北米留学上級技術マニュアル - 入学準備勉強法
目次
- タイピング
- ITスキル
- 論文作法:paragraph writing
- 専門分野の勉強
- 日本に関する資料を集める
- 芸を磨く
- 自炊入門
- 疲労回復法
- 英語漬けの生活を体験
- 進学先の教授の話し方に慣れる
- 入学前の準備コ−ス
- 北米文化の常識
入学許可はおりたが、残り数ヵ月を有効に使って不安のない準備をしたい、というお心がけの方に。やおら英会話の特訓、というばかりが能ではない。極論すれば、最低限の英会話能力ぐらいは、現地につけば不思議と身につくものである(というのは、やはり「極論」だが。)
むしろ、現地にいるだけでは身につかない技能として、次のような勉強をお勧めしたい。(もちろんこういう勉強は入学が決まる前にも始められる。むしろ、願書を準備する前に身につけておくと応募書類の準備なども効率的にすすめられる。)
タイピング↑
筆者が行なった留学準備の中で対費用効果が一番高かったのがタイプ学校にかよったことである。Touch type (キーを見ないでタイプが打てること)ができるか否かは、学生生活の上で死活にかかわる。一々キーボードを見ないとタイプができないのでは、書きながら自分の考えをまとめるなんてとても無理である。 学期末、何十ページものterm paperを抱えたときそれが身にしみる。ワープロ全盛の今日、一々他人にpaperをタイプしてもらうなんて考えられない。
コンピューターがらみの研究をしている方も、touch typeができるか否かは技能の上達に多大の影響を及ぼす。(いくらgraphic user interface全盛時代でも、専門技術者・研究者ともなれば、まじめに一行一行プログラムを書く必要は必ず出てくる。)
筆者は「サイト・アンド・サウンド」という学校に通った。毎日1時間のレッスンをわずか1週間余続けただけでtouch typeができるようになった時は、感激したものである。「サイト・アンド・サウンド」は心理学を教育に応用して目覚ましい効果をあげた顕著な例の一つといえるだろう。また、最近は、自習用のコンピューター・ソフトも各種出ているから、調べてみられるとよかろう。
ITスキル↑
ワープロ↑
学科を問わず、現地についたらワープロは必需品である。もし入学先で使われているコンピューターの機種とワープロソフトがあらかじめわかるなら、その用法を充分にマスターしておくとあとでラクをする。ワープロソフトは高級なものほど色々機能がついていて使いこなすのが大変だが、作表やグラフ、ページ付け、レイアウト、注釈、目次作成などのテクニックを一度身につけておくと他人が何時間もかかる作業を瞬く間にすませることも稀ではない。
しかし、タームペーパーに追われる生活がはじまってしまうとじっくりマニュアルを読んでいる精神的な余裕がなく、つい焦って能率の悪い方法で作業を始めてしまい、トータルでは時間の無駄ということがよくある。出国前の準備期間こそ、腰を据えてこういう技能をじっくり身につけるチャンスだろう。
Desk-top publishing↑
筆者が昔働いていた大学で、ワープロ技術を徹底的にマスターすることにより通常よりはるかに早い期間で著書の出版にこぎつけた教授がいた。(高機能のワープロソフトにはdesk-top publishingに相当する機能もあり、使いようによっては、ほとんどそのままで印刷所に持ち込めるところまで編集することが可能なのである。)
もっとも、ここまで高度なワープロ技術を習得し自分で著作を編集するのは、大変な手間である。あまり凝りすぎて肝心の研究がおろそかになるのも本末転倒であろう。将来本を出版するなら出版社の編集担当者が手伝ってくれる。(向こうは本職である。)
その他のITスキル↑
大学院で本格的な研究をしようと思えば、スプレッドシートやデータベース、プレゼンテーション用のソフトも便利な道具になるはいうまでもない。特にビジネス系などではスプレッドシートは必須の商売道具である。マイクロソフトオフィスを例にとると日本語版と英語版の操作に大差はないので、どちらでもいいから日本にいる間に徹底的に用法をマスターしておくと、現地についてから必ず「やっておいてよかった」と思う時が来るだろう。無料ソフトのOpen Office(ウインドウズ)やNeo Office(マック)も、インターフェースはMSオフィスと極めてよく似ている。ITでも何でもいいからクラスメートを助けることができる特技や強味があると、たとえ授業が聞き取れずにノートを見せてもらっても一方的に「借り」ばかり作らずに済む。
論文作法:paragraph writing ↑
英語で論文を書く際にはparagraph writing という作法があり、これにのっとっていない論文は大減点される。内容が五十歩百歩なら、こういうレトリックが、成績がAになるかBになるかの別れ目になることすらある。その原理をごく簡単にいうと、
「ひとつのパラグラフ(段落)では一つの論点/主張だけを提起する。その論点をのべる文をtopic sentenceといい、通常paragraph の冒頭(または最後)におく。段落の残りの部分は、その主論点を補強する為の論証や例示に充てる。」
