北米留学上級技術マニュアル - 資金計画
目次
- 費用の見積り
- 自費留学資金の計画
- 大学からの Financial Aid (資金援助)
- 大学院生は優遇されるアメリカの大学
- Assistantshipと授業料
- 学校、学科によって異なる条件
- 外国人には難しい 一年目の RA/TA−−でもチャンスは ある
- 米国憲法に忠誠?
- Assistantshipは身内を優先
- TA制度のない私立大学
- 日本語講座の求人状況
- 財政援助を希望
- 大学外でのアルバイト
「教育に金を惜しんではいけない」、というのは所詮きれいごとで、実際にはしっかりした資金面の計画なしに留学するのは無謀である。日本でアルバイトをしながら学費を稼いで大学を卒業したという方も、外国での高等教育はその何倍も厳しいということを頭に入れてから計画を練られたい。
費用の見積り↑
東京の私学へ行くよりも安上がり↑
とは言っても、「そこそこの規模の都市」にある「そこそこの大学」へのアメリカ留学は東京でアパート暮らしをしながら私立大学へ通うよりはずっと安くで済ますことが可能である。東京にいる時のようにファッションに気と時間と経費を使う必要もない。
米ドルのねうち↑
実際に暮らしてみた実感として大ざっぱに言うと、1984〜86年に筆者がハワイに滞在したころの経験では、家賃を除く衣食の消費者物価に関する限り「1ドル=100円」の購買力というのが正直な印象であった。当時レーガン政権のドル高政策で一時は為替相場が1ドル=250円を越えた時期もあったから、実勢では日本よりアメリカ(ハワイ)の方がはるかに物価が高く、恨めしい思いをした。(ハワイは全米屈指の高物価地域である。もちろん、学生がふだん行く店は観光客相手のWaikikiの商店よりはずっと安いが。)
ところが、1986年にIllinoisに移って以来、印象は一変した。物価の安い中西部で1米ドル出せば、日本で170〜180円払うぐらいの値うちのものが手に入ったように思う。概して中西部は生活が質素であるし、筆者自身が米国の価格体系の中で経済的に暮らす方法をある程度覚えたので、余計にそう感じたのかもしれない。呑みに行っても日本のような法外な請求書は出てこないし(筆者がたまたまそういう高級店にご縁がないだけかもしれないが)、ガソリンも日本よりずっと安い。住居費や牛肉はさらに安い。おりしもドルが下落をはじめ、為替で1ドルが百数十円台に乗った時期と重なっていたので、今度は物価の安さに感激した記憶がある。
筆者の限られた経験からいうと、いわゆる先進国の中で衣食住、電化製品、車などを含めた総合物価がアメリカほど安い国は他にないのではないか、と思う。(隣国のカナダとくらべてもアメリカの物価の方が安いらしく、国境沿いに住んでいるカナダの住民は、よく車で買いだしにアメリカに出かけるそうである。)
このような物価水準の違いとともに、アメリカで暮らしていると衣服や装飾品にさほど気を使わないで済む、というのも事実である。大学教授でもジーパン、Tシャツで授業をしている先生はたくさんいる。車検制度がないから、日本ではとっくに廃車になっていそうな古い車に乗っている人もたくさんいる。つまり、むやみに見栄を張らないでもいいだけ、出費が抑えられる。全国民の大半が中流に属する(と思っている)日本では逆に「中の上」にあわせた生活を保てないと肩身が狭いが、階級、あるいは階層の存在を当然視するアメリカ社会では逆に所得レベルにあわせた生活に甘んじることができれば、それなりに何とかやっていけるようである。それに、電気や石油が安いから、冬の暖房はうち中ぽかぽかするぐらいに暖かくすることができる。逆に、アメリカで働いていてたまに日本へ帰ると、虎の子の貯金がみるみる消えてしまって悲惨な思いをする。
概してアメリカの方が市場経済が消費者の有利に働いているという点は評価していいと思う。(しかし、反面、ガソリンの低価格が燃費の悪い車をいつまでもはびこらせ、結局地球規模での資源の無駄使いを生んでいるとも言えまいか?)
