてあげる!--これであなたは「フライトの達人」』祥伝社《意外にまじめなフライト技術本》
- 留学体験記・留学指南
- 渥美れい子(初版1967)『アメリカ留学ハンドブック』英友社 《今もって褪せない専攻変針の苦労談》
- 土屋守章(1974)『ハーバード ・ビジネス・スクールにて』中公新書 《MBA最高峰の内幕本》
- 西山和夫(1977/1986)『アメリカ留学成功の秘訣−−教授が教える勉強法・学生生活』三修社《現役米大学教授が留学指南》
- 《学部交換生から博士号に至る、岡地教授のサクセスストーリー》
- 原田泰(1982)『アメリカの夢と苦悩─エコノミストの留学体験記』東洋経済新報社 《派遣留学した経企庁エコノミストの青春物語》
- 巳野保嘉治(1982)『46歳からのハーバード大学留学記』PHP 《中年休職留学記の先駆》
- 利根川進・立花隆(渡部格 序文)(1993) 『精神と物質--分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか--』文春文庫《ノーベル賞への道》
- 吉原 真里 (2004)『アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで』中公新書《本マニュアルのライバル本》
- 研究者による在米体験記
- 藤原正彦(1981)『若き数学者のアメリカ』新潮文庫《ベストセラーエッセイストが活写するアメリカの大学教員生活》
- 加藤秀俊 (1979)『ホノルルの街かどから』中公文庫 《碩学が描くハワイの暮らしと学問》
- 出願書類準備のノウハウ
- Patricia Keith-Spiegel (1990). The Complete Guide to Graduate School Admission: Psychology and Related Fields.《出願希望者必読の名著》
- Donald Asher. (1991). Graduate Admissions Essays -- What Works, What Doesn’t, and Why. Berkeley: Ten Speed Press. 《出願趣意書の極意を伝授》
- 河本 敏浩 樋口 裕一(2000)『自分を活かす志望理由書・面接―推薦AO入試対応』 ナガセ《「自分は何を達成したいのか」を徹底的に考えるためのパートナー》
- 山田ズーニー(2005)『考えるシート』 講談社《小論文のカリスマ女王が優しく手ほどき》
- 大学院勉学技術書
- Robert L. Peters (1997). Getting What You Came for: The Smart Student's Guide to Earning a Master's or a Ph.D. Noonday Press.《大学院生活の百科全書》
- Sara Delamont, Paul Atkinson, Odette Parry (1997). Supervising the PhD. Buckingham: Open University Press.《アドバイザーのための指導技術読本》
- Bloom, Dale F., Karp, Jonathan D., and Cohen, Nicholas. (1998). The Ph.D. Process -- A Student's Guide to Graduate School in Sciences. New York: Oxford University Press.《理系の学生に役立つ豊富なアドバイス》
- 坪田一男 (1997)『理系のための研究生活ガイド』講談社ブルーバックス 《文系にも役立つノウハウ満載》
- 宇野 賀津子,坂東 昌子 (2000)『理系の女の生き方ガイド―女性研究者に学ぶ自己実現法』ブルーバックス《文系の男も一読の価値あり》
- 論文の書き方・発表のしかた指南
- 戸田山 和久 (2002)『論文の教室―レポートから卒論まで』 NHKブックス《ライティング界の『ドラゴン桜』》
- 酒井 聡樹 (2006)『これから論文を書く若者のために』《「論文執筆の目的」から説き起こす、画期的なガイダンス》
- Sternberg, David. (1981). How to Complete and Survive a Doctoral Dissertation. New York: St. Martin's. 《博論執筆ガイドの古典》
- Allison, Alida & Frongia, Terri (1992). The Grad Student's Guide to Getting Published. New York: Prentice Hall. 《買って読むほどの本じゃない》
- 論文書式マニュアル
- American Psychological Association. Publication Manual.
- フィンドレイ (1996)『心理学実験・研究レポ−トの書き方』北大路書房
- 日本心理学会編(2005)『心理学研究 執筆・投稿の手びき』
- Joseph Gibaldi (2003). Mla Handbook for Writers of Research Papers (Mla Handbook for Writers of Research Papers)
- Cheryl Iverson(Editor), et al (1997). American Medical Association Manual of Style : A Guide for Authors and Editors (AMA) .
- Michel C. Atlas (1996). Author's Handbook of Styles for Life Science Journals.