というものであり、これを応用してさまざまなレトリックの展開が可能である。
最初はいささか面倒だが、身につけてみると、共通の基盤の乏しい相手に自分の言い分を伝えるためには有効な方法であるとその有難みが痛感できる。読む方から見ると、このparagraph writingにのっとって書いてある論文は、確かに論旨がつかみやすい。各段落のtopic sentenceだけを抜き出して並べれば一応論文の主旨が尽くせるはずであるから、論の展開は一目瞭然である。(もっとも、topic sentenceを並べるだけでわかりやすい要約になるとは限らないが。)
時には、段落の主論点をそのまま代表しているような一文が段落中に見当たらない場合もある。しかし、そういう場合でもやはり段落の論点は単一でなければならないし、それを一文で言い表すことが可能でなければ、まとまりのある段落とは言い難い。つまり、「topic sentenceは、表層にあらわれていなくても深層に潜在している。」という言い方をすることもできるわけである。
逆に言えば、このtopic sentenceという概念によって段落(「topic sentenceおよびその論旨を拡充する文の集まり」)が操作的に定義されているのである。そうすることによって、「段落とは思考のまとまりである」みたいな同義語反復的説明に陥ることを免れ、どこで段落を切るべきかも明確に規定できる。(とはいえ、実際に論文を書いていると「この段落は長すぎるから、真ん中あたりのキリのいいところで二つに分けよう。」ということをやらないでもない。段落の切れ目は読者にとって息つぎ・トイレ休憩の機会でもあるから、あんまり長いのも迷惑である。要は「原則はしっかり、適用は柔軟に」である。)
日本からの留学生がterm paperで高得点をあげられない原因を調べてみると、この作文作法に不慣れなことに行きつくことが多い。ちなみに、paragraph writingは英語国民なら誰でもできるというものではなく、今ではこれを教えるために多くの大学がわざわざFreshman writingという原則必修コースを大学一年生に課しているぐらいである。
実を言えば、このparagraph writingは、応募書類作成の段階でマスターしておきたい。入学願書のStatement of Purpose Essayをparagraph writingに則って書いているかどうかで、審査教官は志願者のgeneric academic preparationの程を判断してしまうからである。
「パラグラフ・ライティング」
http://sa_yoshi.at.infoseek.co.jp/ocha/hoohoo/kaku/paragraph.html
なお、日本語の文献でparagraph writing の方法を解説した本も出ている。次の『論文の教室』は筆者のイチオシである。
専門分野の勉強↑
専門分野の勉強をしに留学するのだからその予備知識が役にたつのはあたりまえだが、その素養は語学力の不足をも補ってくれる。よく知っている分野なら、多少英語に不慣れでも論文を読んだり議論に参加したりするのが楽になるものである。専門分野でどんな勉強をしておいたらいいか、担当教官に直接問い合わせてみるのも手である。誰に連絡したらいいかわからない場合、とりあえず学科長に連絡するとよい。すでにadviserが決まっているなら(入学以前に知らせてくれる大学もある)adviserに、また、すでに研究興味が特定の分野にしぼり込めているなら、当然その分野の専門家に連絡すべきである。
教授に、文献の紹介を頼む手紙例↑
I am newly admitted to your program for the fall semester, and am particularly interested in doing research into... I would like to prepare as much as possible before my enrollment, so that I can begin my research project at an early date. I would very much appreciate it if you could give me a list of reading materials which I should read by September, which will better prepare me for the academic training at 〜. I would also appreciate any suggestions/recommendations about how I can best prepare for the fall semester. (E.g., are there any materials I should collect before leaving Japan?)