州立大学が 私立大学より安いとは 限らない↑
平均すれば州立大学の授業料の方が私立より安いのは確かだが、州立でも州外からの学生には、州民の子弟の数倍の授業料が課され、決して低い負担額ではない。さらに、大都市の大学の場合、生活費もかなりの額になる。田舎の、授業料が比較的安い私立大学を選んだ方が、街中の州立大学よりもトータルでは安くあがることもあるのである。
生活費は 地域によって 大違い↑
衣料や食料の地域差は知れたものだが、住居費の差ははなはだしい。南部の田舎の大学街だと、1ベッドルームのアパートが300米ドル以下で借りられることもあるが、Boston近郊に行くと、1000米ドル出しても難しいとか。これだけで、一年に1万ドル近い差になってしまう。授業料だけで大学を選ぶと、後がこわい。
大学公表の推定生活費↑
大学から送られてくる資料にも1年間の推定生活費が記載されているが、大抵サバをよんで、多目に推定してある(というより、かなりゆとりのある生活を想定している、というべきか。)最低限の生活に甘んずる覚悟があるなら、この公表数字よりはかなり少ない金額で何とか暮らせるものである。
自費留学資金の計画↑
会社派遣で留学するならお大尽暮しもできようが、自分で留学費用の心配をしないといけない身なら、可能な限りの資金源を検討してみるべきである。
奨学金のあれこれ↑
おおまかに分類して、所属大学が支給する奨学金と学外の機関が支給するものとがある。後者の代表は
- Rotary Club
- Lions Club
- Fulbright Scholar Program
などである。
このうち、ロータリーやライオンズの奨学金は府県ごとに選考を行っていて、現役の大学生なら、自分の出身地からでも、大学所在地からでも応募できるから、当然倍率の低い方をねらうべきである(県によっては、ほとんど応募者がいない年もあるらしい)。たとえば、あなたが鳥取県出身で現在京都の大学で勉強しているなら、鳥取から応募した方が断然有利であろう。
なお、民間の篤志団体の奨学金の場合、実力伯仲の候補が残った際には、最後の決め手は「コネ」という場合もなきにしもあらず、だそうである。惜しくも選にもれた方が自信喪失なさらないよう、今から申し上げておく次第です。
また、
- East-West Center
の給費生のように、この両者の中間的な性格のものもある。こういう外部奨学金の最新情報はアルクなどの留学雑誌に掲載されるから、最近刊を入手してじっくり研究なされたい。
East West Center↑
ケネディ政権の肝入りでできた、University of Hawaii at Manoa構内の連邦研究機関。短期・長期の研究者を招くほか、内外の奨学生を多数受け入れ、University of Hawaii at Manoaの大学院に送っている。残念なことに、連邦予算カットによって、存立が危ぶまれている。
所属大学から出る奨学金なら出願と同時に申し込めばいいのであるが、学外からの奨学金は、それよりずっと前から準備が必要なので、周到な計画が必要である。
また、所属大学からの奨学金には、
- 授業料減免
- 何らかの仕事をすることに対する報酬としてのassistantship
- 義務をともなわないScholarship
などがある。
国費奨学生が、国外退去させられる?↑
East-West Centerの長期給費生は、ハワイ大学の授業料全額免除、月々の奨学金を支給される上、学生寮としては設備の整った宿舎にタダで入れてもらえ、ことあるごとに州の式典に賓客として招待されるという夢のようなウマい話なのであるが、給費期間が終わった後は、一定期間アメリカを離れなければいけないという規定がある(制度の趣旨から考えれば、当然といえば当然である)。筆者の友人で、この規定のために婚約者と別れてすまなくてはいけなくなった人がいた。給費が始まる前にこういう規定をよく調べておくのは、将来計画をたてるために必須である。
大学からの Financial Aid (資金援助)↑
大学院生は優遇されるアメリカの大学↑
北米の大学では、大学院生は学部生に比べて色々な意味で優遇されている。授業料免除のような財政援助はまず院生に回されるし、図書館の本も数多く、長い間借りていることが許される。学生寮も、学部生は相部屋しかもらえなくても、大学院生には一人部屋を用意してくれる大学が多い。
