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北米留学上級技術マニュアル - 志望校決定の基礎知識


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志望校研究はなぜ大切か

留学生から聞く愚痴の中で一番多いのが「入学前に考えていたのと、プログラムの内容が違う。もっと中味をよく調べてから選べばよかった。」という後悔のことばである。同じような学科名でも、大学によって内容や充実度はずいぶん違うものである。「大学なんてどこでも同じようなもの」なんてことは絶対ない! 極論すれば、留学計画の中で一番大事なのは志望校選びである、とすら言えるぐらいである。「こんなはずではなかった」と後悔しない為に、徹底した志望校研究を強くおすすめする。

名は体を表わさず

 学問の相互交流が進んだ今日では、古い学科名称やイメージがそこでの研究内容と必ずしも対応しない。言語学科に実験心理学者がいたり、教育学部に文化人類学者がいたりするのも当節珍しくないから、学科名だけで内容を判断せず、中味を調べて見られたい。

他学科の内容も調べる

 他学科の授業を比較的簡単に受講できるのも、北米の大学の特色である。自分の応募する本命学科だけでなく関連する他の学科にも資料を請求して、教授陣や授業を調べておこう。そういう場合、「本当は心理学科にいきたいが、一応参考までに言語学科の資料も送ってください。」などと書くと、「バカにしている」と機嫌を損ねかねない。「是非入学したい。」と書いたらウソになる、と気になさる正直な方は、

"I am interested in your program."

と書いておけばいい。ウソじゃないでしょ。

 実際には、同じ大学の二つ以上の学科に同時に応募することも可能である。(両方から入学許可がおりたら、それからどちらを選ぶか決めても遅くない。)

 いくら他の学科にいい先生がいても、自分の学科の科目以外はとれないとしたらメリットは限られる。選択科目の比率や、他学科のコースの受講の自由など、カリキュラムの柔軟度もチェックしておかれたい。

二重専攻と副専攻

 電子工学専攻でundergraduate programに入学したが、勉強しているうちに興味が移って卒業時にはジャーナリズムでBachelor of Artsをとった、なんていう話は珍しくもない。そういう進路変更をした者を「落伍者」と決めつける気風もないから、学生は入学してからいろいろなコースをとって自分の適性を試すことができる。ご存じの通りアメリカは、優秀な学生には高校から「飛び級」をして大学に入学したり高校生の身分のままで大学に通って授業を受講することを認める英才教育制度の「先進国」だが、その是非を論じるにあたっては背景としてこういう「やりなおし」がきく柔軟な学位制度があることも頭に入れておくべきだろう。

 さすがに大学院ともなると、専攻変更はundergraduateほど簡単ではないが、graduate、undergraduateを問わず二重専攻(double major)あるいは副専攻(minor)という制度を認めている大学も少なくない。日本だと経済学修士号と数学修士号の両方をとるためには、先にどちらかの大学院に入って2年で一つ修士号をとり、その後でまた別の学部の大学院に入りなおしてもう一つの修士号を目指す、というやり方しかなく合計4年はかかってしまうが、北米では3年ぐらいかけて両方の修士をとるのに必要な単位をまとめて稼いでしまい、卒業と同時に2つの修士号を手にするということも可能である。筆者の先輩には、言語学の博士号とコンピューター工学の修士号を同時にとった人(専門は人工知能)がいた。卒業後、某一流ハイテク企業の上級研究員を経、今は某名門大学の准教授として研究に精励しておられる。もちろん学位を複数個とるには人並み以上の努力と余分な時間を要するが、余人にかえがたい高度な専門知識・技能を身につけて卒業したいという方には、一考の価値があろう。

こういう研究分野の変針も、日本では「理系→文系」はありえても逆の「文系→理系」は無理だと思ってしまいがちである。ところが実際は、日本で経済学部を卒業した後アメリカで数学科の修士号をとった事例を筆者は現認している。(経済学部が「文系」かどうかも議論の余地があるかもしれないが。)文系学部からcomputer scienceの大学院に進んだ例も珍しくない。頭を柔軟にし、自分が何をやりたいのかを優先して考えた方がいいようである。

情報収集は同時進行で

 アメリカの大きい州立大学の事務職員は、学科ごとに別々に採用される。サラリーも学科によって異なる。当然、他の部署の仕事まで助けてやろうなどという職員はまずいない。たらい回しのひどさは、日本の大学以上だと思っておいた方がいい。