Thank you for your attention to this inquiry.
電子メールが使えれば、こういう時も敏速にやりとりできるから、便利である。ただし、中にはメールアドレスを公開していない教授もいる。その場合は、こちらの電子メールやファックス番号を明記した手紙で問い合わせ、「ご返事は電子メールで結構です」("Please feel free to respond by e-mail, should you find it convenient to do so.")と書き添えておくのが、当今一番礼儀にかなったやりかたであろう。
洋書注文法↑
丸善、紀伊国屋などの洋書店を通じて注文するのが長らく正攻法だったが、最近ではファックスや電子メールあるいはウェブ経由で国内外のオンライン書店や国内の洋書輸入専門業者に発注することも広く行われている。支払はクレジットカードが手軽(所持者氏名、カード番号、有効期限を相手に知らせる)。
翻訳書も使いよう↑
「英語圏の大学に留学するからには、英語文献は全て原文で読む」というお心がけなら見上げたものだが、能率をあげるためには翻訳書も使いようである。さきに翻訳書をざっと読んでから原文を精読するのも時間の節約になるかもしれない。自分の専門分野の英語文献なら勉強を重ねるにつれて読むスピードがどんどん増してくるが、専門外のことを早足でざっと知りたいという場合、外国語では速読はままならないから、翻訳書が特に役にたつこともある。
ただし、数学、統計学、コンピューターのプログラミングなど、万国共通の記号体系を使って論を進める分野の文献では、概して翻訳書の有用性は薄いように思う。最後に、まれにとてつもなくひどい翻訳書が出回っているので、ご注意。
和書目録↑
いくら大きい本屋や図書館でも、最近刊を含めて専門書を完備してあることは珍しい。おのずと注文にたよらざるを得なくなる。理学、人文、教育、国語・国文学など各分野別の『〜図書総目録』シリーズが手ごろな値段で手にはいるから、手元において検討されたい。近刊情報は『これから出る本』(本屋でもらえる)に掲載される。さらに徹底的にやりたい方は、図書館か本屋にって、『日本文献総目録』を見せてもらうとよかろう。最近では、インターネットでも出版社の情報にアクセス可能になりつつある。アマゾン社など、検索と注文が一時にできてしまうサイトもあるが、印刷した目録の一覧性も捨てがたい。
領収書を忘れずに↑
こういう文献購入に使った費用の領収書はしっかり保存して、渡航先まで持参した方がいい。少し面倒だが、購入した日の円ドル為替相場も記録しておくとよかろう。一年目に運よくresearch assistantやteaching assistantの仕事がもらえた場合、その業務内容に関連した文献資料集めに使った費用は経費として控除を申請できるからである。
放送大学の威力↑
筆者が留学準備をしていた当時は放送大学などという素晴らしい教育システムが存在しなかったので難しい専門書にかじりつくしかなかったが、今なら渡航までの間、放送大学をめいっぱい視聴してしっかり認知科学や第二言語教授法の基礎知識を充電するだろう。特に筆者のようにサラリーマン経験をしていったん「勉強」から離れていた人間にとっては、勉強モードに戻るためにこんなにありがたい無料サービスはない。各分野の一流の学者が練達のプロデューサーやディレクターと協力しているだけに、放送時間は短くても中身が実に濃い。教科書も、同内容の専門書とくらべるとずっと安い価格設定をしているのでお買い得である。放送大学の授業番組は4年に一度撮り直しをするそうなので、改訂直後に視聴すると文字通り最新の知識が得られる。大学院の授業のみならず、学部生向けの授業といえども馬鹿にできない。
日本に関する資料を集める↑