- 大学論
- Charles J. Sykes (1988). ProfScam: Professors and the Demise of Higher Education. St. Martin's 《「アメリカの高等教育界がいかにイーカゲンか。」の告発書》
- 小林良彰(1983)『欧米大学レポート・ハーバード大学とパリ大学』三一書房《歴史家から見た欧米大学論》
- キャリア戦略&就職対策(アカデミック編)
- Peter Feibelman (1993). A PhD is not Enough. Reading: Addison-Wesley. 《激辛のキャリア指南書》
- フェデリコ・ロージ (著), テューダー・ジョンストン (著), 高橋 さきの (翻訳) (2008) 『科学者として生き残る方法』 《欧米科学界のサバイバル技術》
- Heiberger, Mary Morris & Vock, Julia Miller. (1996). The Academic Job Search Handbook. Second Edition. Philadelphia: University of Pennsylvania Press.《ありそうでなかった、アカデミック向けの就職ガイダンス》
- 《学術雑誌に掲載された、大学院生のための求職ガイダンス》
- Thomas, Trudelle. (1989). Demystifying the job search: A guide for candidates. College Composition and Communication, 40, 3: 312-327.
- Darley, John M. & Zanna, Mark P. (1981). An introduction to the hiring process in academic psychology. Canadian Psychology 22, 3: 228-237.
- Heppner, P. & Downing, N. (1982) Job interviewing for new psychologists: riding the emotional roller coaster. Professional Psychology 13: 334-341.
- キャリア戦略&就職対策(一般編)
海外旅行・生活技術解説↑
平成暮らしの研究会 (2000)『海外旅行の裏ワザ・隠しワザ』河出夢文庫 《留学生にも役立つ渡航の技術論》↑
ご存じ「平成暮らしの研究会」シリーズ。もともと観光客向けの本だが、荷造りのノウハウや機内での過ごし方などは留学目的の渡航者にも参考になる。
別冊宝島編集部 (2001)『海外個人旅行完全入門』宝島社文庫 《ノウハウてんこもり》↑
格安航空券情報・マイレ−ジサ−ビス比較など、てんこ盛りのノウハウ満載。
杉浦一機 (2001)『エアライン<超>利用術』平凡社新書《リピーターにはおいしい情報》↑
航空運賃はどうやって決まるのか、危ない航空会社の見分け方、国際アライアンスの背景など、航空業界の「しくみ」に踏み込んで様々な角度から解説してくれる。同時多発テロ発生以前の少し古い本ではあるが、学会出席や就職面接など年に何度も飛行機を利用する方にとっては、一度目を通しておいて損のない内容である。
『マイレージ獲得裏術 (’07)』 (ムック) 《毒にも薬にもなる秘技を披露》↑
文字通り、マイレージポイントを最大限稼ぐためのノウハウ満載。ちょっとヤバい裏技も載っているのが気になるがそこは禁じ手として封印し、正々堂々と賢く貯める方法に限って実践する分には誰に恥じることもあるまい。
静月透子(2000)『すっぴんスチュワーデス 教えてあげる!--これであなたは「フライトの達人」』祥伝社《意外にまじめなフライト技術本》↑
書名の前半だけを見て思わずたじろいでしまう向きもあるやもしれぬが、実はこれはおちゃらけ風の文体の中に職業人としての責任意識がきらりと光る、結構まじめな本である。著者は某国策航空会社の国内線スチュワーデスフライトアテンダントだそうなので時差適応のノウハウなどはとりあげられていないものの、緊急時にどの席が一番安全か、などの情報は路線を問わず応用できると思う。
留学体験記・留学指南↑
次にあげるのは、主として単行本に収録された留学体験記である。筆者が昔留学計画をたてるにあたって参考にしたものを中心にしているため、些か古いものが多いのはお許しいただきたい(アマゾンのデータベースに載っているものはご参考までに一応リンクしておくが、原則としては図書館などで借りて読めばよいと思う)。アルクの『留学事典』等には、よりあたらしい情報が山ほど載っているが、雑誌掲載の留学体験記は概して短いので留学中の経緯を詳しく辿るには不充分なのが難である。
渥美れい子(初版1967)『アメリカ留学ハンドブック』英友社 《今もって褪せない専攻変針の苦労談》↑
前半は普通の留学ガイドだが、後半に著者のピッツバーグ大学文化人類学科博士課程への留学体験記が載っている。発表時期から推して、戦後出版されたアカデミックな留学体験記としては最初期のものの一つと思われる。
とはいえ、ピッツバーグ大学博士課程進学にあたって臨床心理学から人類学へと大きく路線転換したため多大な負担がかかったこと、学部教官とのコミュニケーション不足から退学すれすれの目にあったことなど、今日でも参考になる部分が多い。
土屋守章(1974)『ハーバード ・ビジネス・スクールにて』中公新書 《MBA最高峰の内幕本》↑
典型的なMBA留学体験記である(1971-72)。Harvard Universityのビジネス・スクール教育の看板といえるケース・スタディ(事例研究)方式に関して、著者が辛い見方をしている部分がおもしろい。
西山和夫(1977/1986)『アメリカ留学成功の秘訣−−教授が教える勉強法・学生生活』三修社《現役米大学教授が留学指南》↑