Assistantshipと授業料↑
Teaching Assistant やResearch Assistant をやると、給料をもらえる他に授業料も減免になる大学と、そうでない大学とがある。University of Illinois at Urbana-Champaign では、たとえ25% appointment(週10時間勤務相当)でもassistantをやると授業料が全額免除になった。しかも、春学期にassistantをやると翌夏の夏期講座もただで無制限に受けられた(そのかわり、Illinoisのassistantの給料は安いので有名だったが)。University of Hawaii at Manoaでは、25% appointmentでは授業料は半額だけ免除、全額免除を受けるためには50% appointment(週20時間勤務相当)で働かないといけない。翌夏の夏期講座の授業料を免除してもらうためには、秋・春の両学期にわたって働くことが必要だったし、それも授業料免除は6単位までと制限されていた。California や Michiganの州立大学では、いくらassistantをやっても授業料は免除されない。(そのかわりサラリーは高い。)
学校、学科によって異なる条件↑
財政援助がもらいやすい学科ともらいにくい学科がある。もらいやすいのはまずもって理工系である。教授がそれぞれ政府機関や企業から研究資金をもらってきて、その金で大学院生を抱え込み授業料や生活費を支給するかわり研究の手伝いをさせるのが慣例である。そのお世話にならないのは、企業からの派遣留学生ぐらいのものである。筆者がUniversity of Illinois在学中は、自分で授業料を払っている理工系の大学院生にはほとんどお目にかからなかった。
心理学科でも、似たようなシステムで教授が学生を抱える場合が多い。University of California, San Diegoの心理学科大学院のように、卒業するまで学科がその学生を財政的に支援できるという見込みがたたないかぎり入学許可を出さないところもある(教授には、どこかから研究資金を調達してくることが要求されるわけである---それができない教授は助手も雇えず、自ずと肩身も狭くなる)。同じ心理学科でも、University of California, Berkeleyの大学院は入学許可を出してから財政援助の交渉をはじめるので、初年度は自費でやりくりする学生もいるとか。
財政援助がなかなか出ない学科の代表格はLaw SchoolやBusiness Schoolであろう。特にBusiness Schoolの場合、卒業してMBAを取得すればたちまち高給で就職できるので、自費で2年間通学してもひきあうし、なまじアシスタントなどやって卒業が遅れるよりは、借金をしてでもコースを終えることに専念して一日も早く卒業した方が得策なのである。一方、金には縁のない教育学部や言語学科の学生もやはり、心理学科などにくらべると財政援助の口は少なく、それぞれ苦労していたようである。
外国人には難しい 一年目の RA/TA−−でもチャンスは ある↑
外国人学生の場合、入学した年からひもつきでないscholarshipがもらえることはほとんどないし(まず優秀な成績を納めるのが前提条件)、Research assistant やTeaching assistantの 仕事がもらえるのも例外的である(はじめから、財政援助を条件に入学した場合は別)。学業成績が良好で、 assistantをやっても成績に響かないという見込みがないと、なかなかassistantshipはもらえない。しかし、余人にかえがたい技能や経験があれば俄然有利になる。そのようなセールスポイントを効果的に売り込むのも、留学術のうちである。
米国憲法に忠誠?↑
筆者がハワイ大学でGraduate assistantの雇用契約をした時には、「米国憲法に忠誠を誓う」旨の誓約書にサインさせられた。州立大学のassistantは一応州の公務員ということになるので勤務中州の規約に従うのは当然だが、連邦憲法に忠誠とは何とも大げさである。万が一Assistantとして働いている間に日本と米国が敵対関係になったら、この誓約がどういう効力を果たすのか、気になるところであったが、とにかくfinancial aidほしさに急いでサインしてしまった。(こういう姿勢はいけませんなあ。)