 例えばあなたが法学部に出願しているとして、学部あてに「学生寮の情報を送ってください。」と手紙を書いたら、「それはHousing Divisionの担当です。」と返事が帰ってくるまで、往復で最低2週間。それからHousing Divisionに手紙を書いていたら、申込書を手に入れるだけで、1か月かかってしまう。たまにあなたの問い合わせの手紙をコピーして担当部局に転送してくれるような職員がいたら、ラッキーという他ない。各種の情報収集は並行して進めるのが、志願者としてうてる対策であろう。

 所管部署の正確な名称がわからなくても、心配はいらない。住居のことならHousing Division、夏期講習のことならSummer Session Officeなど、それらしき名称さえ書いておけば、適切な部署に配信してくれるはずである。心配なら、その部分が目立つように下線をひいておくとよかろう。もちろん、担当部署の正確な名称がわかっていればそれを書くにこしたことはない。そういう情報の収集にもWorld-Wide Webが役にたつ。申し込み書をインターネットでダウンロードできるようにするのが今後の趨勢だろう。

単位交換制度

 他学部どころか、他の大学のコースを受講しても卒業単位が認められるという制度が、最近発達してきている。学問の急発達で、どの大学も自校だけであらゆる分野の専門家を抱えておくことが不可能になったことが、理由のひとつであろう。

 有名なところでは、Ivy League School間の単位交換制度、Harvard University とMITの交換制度、Carnegie Mellon UniversityとUniversity of Pittsburghの提携など。University of Californiaなど、同じ州立大学システムに属する大学間でも、この制度が運用されていることがよくある。筆者もUniversity of Illinois 在学中はBig Ten (中西部の主要大学間の連合組織)の単位交換制度を利用して、夏学期にはMichigan, Minnesota, Northwesternの3大学を渡り歩いた。いずれの場合も、母校Illinois大学で授業料を払えば、他校の授業が気がねなしに受けられた。しかもこの間、筆者はIllinoisで授業料全額免除を受けていたので、結局まるまるタダで、4つの大学で勉強したことになる。(車を持っていれば、通常の学期中も毎週University of Chicagoの言語学科に通いたかったところ。)

Big Ten

 中西部の主要州・私立大学間の連合組織

  • Northwestern University(私立)
  • University of Illinois (州立)
    • University of Illinois at Urbana-Champaign
    • University of Illinois at Chicago
  • University of Michigan at Ann Arbor(州立)
  • Michigan State University (East Lansing)(州立)
  • University of Wisconsin (州立)
    • University of Wisconsin at Madison
    • University of Wisconsin at Milwaukee
  • University of Iowa (Iowa City)(州立)
  • Indiana University, Bloomington(州立)
  • Ohio State University (Columbus)(州立)
  • University of Minnesota (Twin Cities)(州立)
  • Purdue University (州立)

の十大学(12キャンパス)に最近、

  • Pennsylvania State University(= Penn State) (州立)

が加わって11大学となり、事実上"Bigger Eleven"とでも呼ぶ方がふさわしい構成になった。さらに、

  • University of Pittsburgh (半私半州立)

の参加の準備も進んでいると聞く。上記の11大学に

  • University of Chicago(私立)

を加えた諸大学が Committee on Institutional Cooperation (CIC)という機関を構成して、大学院同士の単位交換制度を進めている。

 Big Ten 参加校の間では、アメリカンフットボールなどのスポーツの交流に加えて、大学院間の単位交換制度など学術教育上の協力体制も強化されつつある。因にPenn Stateおよび University of Pittsburgh があるPennsylvania州はアメリカ建国13州の一つで、もちろん東部New Englandに属するが、同州内でもAppalachian山脈以西は気候が内陸的で、気風的にも中西部にやや近いところがある。

学期制度

 大きくわけて、セメスター(semester)制(2学期)とクウォーター(quarter)制(3学期)の大学があるのは既にご存じと思う。セメスター制の場合、一学期は14〜16週間で、秋学期は8月末または9月はじめ、春学期は1月末か2月はじめにはじまる。クウォーター制なら、秋学期開始が9月、冬学期開始が1月初頭、春学期開始が4月という場合が多い。(なぜ、3学期制なのに「クウォーター=四半期」というかというと、夏をもうひとつの四半期として数えているからである。)