日本航空を辞してハワイ大学で学士号(1965年)と修士号(1968年)、ミネソタ大学で博士号(1970年)を取得し、その後ハワイ大学で教鞭をとった著者の留学体験記。現職の大学教授だけに、大学制度の説明は的を射ている。著者の専門はSpeech communicationである。
《学部交換生から博士号に至る、岡地教授のサクセスストーリー》↑
岡地勝二(1977)『アメリカ留学最新情報』三修社 ↑
著者が関西大学に在学中、奨学金を受けてUniversity of Georgiaの学部課程に留学した時(1965−66)の体験談。かなり昔の話だが、アメリカの大学の厳しさや生活習慣を知る上では今でも参考になる。特に深南部大学に関する情報は、今でも不足している。ただし、岡地教授が経験したようなアメリカのお大尽ぶりは、今日のアメリカには期待できない。
岡地勝二(1977)『米国留学事情』青年書館 ↑
筆者のジョージア大学経済学部修士課程での留学体験記(1968-70)。
岡地勝二(1986)「アメリカで博士号をとる」、『新留学事情』河出書房新社より ↑
日本の大学に奉職していた著者が、一年間の在外研修(1978-79)の間にフロリダ州立大学で博士課程の科目履修と博士論文執筆の両方をこなし、帰国後わずか半年足らずで論文を完成させて新年早々には経済学博士号をとってしまった、という快挙の報告談。どの大学でも同じことが可能だと思ってはいけないが。
原田泰(1982)『アメリカの夢と苦悩─エコノミストの留学体験記』東洋経済新報社 《派遣留学した経企庁エコノミストの青春物語》↑
今は無き経済企画庁のお役人(官庁エコノミスト)であった著者(当時20代)が、2年間の在外研修期間中(1980-82)にUniversity of Hawaii at ManoaのEast West CenterとUniversity of Illinois at Urbana-Champaignの経済学部でそれぞれ一年間を過ごした体験記。ベトナム戦争終結(1975年)後間もないころだけに、映画『ディア・ハンター』(特にロシアンルーレットのシーン)をめぐる亡命ベトナム人留学生とのやりとりなどはなまなましい。Hawaiiと米中西部の田園地帯という、大きく異なる環境の対比も興味深い。経企庁という、許認可権や行政指導権限のないシンクタンク的なお役所の特性もあってか、お役人臭が全くないのに好感が持てる。
巳野保嘉治(1982)『46歳からのハーバード大学留学記』PHP 《中年休職留学記の先駆》↑
サンケイ新聞の記者であった著者が、休職してHarvard Universityに留学した体験記(1980-81)。さすがにHarvardでの生活ぶりもリッチで、マルビ留学のガイドとしてはあまり役にたたない。
利根川進・立花隆(渡部格 序文)(1993) 『精神と物質--分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか--』文春文庫《ノーベル賞への道》↑
いわずと知れたルポの名手と「百年に一度の大研究」を達成したノーベル賞生理学者(1987年)の夢の顔合わせ。もともとこの企画は、立花氏が利根川博士のノーベル賞研究の真髄を素人にもわかるように、しかも徹底的に、インタビュー形式で聞き出そうという意図にもとづくものであったが、利根川博士の大学院留学時代(1963〜1968年)・ポスドク時代の体験談、日米の大学制度の比較などを交えている。どういうわけか理系の著者による留学体験記は数が少ないので、そういう意味でも貴重である。ノーベル賞を狙おうという方、必読!ただし、利根川博士が留学していたころのような「余裕」は、今のアメリカの大学にはもはや見い出し難い。
なお『精神と物質』という書名は必ずしも本書全体の内容をバランスよく反映しているとは思われないが、こういうハデな書名で人目をひくのも文藝春秋社の商売の巧さか、などと妙に納得してしまったりもする。
吉原 真里 (2004)『アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで』中公新書《本マニュアルのライバル本》↑
書名のとおり、出願から勉学、学位論文執筆、さらに就職まで順を追って留学のノウハウを解説している。著者自身のブラウン大学留学経験(1990年代初頭〜中葉)を踏まえながらも内容は「技術書」であり、構成も内容もこの「上級技術マニュアル」とかなり重複しているところがある。とりあえず、勝手にライバル宣言しておく(された方は迷惑だろうが)。
ただし公平にみて、吉原先生の本の方がまとまりはよい。当マニュアルの偏りを補うという意味でも、ご一読をお勧めしたい。
研究者による在米体験記↑
「学生」としてではなく教官や研究員という立場で渡米された方の体験記をこちらでご紹介する。
藤原正彦(1981)『若き数学者のアメリカ』新潮文庫《ベストセラーエッセイストが活写するアメリカの大学教員生活》↑
ニクソン政権当時、20代の終わりから30代の初頭にかけてミシガン大学とコロラド大学に各一年間客員として赴任した(1972-1974)日本人数学者の手記(第26回日本エッセイストクラブ賞受賞)。すでに日本の大学院課程を修了し一度は大学助手を務めてから渡米した人なので、現地の学生生活の詳細などは書かれていないが、逆に研究者や教える側から見たアメリカの大学がどのようなところか知る上では参考になる。
著者が渡米途上で立ち寄ったハワイの真珠湾で妙な愛国心を燃やしてしまうあたりをはじめ、随所で見せる描写の巧みさには感心させられる。ベストセラー『国家の品格』の著者としても知られる藤原正彦氏は新田次郎氏・藤原てい氏という人気作家夫妻の御子息だとのこと。道理で筆がたちすぎるわけである。
加藤秀俊 (1979)『ホノルルの街かどから』中公文庫 《碩学が描くハワイの暮らしと学問》↑