例えば、あなたの専攻が英語教育学だとする。留学してから現地で学んだ理論や技法を応用して日本の英語教育を分析してみようと考えているなら、日本の英語教育に関する資料を集めていくと重宝する。中学・高校の英語教科書などは談話分析の資料としても使えるかもしれない。教授としても、自分の教えた理論が色々な国や言語を分析する際に応用されれば、その実効性が検証されるので歓迎してくれる場合が多い。また、学生としても、自分のよく知っている国の状況を素材にすれば、「料理」するのがかなり楽になるものである。
芸を磨く↑
外国暮しの間には、隠し芸を披露せねばならないことや、知人に料理をふるまわねばならないこともある。どんなきっかけで、「何か日本の芸を見せてくれ。」と言われるかわからない。特に田舎へ行くとこの傾向が強い。また、ロータリーやライオンズ・クラブのような篤志団体の奨学金をもらって留学すると、交流のために人前にひっぱりだされて話をさせられることが頻繁にあるそうである。
そんな時慌てないで済むように、日本にまつわる特技や日本料理一品の作り方、それにちょっとした話のネタぐらいは身につけておきたい。芸といっても、別に高度なことを要求されるわけではない。相手がよほどの日本通でもない限り、軽くお茶がたてられるとか、けん玉ができるとかでいいのである。できれば、それを英語で説明できるようになっていれば言うことない。(こういう時、例えば折り紙の作り方を英語で説明したような本を持っていくと重宝する。)
せっかくなら、実演に必要な小道具は2セット持って行き、1セットは聴衆の中から選んだ「生徒」に渡しこちらの示す手本にならって実演させるようにすると、盛り上がるものである。概して、小学生ぐらいの子供は照れずにノって生徒役を演じてくれる。
昔、これといって芸のない人が考えあぐねたあげく、お箸の使い方を教えて好評を博したときいたが、今これをやるなら相手と場所柄を考えた方がいい。最近ではHawaii、California、New Yorkなどには日本料理の通も多いので、下手をするとしらけてしまうネタである。一方、一日中靴をはいて生活しているアメリカ人には絶対できないのが、足の指で物をつかむ芸。最近東洋の習慣をとりいれて家の中では裸足ですごす家庭も出てきたが、それにしても日本人のような器用な足指使いのできる者はまずいない。とくに足の親指と人さし指(?)で物を挟んでつまみあげる芸は圧巻である。ただし、人前で素足をさらすのは下品とみなされる場合もあるので、事前に主催者に相談なさることをお勧めする。
評論家の落合信彦氏は、Albright College留学中、空手道場の師範をしていたそうだが、これは誰にもできることではあるまい。体を動かすのが得意でなくても、囲碁ができると意外な人脈がつかめる。数学科やコンピューター学科の教授など、理工系のインテリを中心に囲碁ファンが多いからである。ただし、その中にはかなりの強豪もいるから、相手の実力を見定めずにうかつに「碁を教えてあげよう。」などと口走らない方が無難だ。
日本人であることを利用しようというのなら、留学先でアニメクラブに参加するのも悪くない。「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」など日本のアニメが大好きという学生がほとんどどの大学にもいて、ビデオの上映会をやったり漫画本を交換したりしている。(某大学では、初級日本語受講者の半分以上は日本のアニメ本を読めるようになるのが学習目的、といわれているぐらいである。)日本から「エヴァ」を全巻持参でもすれば、羨ましがられること間違いない。
- 理工系専攻の男子学部生
- コンピューターやネットワークに強い
- 留学生を多数受け入れている大学では、アジア人会員も多い
というあたりである。仲良くなっておくとコンピューターを教えてもらえるなどの余得があるかも?