なお、筆者は他の州の州立大学でもfull-time、あるいはpart-timeの勤務経験があるが、こんな誓約をさせられたのはハワイ大学が最初で最後である。Hawaiiは比較的最近の移民が多く、米本土からは遠く離れている上、かつて真珠湾攻撃を受けた土地というので、州も神経過敏になっているのかもしれない。
Assistantshipは身内を優先↑
どこの学科でも身内の学生が可愛いのは人情と見えて、アシスタントを雇う時はなるべく自学科の学生を選ぶように申し合わせているところが多い(優秀な学生は当然財政援助の多い学科に集まりやすいが、その学生の質量が学科に対する評価の重要な基準の一つであるから、できることなら自学科の学生を優先したいのである。)とは言っても、余人にないような技能や知識があれば、その壁を乗り越えることもできる。とにかく、あきらめないで応募してみるべきである。
TA制度のない私立大学↑
州立大学では大学院生に授業の一部を手伝わせる、Teaching assistantshipという制度が広く行われているが、私立大学にはこの制度がないところが多い。その分「プロの、フルタイムの先生に教えてもらえる。」という建て前なのであるが、大学院生にとってみれば、学生の間に教える経験を積むチャンスがないわけで、教育者の養成という観点からみて貴重な機会の喪失ともいえる。(それに、フルタイムの先生が常にTAよりも熱心に、上手に教えるとは限らないのが、悲しい現実である。)
日本語講座の求人状況↑
日本人がまず考える学内の仕事は、日本語講座の teaching assistantかもしれない。この求人状況は大学により、年によって大きくことなる。何倍もの競争率でなりたくてもなかなかなれない場合もあれば、全く専攻の異なる大学院生に教授が頼み込んで assistantを引き受けてもらうような学校もある。その大学独自の日本語教師養成コースを履修した学生からTAを採用する学科もある。外から見ているだけでは内情はうかがいしれないので、なるべく早く(できれば出願以前に)、日本語科の先生に連絡して状況を教えてもらった方がいい。
財政援助を希望↑
入学願書の中に、
- 「財政援助を希望しない」
- 「希望するが、もらえなくても入学したい」
- 「財政援助がもらえなければ入学しない」
の中から一つを選ばせる設問項目があれば、2番目の「財政援助を希望するが、もらえなくても入学したい」に○をつけるのが得策である場合が多い。合否判定の段階では財政援助を与えられる目途がたっていなくても、入学許可が出た後で、入学を辞退した他の学生が奨学金を返上したり大学から学科に追加の奨学金枠がおりてきて、それをもらえることがよくあるからである。入学許可がおりてから、「実は、思っていた以上に財政状態が厳しくて、このままでは経済的に苦しいんですが…」とゴネればいいわけである。どうしても無理のようなら、ぎりぎりになってから入学辞退しても遅くはない。
ところが、願書の中で正直に「財政援助がもらえなければ入学しない」の方に○をつけてしまうと、合否判定の段階で既に奨学金が出せるという確証がなければ、心ならずも不合格にせざるをえなくなってしまい、お互いにとって損な結果になりかねない。なお、このあたりの状況は学科によって異なるので、ツテがあれば内情を知っている人に相談するにこしたことはない。
最後に、もし、大学外の機関から大口奨学金をもらえることが既にわかっているなら、「財政援助を希望しない」に○をつけて、他の人にチャンスを譲ってあげてください。(それが学生同士の間の仁義というものでしょう。)
大学外でのアルバイト↑
「留学中、日本料理店で働いて学費を稼いだ」などという武勇談をちらほら聞くが、ついついアルバイトの方に身が入りすぎて結局卒業できなかったという失敗例も多い。比較的学業と両立させやすいアルバイトは、現地の日本人学校の先生だろう。秋から教えてくれる先生をその年の春には探しはじめる学校も珍しくないので、志望校から合格通知が出たら早々に連絡をとって求人のあるなしを問い合わせてみるといいだろう。
いずれにせよ、働きはじめる前に労働許可をしっかりもらうことをお忘れなく。
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