著者がEast West Centerの客員研究員としてHonoluluに滞在した間(1971-72)の体験記。University of Hawaii at Manoa留学を考えておられる人には現地の文化慣習などを知る上で参考になるが、なにしろ揚げ膳据え膳で外訪できる高名な学者の著書だけに、フツーの留学生にとっては「雲の上の話」も多い。East West Centerの予算も現在では、当時から比べると大幅に削減されている。
出願書類準備のノウハウ↑
Patricia Keith-Spiegel (1990). The Complete Guide to Graduate School Admission: Psychology and Related Fields.《出願希望者必読の名著》↑
著者は学校心理学の教授。自然と話が心理学科中心になるが、それ以外の専門の人間にも役立つ情報満載、まさに必読の書。志望校選びからはじまって願書の書き方など、まことに痒いところに手がいきとどく。
Donald Asher. (1991). Graduate Admissions Essays -- What Works, What Doesn’t, and Why. Berkeley: Ten Speed Press. 《出願趣意書の極意を伝授》↑
応募書類のうち、essayに絞って詳しく論じた書。あっとおどろくような巧みなレトリックが紹介してあって、非常に参考になる。英語のWritingのテクニックを学ぶ上でも有益。
河本 敏浩 樋口 裕一(2000)『自分を活かす志望理由書・面接―推薦AO入試対応』 ナガセ《「自分は何を達成したいのか」を徹底的に考えるためのパートナー》↑
もともと大学のAO入試対策本だが、国内だけでなく海外の大学院あるいは大学(学士課程)を目指す人達にとっても、この本に書いてある方法論は有益なヒントを与えてくれると思う。英語でどう表現するかは後で考えればいいので、まずは自分は何を達成したいのかという目標設定をはじめ内容を徹底的に練るのが先決である。こういう手順を踏まずに小手先のテクニックに走ってありもしない自分の虚像をつくりあげ、その時はたまたまうまくいって合格したとしても、入学してから「こんなはずではなかった」と後悔することは必至だ。逆にとことん考え抜いて納得のいく応募趣意書を書き上げた経験は、たとえ第一志望校に合格できなくても将来必ず活きてくると思う。
山田ズーニー(2005)『考えるシート』 講談社《小論文のカリスマ女王が優しく手ほどき》↑
自分を掘り下げるためのQ&A集や志望理由書のテンプレートまで収めた、練習帳スタイルの親切きわまるガイドブック。頼れるカウンセラーのおね〜さんに優しく手ほどきしてもらいたいという貴男/貴女には、上掲の河本・樋口よりとっつきやすいかも?
この本を読んでズーニー姉さんのファンになってしまった貴方のために、次のサイトも紹介しておく。
「大人の進路教室」http://www.jfn.co.jp/otona/
大学院勉学技術書↑
Robert L. Peters (1997). Getting What You Came for: The Smart Student's Guide to Earning a Master's or a Ph.D. Noonday Press.《大学院生活の百科全書》↑
大学院選びから就職までの全過程をカバーするガイドブックである。「必読」と言いたいぐらいの豊富な情報量だが、難をいえばあまりに長過ぎて(400ページ)読み通すのがタイヘン。もう少し簡潔に書けなかったものかと思う。無理をして一気に通読しようとせず、まずは目次(と挿絵)にざっと目を通したあと必要に応じて関連する章を随時読めばよろしかろう。
Sara Delamont, Paul Atkinson, Odette Parry (1997). Supervising the PhD. Buckingham: Open University Press.《アドバイザーのための指導技術読本》 ↑
イギリスの大学教授が書いたアドバイザーのための指導技術読本。アメリカの大学院生が読んでも参考になるところが多い。ただし、英語圏での大学院経験が全くない人がこの本を読んでも内容を理解するのは大変である。むしろ、一学期終わったところでそれまでの経験をふりかえるために読んでみると、得るところが多いかと思う。
Bloom, Dale F., Karp, Jonathan D., and Cohen, Nicholas. (1998). The Ph.D. Process -- A Student's Guide to Graduate School in Sciences. New York: Oxford University Press.《理系の学生に役立つ豊富なアドバイス》↑
教授のラボに所属してそこで研究を進めることが前提となる実験・自然科学系(神経心理学などをふくむ)の学生のための大学院ガイド。ラボ仲間とのつきあい方や研究テーマの選び方など、こと細かに指針が述べられている。反面、「ラボ」というものの存在しない伝統的な人文社会科学や純粋数学専攻の学生にとっては、縁遠い話もある。
全体として有益な助言が随所にちりばめられていて、特に当該分野を目指す者には一読の価値のある本である。ただし他の章にくらべると、第13章の"Foreign Students: Unique Problems and Stresses" の出来はいささか物足りない。(3人の共著者はいずれもアメリカ人のようであり、異言語圏への留学の実体験がないものと推測される。)
坪田一男 (1997)『理系のための研究生活ガイド』講談社ブルーバックス 《文系にも役立つノウハウ満載》↑
ドライアイ(乾き目)研究の第一人者が、アドバイザー選び・研究課題選択・留学手続きなどを詳しく解説する。表題には「理系のため」とあるが、人文系や社会科学系の研究者にも参考になる情報が多い。留学をしない方にもお勧めできる。