自炊入門↑
現地でアパート住まいをするつもりなら、最低限の自炊ができる程度の料理の腕は必須であろう。たとえ当面寮に入って食堂で食事をする予定でも、食堂が閉まってしまう休みなど、遅かれ早かれ自分でエサを調達する必要が出てくる。友達といっしょにレンタカーを借りてキャンプや安モテル周りの旅行をしようという時にも料理ができると心強い。そんな時、凝ったご馳走が一品だけ作れるより、ありあわせの材料、安い予算内で、時間をかけずに栄養のあるものを色々作る技術の方が重要である。簡単に入手できる材料を使って電子レンジに頼らずに30分以内で作れる料理が10種類あれば、ひとまず安心できる。忙しい留学生は、後始末の面倒な揚げ物はなるべく避けた方がいい。(アパートを引き払う際も、揚げ物料理でレンジや壁にこびりついた油の始末は面倒である。)筆者の経験からいって、北米本土48州およびハワイでは次の材料はほぼ一年をとおして手頃な値段で手に入るようである(アラスカには行ったことがないので、残念ながら事情がわからない)。
- 牛肉
- 豚肉
- 鶏肉
- 鶏卵
- じゃがいも
- にんじん
- たまねぎ
- ピーマン
- ブロッコリー
- カリフラワー
- ほうれんそう
- ロングライス
学生向けの自炊入門書のなど、買って持って行ってもよかろう。(主婦対象の料理の本は概して写真がカラフルで見ていても楽しいが、凝った料理を載せているので、初心者には荷が重いようである。)WWWにも、料理のレシピを載せているページがある。
ちょっと照れ臭いが、筆者の書棚に並んでいる料理の本から極めつけの初心者用入門書をいくつかご紹介すると、
- 玉村豊男『男子厨房学入門』文春文庫
- 出井州忍『まんが版男の自炊入門』日東書院
- 大学生協東京事業連合編『自炊のすすめ』主婦の友社
- 『定番メニュー作り方読本 自炊しまショウ』池田書店
やたらに「男」を冠した書名が多いのはひょっとしたら差別ではないかとひがんでしまうが、とにかくこの4冊は鍋や包丁の種類も知らないような超ド素人を念頭において書かれているので、重宝この上ない。ただし1〜3は「昭和の御代」初刷の少し古い本である。今ならもっと色々な本が出ていると思う。
こういう料理の本は
「〜を作るには、材料は〜と〜と〜が必要。」
という書き方がしてあるのに対して、実際に自炊生活をはじめると
「今冷蔵庫に〜と〜があるから、それを使って〜ができる。」
という食材先行の発想が必要になる。余裕があれば、そういう練習もしておくといざという時心強い。(どなたか、そういう「逆引き式」の料理データベースを開発してインターネット上で公開していただけないだろうか。「〜がない時は〜で代用する」というようなノウハウまであればさらに便利。)
「本だけでは身に付かない」というわけで料理学校に通う方がおられるが、もし時間に融通が利くなら日本にいる間に料理店などの厨房でアルバイトをして基礎を身につけるという方法も考えられる。特に学生時代に2〜3年こういうアルバイトをしておくと、いざという時に耐乏生活で耐え抜くことも可能になる。そういう目的でアルバイト先を探すなら、次のような点に気をつけられてはいかがだろうか。
- ファーストフード系は店舗であまり調理をしないので、料理の勉強にならない。
- 高級レストランや料亭は専門のシェフでないと調理させてくれない。下ごしらえだけで何年も修業しないといけないから、プロを目指す人でないとコストパフォーマンスが悪い。
- 個人経営の一杯飯屋の募集に応じる場合、「しかじかの目的で自炊ができる程度の料理の腕を身につけたい」と正直に動機を述べれば好感度があがるのではないだろうか?(特に男性の場合)