 稀に、一ヵ月=1学期にそれぞれ一つのコースだけを受講するという制度の大学もある。言わば、一年中夏期集中講座をやっているようなものである。

留学期間

 学士レベルなら3〜4年、修士なら最低1年通常2年、博士号をねらうなら、コースを終わるだけで2〜3年、その後の博士論文の完成に1〜2年はみておくべきであろう。博士課程の科目をとりおわって博士論文の計画が正式に承認されると、博士候補生(doctoral candidate)、別名All But Dissertation (ABD)を名乗れるようになる。「その段階で仕事を見つけて就職してしまい、あとはゆっくり暇を見つけて論文を書こう」という人も多い。確かに貧乏暮しを続けていた大学院生にとってフルタイムの収入は魅力だし、一年でも早くキャリアを始めたいという焦りに似た気持ちもはたらく。

 しかし、一端就職してしまうと研究に時間がとれないし、精神的にも教えることと雑用で頭がいっぱいになって、なかなか論文に頭がきりかえられない。指導教授と頻繁に会えないハンディも大きい。学生の時には「週に一日ぐらい論文にさけば、すぐに仕上げられる。」と思っていても、その「週一日」という時間がなかなかひねり出せないものである。論文を書き上げてから就職した方がいい、というのが、筆者の苦〜い経験に基づくアドバイスである。

一年でとれる学位

 いわゆるprofessional degree(たとえば英語教師養成)の修士課程の場合、最短1年で卒業できるようにカリキュラムを組んである大学もある。極端な場合、岡地勝二教授(留学関連文献解題」参照)のように一年間の在外研修期間中に経済学の博士課程の科目履修と論文執筆を両方終えてしまった猛者もいる。しかし、これはそれなりの学問的な下地と岡地教授の超人的な努力があればこそできたことだし、制度的にも異例で、どの大学でも認められるわけではないことにご留意いただきたい。

語学試験

 主に人文科学系で、博士号取得の条件として外国語試験を課するところがある。この「外国語」というのはもちろん英語のことではなく、ドイツ語やフランス語などアメリカ人多数派にとっての第二言語のことである。
 そういう大学に入学してから「自分の研究にはそんな言語は必要ないから免除してください」といってもそう簡単に制度がかわるものではない。大学によってはかなり厳格な試験を課するところもあるらしい(特に東海岸の名門総合大学)から、英語以外の外国語まで手が回らないという方はそういう大学を避けた方が無難だろう。

短大生から米大学教授への道

 最終学歴が短大卒の方が将来大学院進学を目指す場合、まず学士号相当の学位が必要になる。進学先を北米の大学院に絞っているなら、最初から北米の大学に編入した方が英語や学生生活への慣れなどの点では有利だろう。学位を取って北米の高等教育界に職を求める場合、北米の学部教育を学生の立場で体験していることは強みの一つにもなる。また、短大を出た後何年か御勤めや主婦業をした人の場合、「いまさら日本の大学で年下とクラスメートになっても話があわない」などの理由で、北米の大学を選ぶ方もおられるようである。
 実際、筆者の知人には「日本の短大卒→アメリカの大学編入→アメリカの大学院進学→博士号取得」というルートを辿って、今ではアメリカで大学教授をしている方もおられる。ただし、アメリカでも学部生に対してはfinancial aidが下りにくいから、金銭的な負担がかかることは確かである。日本の4年制大学に進むのとくらべてどちらが有利か、総合的に判断なさる必要があろう。

大学の「格」

 北米にもやはり、大学の「格式」のようなものがある。必ずしも大学の実際の研究教育の質を直接反映しているものではないが、何かの話の折りに話題にのぼったりすることもあるので、一応ご紹介したい。(間違ってもこの「格」だけで大学院を選んだりしないように、重ねて重ねてご注意申し上げる。)以下に述べるのはおよそのところ、孫をこれらの大学に送っている田舎町のおじいちゃん・おばあちゃんがどのぐらい誇らしげにそのことを周囲のお年寄りに自慢できるか、の目安とお考えいただければよろしかろう。