宇野 賀津子,坂東 昌子 (2000)『理系の女の生き方ガイド―女性研究者に学ぶ自己実現法』ブルーバックス《文系の男も一読の価値あり》↑
アカデミックの世界で業績をあげ生き残るノウハウを伝授します。「理系の女」と題してはいるが、実は男女や文理の別を問わず得るところ大。
論文の書き方・発表のしかた指南↑
戸田山 和久 (2002)『論文の教室―レポートから卒論まで』 NHKブックス《ライティング界の『ドラゴン桜』》↑
アカデミックな文章をいかに組み立てるべきかを詳述している。パラグラフライティングの方法を基礎の基礎から日本語で学ぼうと思えば、本書に勝る解説書はないと思う。その他、「そもそも論文とは何ぞや」というところからはじまって一通り「まともな」体裁の学術文書が書けるところまで確実に導いてくれる。著者の分身たる「先生」の熱血指導のもと、作文ヘタ夫君なる新入生がついには立派な小論文を書きあげるまでに成長するというビルディングロマン風のサクセスストーリーや、司馬遼太郎の文体模写などのくすぐりも楽しい。「論文界の『ドラゴン桜』」というアマゾンの読者書評に納得!
酒井 聡樹 (2006)『これから論文を書く若者のために』《「論文執筆の目的」から説き起こす、画期的なガイダンス》↑
研究テーマの設定にはじまり、実証科学系論文執筆の根本的な考え方を徹底して解説した画期的なガイダンス。表紙と文体は一見おふざけ調だが、根底にあるメッセージは極めて真摯かつ高水準。できれば出願前に、応募趣意書(エッセイ)を書くに先立って精読することをお勧めする。
Sternberg, David. (1981). How to Complete and Survive a Doctoral Dissertation. New York: St. Martin's. 《博論執筆ガイドの古典》↑
博士論文をしあげてアカデミックの世界で生き残る方法を詳述している。
Allison, Alida & Frongia, Terri (1992). The Grad Student's Guide to Getting Published. New York: Prentice Hall. 《買って読むほどの本じゃない》↑
大学院生の間に専門雑誌に論文を載せたり本(またはその一部)を出版するにはどうしたらいいか、というノウハウを紹介した本。図書館にあるなら借り出してざっと目を通しておいてもよいが、身銭を切ってまで買うほどの本じゃない(←身銭を切った本稿筆者の結論)。間違って上の「ショッピングカートに入れる」ボタンを押さないように。
論文書式マニュアル↑
American Psychological Association. Publication Manual.↑
通称"APA Style Manual"。心理学・応用言語学などを専攻する学生には必携の学術論文仕様(APA Style)虎の巻。体裁が悪いと中味がよくても公正に審査してもらえないのが学術論文というものである。
フィンドレイ (1996)『心理学実験・研究レポ−トの書き方』北大路書房↑
APA Style Manualにほぼ準拠しつつ、行動科学の研究報告書をどう準備しどう書くか、図表の入れ方や引用のしかたなどのお作法も含め初歩に遡って解説しています。
日本心理学会編(2005)『心理学研究 執筆・投稿の手びき』 ↑
上記APA Style Manualの日本版にあたり、日本には数少ないスタイルマニュアルの一つなのでここで併せて御紹介しておく。留学先での研究成果を日本の心理学関係雑誌に投稿なさろうという方は、一冊持って行かれるとよろしかろう。
なお、この冊子は書店売りをしておらず、出版元の日本心理学会(東大本郷キャンパス赤門直近)に直接注文するしかない。
http://www.psych.or.jp/
次のPDF版は無料でダウンロードできる。
http://www.psych.or.jp/publication/inst/tebiki2005_fixed.pdf
Joseph Gibaldi (2003). Mla Handbook for Writers of Research Papers (Mla Handbook for Writers of Research Papers) ↑
通称"MLA Style Manual"。これまた文学や言語学などいわゆるhumanity選考の学生には必須の参考書である。
原田敬一訳 (1981). 『MLA新英語論文の手引』北星堂書店
Cheryl Iverson(Editor), et al (1997). American Medical Association Manual of Style : A Guide for Authors and Editors (AMA) . ↑
Michel C. Atlas (1996). Author's Handbook of Styles for Life Science Journals. ↑
大学論↑
Charles J. Sykes (1988). ProfScam: Professors and the Demise of Higher Education. St. Martin's 《「アメリカの高等教育界がいかにイーカゲンか。」の告発書》↑
長沢光男訳『大学教授調書』化学同人
ISBN# 4-7598-0243-6
「アメリカの高等教育界がいかにイーカゲンか。」という観点から書かれた告発書。セクハラ・かけ声だけの大学改革・手抜き授業・研究データの捏造・仲間うちの庇い合いなど、話題は幅広い。名の知れた総合大学のうちのかなりがとりあげられていて(索引つき)、事例も豊富である。(筆者の母校・イリノイ大学に関する記述が特に辛辣であるように思うが、これは筆者の僻みだろうか?)