なお、北米の大学界では「ポットラック」と言って、料理持ち寄り式のパーティーもよくある。こちらの方はそう頻繁にあるものではないので、少し調理に手をかけてもさしたる負担にはなるまい。なお調理施設が手近にないような場合、あらかじめ事情を説明すればかわりに飲み物を買ってもっていくなどで勘弁してもらえる(だろう)。
疲労回復法↑
肩こりは留学生の職業病である。とにかくストレスの多い生活が続く上、膨大な量の文献に目を通すために連日目を酷使するのだから、当然とも言える。渡航時の機中でも、長時間狭い座席に座って同じ姿勢を続けていると、どうしてもあちこちが凝ってくる。その対策として指圧、マッサージ、ストレッチ、リラックス瞑想などを覚えておくと便利である。(出国前にその時間がなければ、渡航時の機中が絶好の練習の場である。)本屋にいろいろ本がならんでいるから、一冊手にいれてやり方を身につけておくとよかろう。
なお姿勢が悪いと肩こりになりやすいのは周知のことだが、なぜ猫背になるのか原因を調べてみると腹筋、背筋、胸筋が弱いために上半身を支えられないことにいきつくことがよくあるのだそうである。したがって、このあたりの筋肉を集中的に強化しておくことも肩こり予防策の一つといえそうである。
姿勢矯正具↑
「姿勢を正しくするための椅子」と称する商品が出回っているが、筆者が実際に試してみると不自然な力の入れ方をする必要がありかえって肩が凝ってしまうなどの副作用があって長続きしなかった。
Nada-concepts Inc.
http://www.nadachair.com
ベッド用読書めがね↑
不幸にして読者が猛烈な肩凝りに襲われ、椅子に座って本を読むのは辛いがそれでも膨大な予習課題はこなさないといけない、という状況に追い込まれた場合、ベッドに仰向けに横たわりながら楽に本を読めるよう光の方向を変えてくれるプリズムつきの眼鏡を持っていると助かるかもしれない。筆者が近年愛用しているのは、「王様のアイデア」で購入した「見楽マン ごろねスコ−プ」(東京セイル株式会社)という商品である。この眼鏡をかけるや、まっすぐ前を向いていると自分の足下が眼前に見えるから、楽な姿勢で読書を続けることができる。(もちろん、テレビを見ることも可能。)もっとも、垂直方向に視線を向けながら本を読むのはそれだけで眼に悪いという話も聞いたことがあるが、緊急措置としてはやむをえないのではないだろうか?
http://store.yahoo.co.jp/osamanoidea/w060810.html
英語漬けの生活を体験↑
現地について四囲全て英語という生活が始まると、当初はそれだけで物凄い緊張を余儀なくされ、心身ともに疲れてしまうものである。急激なショックを避けるためにも、日本にいる間に丸一日英語漬けの生活を経験してみられるとよかろう。といっても、テレコやラジオにかじりついていては集中力が持たないのが常人である。衛星放送でCNNなどの英語番組が入るなら、朝起きてから夜寝るまで、ひたすらテレビの前にすわり続ける生活を何日か立て続けにやってみると、感じがつかめるのではないだろうか。英語の映画のビデオを立て続けに見るという手もある(最初は字幕を見ないように)。映画なら、なるべくせりふの多いドラマがいい。無理に全部わかろうとしなくても、その間、お煎餅ぼりぼり、みかんムシャムシャで一向にさしつかえない。居眠りをしても、コンピューターゲームに熱中しても構わない。とにかく、一日中まわりで絶え間なく英語が流れている環境下でも精神的疲労を感じなくなるまで慣れるのが主たる目的である。
進学先の教授の話し方に慣れる↑
進学先で授業をとりたい先生が日本で講演することがわかっていれば何をおいても出席し、できれば録音させてもらおう。せっかく録音したら筆写するぐらいの覚悟で徹底的に聞き込んでおくとよいだろう。その先生特有の間の取り方や話のまとめ方をあらかじめ知っておくことで、本番がはじまった時にずっと有利な立場にたてるからである。講演を理解するために必要に応じその先生の著作を読み進めれば、さらに専門知識を深めることができる。