 まず、アメリカの大学はほとんどが州立か私立である。国立大学は陸海空軍の士官学校など数えるほどしかないし(なお、私立のmilitary schoolもあるそうである)、市立大学を運営する自治体もNew York City、Seattleなどごくわずかしかない。一方カナダでは、主要な総合大学はことごとく州立といってよい。その中で、

まず、一番上にくると言われているのが、Harvardを筆頭とするIvy League8校および、Stanford University、 University of Chicagoの超一流私立大学である。(Ivy Leagueの中でも、Harvard、Yale、Princetonの三校の格式は特に高い。)州立では University of California, Berkeley (UCB)がこのグループに入れられるだろう。カナダ随一の名門、University of Torontoも、国内の評価ではこのレベルに比肩しよう。 (概して、普通のアメリカ人はカナダの大学のことをあまり知らないが。) 同じくカナダのMcGill UniversityとUniversity of British Columbiaも、このクラスかその次ぐらいには見られる。この中でも、在校生や卒業生の多くが掛け値なしで「我が校こそ北米一、あるいは世界一の大学」と本気で信じている大学といえば、 Harvard、Yale、Princeton、Stanford、 Chicagoの私立大学五校に州立代表としてUC Berkeleyを加えた六校ということになるのではあるまいか。

University of Michigan, Ann Arbor, University of Illinois, Urbana-Champaignなどのトップ州立大学および、Duke UniversityやWashington University in St. Louisのような各地の名門私立大学がそれに続く。

University of Texas at AustinやUniversity of Wisconsin, Madison, University of North Carolina, Chapel Hill, University of California, Los Angeles (UCLA)、University of California, San Diego (UCSD)それに私立では Northwestern Universityなどもこのグループに迫る勢いである。

それに続いて、University of Georgia (Athens), University of Massachusetts, Amherst, University of Minnesonta (Twin Cities), State University of New York, Buffalo など、各州内での州立大学システムのトップ校が位置する。

州立の総合大学システムといっても、University of 〜(例:University of California, Los Angeles)と、〜State University (例:California State University, Los Angeles)という二つの系統があり、それぞれ別の機構に属している。多くの州はこの二つの系統をかかえているが、New York 州は、State University of New York(SUNY) システムのみである(State University of New York, Albanyなど)。

California State Universityシステムに属している大学はCalifornia State University, Los Angelesのように所在地名を最後につけるのが慣習なのだが、中にはSan Diego State Universityのように慣例から外れた命名をしている大学もある。

同じ州内の州立大学システムを比較すると、University of 〜系の方が〜 State University系よりも格が高く、予算配分や施設の点でも優遇されている場合が多い。(〜 State Universityというのはもともと、戦前の日本でいえば「師範学校」にあたるものなのだそうである。)有名な例外はOhio State University (Columbus)で、この大学はOhio州第一の州立大学であると同時に、全国ランキングにも名を連ねるクラスの一流大学、そして学生数においても全米最大である。

また、東部にはそもそもUniversity of 〜という州立大学がない州が多い。たとえばペンシルバニア州にあるUniversity of Pennsylvania (UPenn)はアイビーリーグの一角を担う私立大学であり、かたやPennsylvania State University (Penn State)の方が 州立唯一の総合大学システムである。同じくニューヨーク州でも、州民教育の責はNew York State University システムが担っている。

逆にハワイには州立のUniversity of HawaiiはあってもHawaii State University は存在しない。

University of California, Los Angeles(UCLA)とCalifornia State University, Los Angelesを同じく「カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校」と日本語に訳したのでは違いが伝わらない。筆者は前者を「州立カリフォルニア大学ロサンゼルス校」、後者を「カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校」と訳しわけることにしているが、これが定訳かどうかは確認していない。

なお、同じ州立大学システムに所属していても、所在地が違えば運営はそれぞれ独立している。たとえば、University of California, Berkeley (UC Berkeley)と University of California, Los Angeles (UCLA)は、入学審査も含めて全く別の大学であり、学長もそれぞれ別の人物である。一方、用地不足などの理由で一つの大学が近傍の複数の土地にまたがって所在している場合もある(日本でいう、たこ足大学)が、この場合は組織運営上はあくまで一つの大学である。