反面、同書が些末主義の典型例として槍玉にあげている心理学や教育学の論文のテーマは、著者Sykesが非難するほど無価値なものだとばかりだとは思われず、むしろ筆者(佐々木)のみるところ至って真っ当な研究課題も少なくない。ひとまず、Sykes(父親は大学教授だったという話だが、本人はジャーナリストで、大学勤めの経験はないようである)の識見に関しては保留としておく。ともあれ、一種の資料集として同書に目を通しておく分には悪くなかろう。
邦訳には初歩的な誤訳が散見されるという話だが(サンケイ新聞紙上の栗本慎一郎氏の書評による)、筆者は未見。
橋本健二氏による同書の書評
「米大学の憂うべき実態 C・J・サイクス『大学教授調書』他 」
http://www.asahi-net.or.jp/%7Efq3k-hsmt/trend21.htm
小林良彰(1983)『欧米大学レポート・ハーバード大学とパリ大学』三一書房《歴史家から見た欧米大学論》↑
著者自身の在米体験(1980-81?)を踏まえてはいるものの実質的には欧米の大学の学問的・社会的背景の解説といった方がよい内容なので、こちらでご紹介しておく。“知的な分野(学者養成)では西部はいまだに東部に従属している”と著者は主張しているが、確かに歴史学など狭義の人文系の学問ではそういう面もあったのかもしれない。小林教授は米国高等教育界の最高峰として以下のような「八大大学」を紹介している。西部(カリフォルニア)から2校、中西部から2校、そして残り4校は全て東部という偏りに注目されたい。
- 東部
- Harvard University
- Yale University
- Columbia University
- Massachusettes Institute of Technology (MIT)
- 中西部
- University of Chicago
- University of Michigan (Ann Arbor)
- 西海岸
- Stanford University
- University of California, Berkeley
なお著者は歴史学者であり、慶應大学法学部(政治学専攻)の小林良彰教授(かつてフジテレビの『報道2001』にレギュラー出演して、あの口八丁の竹村健一サンを完全に喰ってしまっていた)とは同姓同名の別人だそうである。
キャリア戦略&就職対策(アカデミック編)↑
Peter Feibelman (1993). A PhD is not Enough. Reading: Addison-Wesley. 《激辛のキャリア指南書》↑
研究者志望者のための、激辛にして激苦かつ激酸のキャリア指南書。博士号をとってからの生活がどんなに大変か、その中で生き残るためには学生の時からどのような準備を積み重ねておくべきかが詳述してある。著者は物理学者だが、他の分野にいるものにも参考になる点が多い。北米の大学や学会制度の舞台裏が見えてくる。「新PhDの最初の職場としては、大学勤めより研究所の方が安全・有利」など、大胆な指摘もある。大学院出願前に、是非ご一読なされたい。
フェデリコ・ロージ (著), テューダー・ジョンストン (著), 高橋 さきの (翻訳) (2008) 『科学者として生き残る方法』 《欧米科学界のサバイバル技術》↑
Feibelmanと異なり、大学教員としてのキャリアに特化して詳しく解説している。学会発表や論文執筆のノウハウなども含め、至れ尽くせりの内容。
Heiberger, Mary Morris & Vock, Julia Miller. (1996). The Academic Job Search Handbook. Second Edition. Philadelphia: University of Pennsylvania Press.《ありそうでなかった、アカデミック向けの就職ガイダンス》↑
世にビジネスマン向けの履歴書の書き方やインタビューの受け方の解説書はゴマンと出ているが、そこに書かれているテクニックのうちどれがアカデミックの分野の職探しに参考になり、どれは使えないかを判断する上でも有益である。
そのような直前対策にとどまらず、学生時代の平素のネットワーク作りや学会発表を通じて将来の就職戦線に備える術も解説されているので、大学院に入学したら早い時期にざっと目を通しておくといいと思う。旧版の第3章"Becoming a job candidate: The timetable for your search" には、就職2年前からやっておくべきことが順を追って列記されていたが、新版は未見。
《学術雑誌に掲載された、大学院生のための求職ガイダンス》↑
Thomas, Trudelle. (1989). Demystifying the job search: A guide for candidates. College Composition and Communication, 40, 3: 312-327.↑