入学前の準備コ−ス↑
「秋からの入学に備えて、早目に現地について夏の英語講座に出よう。」というお心がけの方もおられるが、この英語研修というのが概して評判がよくないのである。会社が費用を出してくれるとでもいうのなら折角の機会だから見聞を広げるために参加なさってもよいと思うが、大学から要求もされていないのに自費で参加する必要があるだろうか?疑問なきにしもあらず、である。
英語に慣れるためなら、むしろ正規の夏期講座(英語研修でななく)に聴講生として参加して、耳を慣らすことにつとめてはいかがであろうか(聞き取りの力をつけるのが目的なら、なるべく、まとまった話をしてくれる先生の授業に出るようにお勧めする)。教室に録音機を持ち込んで、後で聞き直せば倍にも3倍にも聞き取りの練習になる(本番の新学期が始まってからでは、忙しくてとてもそんな余裕はない)。もちろん、英語力と専門知識に自信があるのなら、聴講ではなく正規の履修をして単位を稼ぎはじめればいいのであるが、慣れない外国での留学生活を短期決戦の夏期講座からはじめるのにはリスクがともなうことも事実である。
なお、自校では夏期に専門科目がとれない、というなら他大学や学会主催の夏期セミナーに参加することも考えてよい。ただし、他でとった科目を自校の卒業単位として認めてもらうのは面倒である。
また、経済、ビジネス関係を専門となさる方たちには、語学研修と専門トレーニングへの橋渡しをかねた、The Economics Instituteという機関がある。こちらは内容も充実しているらしく、また大学に正規入学した暁には、Instituteで取得した単位の移行も可能とあって、参加なさった方からはいい評判をうかがった。
The Economics Institute
1030 13th Street, Boulder
Colorado 80302-7306 USA
Ph. (303) 492-3000
Fax: (303) 492-3006
Telex: 450385 ECONINST BDR
http://www.economicsinstitute.org/
北米文化の常識↑
どのみちいい歳をした大人がアメリカに関して全く偏見なしで臨むなんでことができるわけはないから、むしろアメリカについて賛否ともどもいろいろな立場からの意見や情報を積極的に仕入れて、自分の偏見を相対化することをねらった方がよかろう。 したがって、渡航前にいろいろ情報を仕入れておくことを大いにお勧めしたい。かといって筆者のような素人が「北米文化の全てを解説する」なんて大それたことを企てるつもりも毛頭ない。とはいえ、一冊本を読んでおくだけで事象の背景がよくわかることもあるので、ここではそういう即効性のある分野に限ってご紹介したい。
聖書・シェークスピア早わかり↑
英語圏の新聞や雑誌、政治家のスピーチ等には、聖書やギリシア神話、Shakespeareなどを踏まえた表現がよく出てきて、それを知らないとニュアンスがつかめないことがある。それでなくても、故小林秀雄翁によれば聖書は最高におもしろい小説なのだそうである。入信する気はないがキリスト教説話のストーリーぐらいは知っておきたい、でも旧約聖書は大部過ぎる、とおっしゃるなら、子供向けやマンガ版の『聖書物語』(和訳あり)の類にざっと目を通しておくだけでも概要はつかめる。(ただし、子供向けの本では、あまり残虐な話などは、やわらげてある場合もある。)こちらは大人向けだが、阿刀田高氏の『旧約聖書を知っていますか』『新約聖書を知っていますか』(ついでに『ギリシャ神話を知っていますか』も)なら文庫(新潮社)で手に入る。