このように同じ州立大学システムに所属している諸大学のうち、一つが規模や名声において断然抜きんでている場合、その大学はしばしばmain campus(「本校」)とかflagship(「旗艦校」)とか呼ばれる。University of Texas at AustinやUniversity of Michigan, Ann Arborなどは、その好例といえよう。一方、University of California Systemでは、UCLA、UC at Santa Barbara、UC Berkeleyなど学生数数万人の拮抗する規模の大学がいくつもあるため、main campusという言い方はあまりしないようである。

MITやCalifornia Institute of Technology (CalTech)は、まだ総合大学として熟していないのでこのような位置づけが難しいが、理工系に限れば、これらが最上位に位置するのは言うまでもない。

また、Liberal-Arts College(ほとんどが私立)のトップ校Amherst College、Swarthmore CollegeなどからのB.A. degreeは、Ivy Leagueの卒業証書と同格とみなされる。

私立大学vs.州立大学

 以上の説明から、アメリカでは概して私立大学が格上とみなされていることがおわかりいただけたと思う。この傾向が一番如実に反映されるのが、undergraduate の学生の質である。(学生の質を何ではかるかも難しいが、ここでは便宜上、入学前に提出されるSATのスコアを指標とみなそう。標準テストの偏差値だけで学生の能力を測りきれるものではないことは百も承知しているが、要はどんな指標を使うにせよ大学の方が学生を「選べる」立場にあるかどうかということである。)

 州立大学のundergraduate教育は州民へのサービスが重要な目的なので、いくら研究レベルの高い一流校でも自州の学生を優先する必要からSATスコアの上昇には限度がある(州外学生の授業料は州民の何倍も高く設定してあるから、おのずと州内からの応募者が多数を占める)。名声の高い州立大学ほど入学希望者が多く、次第に定員が増えていくという傾向もある。その点、undergraduateの段階で既に「全国区」の志願者から広範に少数精鋭を選抜できる有名私立の方が、質の高い学生だけを厳選できるわけである。現にアメリカ全体でみると、大学の数では私立の方が多いが、在籍する学生数の総計では州立の方が優勢である(つまり、州立大学はマンモス化する傾向がある)。一方、Graduate schoolになれば州立大学もそれなりに絞って学生をとるから、こういう「私立対州立」という単純な比較にはあまり意味がなくなる。

 ところが同じ州立大学といっても、University of Michigan本校(Ann Arbor)では何と、授業料収入を増やすために州内からのundergraduate学生数を制限して州外から志願者を募っている。全米屈指の名門州立大学だからこそできることなのだろう。

 なお、アメリカではそれまで私立だった大学の経営に途中から州がのりだしたりすることがあり、州と民間の共同出資による「第三セクター」的な経営形態も珍しくない。対外的には同じ名前の大学でも、学部によって経営主体が州だったり民間だったりするという場合すらある(たとえばCornell University)。

 その為もあってかアメリカ人は日本ほどには公立、私立という区別に頓着しないようである。日本では冗談のような話だが、自分の通っている大学が私立か州立か即座に答えられない学生も所によっては結構いる。

 最後に、私立大学にはキリスト教団との結び付きがあるものが多いが、だからといってキリスト教徒であることが教員の採用や昇進の条件になるという話は一度も聞いたことがない。(ただし、神学部などではそういうことがあっても不思議ではなかろう。)

Theのつく大学、つかない大学

 The University of IllinoisやThe University of Hawaiiのように正式名称に定冠詞がつく大学と、Stanford UniversityやOhio University、Ohio State Universityのように定冠詞のつかない大学がある。筆者は最初、これがひどく不思議だった。
 しかし、原理がわかってしまえば簡単な話である。地名や人名のような固有名詞の後に直接"University"がつくと、その名詞句全体が固有名詞化するからそれにあらためて冠詞をつける必要はない。ところが一方、"university of 〜"だとその州や地域にある大学ならどれでもいいことになってしまう。そこで特定の大学を指していることをはっきりさせるために、(a university of 〜やanother university of 〜ではなく)定冠詞をつけてThe University of 〜という必要があるわけである。

 …というところまで読んで、慧眼なる読者は「じゃあ、どうしてThe Juilliard Schoolというんだ?」と疑問をもたれたことであろう。どうしてでしょう? うぅむ、困った。ここから先の説明はジュリアードの学生に任すので、以下参照。
http://www.geocities.co.jp/Broadway/4276/juilliard1.html



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