Darley, John M. & Zanna, Mark P. (1981). An introduction to the hiring process in academic psychology. Canadian Psychology 22, 3: 228-237.↑
Heppner, P. & Downing, N. (1982) Job interviewing for new psychologists: riding the emotional roller coaster. Professional Psychology 13: 334-341.↑
上記3本の論文はそれぞれ、ライティングおよび心理学系大学教官職の就職面接の流れを概説したもので、他専攻の学生にも参考になる。
Heppner, P. & Downing, N. (1982) Academic Job Interview Questions.↑
紙幅の都合で上記のProfessional Psychology誌掲載論文に含めることができなかったため読者の求めに応じてHeppner & Downingが個別に郵送していた想定質問資料を、本稿筆者が許諾を得てWebに掲載させていただいたものである。以下に紹介するBeatty本および津田・下川本の理念を念頭におきこの一連の想定質問の一つ一つに対しどうやってパンチの利いた効果的な答えをするかをあらかじめシミュレーションしてから面接に臨めば、貴方のパフォーマンスは見違えるように変貌するだろう。
Academic Job Interview Questions↑
上記の想定質問集のページを含む関連リンク集をあわせてご紹介しておく。
キャリア戦略&就職対策(一般編)↑
Beatty, Richard H. (初版 1986) The Five-Minute Interview: A Job Hunter's Guide to a Successful Interview.《正面突破の戦略論》↑
"The Five-Minute Interview" = 『五分間面接』という書名からは面接開始冒頭のノックや入室のしかたからはじまり、アイコンタクト、握手や名刺交換、正しい姿勢などの表層的なテクニック(それも大事なのだが)に終始したマニュアル本のような印象を抱きやすい。ところが本書の内容は全く逆で、面接がはじまるや直ちに「採用側が何を求めているか」をすばやく察知し、いわば相手の懐に(5分以内に!)飛び込んで「自分を雇うことがいかに重要な利益をもたらすか」を得心させる方法を説いた面接突破への戦略論である。面接官の話の腰を折るような受け答え例も載っているので、これをそのまま使うと相手によっては機嫌を損ねかねない点が気になるが、基本的な考え方は至ってまっとうである。
特に採用側が当初思い描いていた理想像と実際の候補者の間に専攻分野・研究テーマ・開講可能科目などの点で目立ったズレがある場合、たとえ運良く面接試験までたどりつけたとしても、「ハンディを上回って余りあるプラスをこの候補がもたらしてくれる」と選考委員達に得心させない限り採用通知を手にすることはない。布陣が不利であることが最初からわかっており、このまま時間が推移するにつれますます戦況がジリ貧になることが目に見えているならば、死中に活を求めて城門を開き斬って出る以外に、戦いの主導権を奪い勝機をつかむ術はないのである。
本稿筆者(佐々木)が北米のjob marketで連戦連敗を重ね鬱々としていたころあれやこれやの面接対策本を読んだが一向に効果があらわれず、最後にこの本の旧版に出会って目から鱗が落ちる思いをした(=敗因がはっきりとわかった)思い入れのある一冊でもある。それまでも本書の背表紙だけは書店の求職・転職コーナーの書棚で何度も目にしたことがあったのだが、"Five-Minute Interview"という書名から内容について誤った先入観を抱いてしまい、手に取るのが遅れたことが悔やまれる。「羊頭狗肉」という成句はよく耳にするが、本書の書名はその逆の「狗頭羊肉」というべきではあるまいか。
津田久資・下川美奈(初版 2001)『ロジカル面接術』ワック出版局 《哲学のある求職戦略指南書》↑
凡俗の小手先の就職面接技術マニュアルとは全く趣きを異にし、「私は会社に貢献できる」ことを論証して採用面接官を説得し採用内定を勝ち取るという最終目的を達成するためにいかに下位目標設定→材料集め→論陣構築→表現の推敲→パフォーマンス演出を完遂するかを詳説した画期的な指南書。(男性経営コンサルタントと女性放送記者の共著という企画も型破りである。)スタンスとしては上記のBeattyと共通するところが多いが、本書はさらに具体的にステップバイステップで準備のしかたを詳しく解説している。いってみれば「哲学」のあるマニュアル本といえよう。
まず最終目的を設定し、ついでその達成に要するステップを小目標に細分化して個別に攻略するという基本的な方法論は、就職対策は言うにおよばず入学願書準備や奨学金申し込みや論文執筆にも応用できる。特に就職活動を経験したことのない方には是非一読(といわず精読)をお薦めしたい。