さらに、中東の地図や年表など視覚的補助を交えて聖書を解説した本も出ている。
最近はイスラム文化が話題に上ることが多いので、こちらも付け加えておこう。
原典にあたるにしても、新約聖書は薄いから一日もあればざっと全文読めるだろう。ありがたいことに、布教のためにタダで和訳聖書を配っている団体がある。
いずれにせよ、聖書の和訳を先に読むと人名や地名の発音が英語と大きく異なるので戸惑うかもしれない(たとえばMatthew - マタイ)。
Shakespeareも全部読むのが面倒だとおっしゃるなら、ラムの『シェークスピア物語』(和訳あり) ぐらいで最低限の用は足りるであろう。
アメリカまるごと超早わかり↑
西岡 達裕 『図解雑学 アメリカ』ナツメ社
北米史早わかり↑
最低限の歴史の知識がないと、世間話もままならない。大統領選挙の時などに何喰わぬ顔でスルドい質問を発してアメリカ人の級友をたじろがせてやりたければ、それなりの下準備が必要である。「歴史」といっても1000年以上も昔の話ではなく建国後せいぜい200年ちょっとという国だから、憲法制定・修正の経緯や移民政策の変遷なども含めて現在の政治社会のありように直結している。
専門的な文献は除き、20世紀初頭までの米国の通史をおおむね編年体で要領よくまとめたものとしては
中屋健一責任編集『世界の歴史第11巻・新大陸と太平洋』中公文庫
あたりが手ごろで、簡単に読了できる(ただし、この本の内容はアメリカ中心で、カナダのことは詳しく書かれていない)。
猿谷要『生活の世界歴史第9巻・北米大陸に生きる』河出書房新社
は領土拡張、暴力社会、人種問題などトピックごとにまとめてあり、編年体の通史を補うものとなっている。著者・猿谷教授の個人的体験をまじえ、現代アメリカ(と言っても書かれたのは1970年代だが)との関連も強調してあるので、読み物としても面白い。(ただし、こちらもカナダについては詳しくない。)猿谷教授はアメリカ人種問題の専門家で、さすがにそのあたりの造詣の深さは並み並みではない。
米国のみならずカナダ、メキシコ、さらに中南米も含めたものとなると、
今津晃『世界の歴史17・アメリカ大陸の明暗』河出書房新社
の方が地域間のバランスがとれているようである。(ただし、この本も最初に出たのは1960年代後半だとのこと。)
20世紀中葉以後の話になると一般向けの本が山ほど出ていてとても紹介しきれない。本屋にいって気にいったものを探すか、専門家に教えを乞われるのがよろしかろう。下に掲げる『アメリカが見えてくる50冊』も便利な読書ガイドである。ここでは一冊だけ、レーガン政権が出現した1980年代までカバーしている米国通史として
猿谷要『物語アメリカの歴史』中公新書
をご紹介しておく。
アメリカ関係文献の解説本↑
神田外語大学が学部生に無料で配布している読書ガイドシリーズ『本はおもしろい』の一冊である。有料販売を想定していないのでISBNもなければ定価も設定されていないが、これがなかなかによくできている。外交、社会、法律、宗教、音楽、文学など様々な角度からアメリカを論じた書籍を各分野の専門家が新書判見開き二ページで解説するという趣向で、それぞれノリノリに書いているのが伝わってくる。さらに近隣のカナダ、メキシコ、そしてブラジルをふくむ中南米に関する書籍もとりあげられており、「アメリカに関する本はたくさんありすぎてどれから読んだらいいかわからない」という方には格好の糸口を提供してくれている。
一般書店で入手し難いのが残念だが、とりあげられている書籍50冊のリストは下記のURLで公開されているので、これだけでもお宝ものである。
http://www.kuis.ac.jp/toshokan/fun/funAmerica.html
[TrackBack URL]