小策を弄して面接官を欺くことを排し、自分の姿を正確に、かつ効果的にプレゼンテーションすることで両者納得ずくの就職を達成しようという、著者の真摯な姿勢が何より嬉しい。Honesty pays in a long run.という諺に嘘はないと思いたい本稿筆者である。
千早正隆 (1995)『日本海軍の戦略発想』 中公文庫《元聯合艦隊作戦参謀が痛恨の思いで綴る、戦略論とアメリカ論》↑
太平洋戦争のさなか聯合艦隊の作戦乙参謀を務めた千早正隆氏が終戦(「敗戦」というべきだろうが)直後に筆を起こしたこの手記は一見「留学」と何の関係もなさそうだが、賢明な戦略に支えられてはじめて戦技戦術が功を奏することを教えてくれる、得難い指南書である。
「トータルではたとえ劣勢であったとしても、一戦闘場面では、わが方を優勢にするのが戦略であり、戦術であるはずである。戦闘場面で優勢に立てば、その兵力比以上に敵側に大打撃を与えるのが、トータルでは劣勢であるものが、トータルで優勢である敵に立ち向かう途ではなかったか」(引用は1982年初刷の旧版(プレジデント社)172ページより)
「もし日米両海軍の決戦を企図しようとするならば、なぜにその全力を集中できるときまで、待たなかったのかといわなければならない。決戦にはその全兵力を集中しなければならないことは、兵法のイロハである。」(同書188ページより)
「日米両軍の決戦のみ考えるならば、足手まといになるような攻略を企図する必要はなかった…。このように作戦の根本の目的なり、方針に混乱があるにかかわらず、これを強行したところに無理があった。」(同書188ページより)
「敗北の真因は、戦争というものについての総合的な判断を欠き、かつまたその対応において計画性に欠けていたことにあるのではないかと考えるのである。‥十分でない国力から見て戦備が制約を受けるのはいたしかたがないとしても、戦争に対する総合的な考案にはそのような制約は全然なかったはずである。しかし、そのような研究は決して十分ではなかった、と遺憾ながら、いわなければならない。」(同書278ページより)
本稿筆者は留学先にこの本を持参し、ことあるごとに上記の「戦争」を「留学」と読み替えて戦略策定の指針としていた。(そのわりに失敗に終わった作戦が多かったのはひとえに本稿筆者の責任であり、いささかも本書の戦略書としての価値を減じるものではない。)この留学マニュアルの副題に「戦略設計」の語を用いたのも、本書に触発されてのことである。
一方アメリカ文化論としても、三年半余にわたり中部〜西太平洋全域で死力を尽くして米軍と戦った末完敗した日本海軍の視点からアメリカの強さの源泉を分析した次のくだりはいまなお示唆に富むと思う。
「昭和二十年八月十五日、私は慶応の日吉台にあった連合艦隊司令部で、戦い破れた日本が連合軍の軍門に下るのを迎えた。…その頃、私は家内の父の関係で前から知っていた大学教授や財界人と会う機会がかなりあった。そのような席では、話題は当然のこととして終わったばかりの戦争のこととなったが、必ずといってよいほど聞かれたことは、日本で米国のことを一番知っていたのは日本海軍ではなかったか、その海軍がなぜ米軍と戦争することになったのか、ということであった。なかには日本海軍の作戦のやり方に言及して、アメリカンフットボールで同じ手を使って連敗するのは下の下といわれるが、日本海軍はなぜ同じ手をくり返してその都度、叩きのめされたのか、と質問する人もあった。GHQで会った米国の軍人も、史実調査部で知るようになった米国海軍の士官も、同じような意味のことを質問していた。」(同書7〜12ページより)
「たしかに米国の物量は、戦前の日本側の判断を、はるかにはるかに越えるものであった。…しかし、それだけが米国の真の力ではなかった。真の力は、そのほかにあった。それは、実にそのような大軍備の増強を、所要の時機までに整備しあげた大組織力と、さらにこれを縦横に駆使する見事なチームワークであった。言葉をかえていうならば、米国の真の力は、その無限ともいうべき資源ではなくて、その資源を最大に活用した米国人の人の力であったのである。われわれがかつて組しやすいと思った精神力のなかにこそ、米国の恐るべき真の力があったといわなければならない。」(同書286ページより)
千早氏の指摘のとおり、アメリカンフットボールのように最終ゴールを明確に設定しそこから逆算して目的達成のために最も効果的・効率的な一連のステップを臨機応変に立案実施する勝負に持ち込めば、米国は無類の強さを発揮する。
太平洋戦争やアポロ計画の戦績はそのアメリカが最も得意とする勝ちパターンの極致といえよう。
反面、かつてのベトナム戦争や今般の対テロ戦争のように「何を以て勝ちとするか」という戦略目的が明確に定義できず戦勝に向けて国論の統一も難しい非正規戦では、この史上最強の(あるいは、13世紀のモンゴル帝国に次ぐ史上第二位の)超大国は意外に苦戦を強いられているようである。
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