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北米留学上級技術マニュアル - 英語を書く工夫


目次



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人的リソースの活用

writing partnerは いかが

 書く力を伸ばしたい日本人と英語話者がペアになって、Writing partnershipを始めることもできる。せっかくなら、「なぜ、この英語の表現よりもこちらの方がいいのか」を理詰めで説明してくれる相手と組めれば理想的だ。(いくら訂正してもらっても、どうして自分のもとの表現がいけないのか理解できない為、同じ間違いを何度も繰り返す、ということがよくある。)そうなると、英語学や英語教育などの専攻学生が有力候補ということになろう。(相応の専門教育を受けていないネイティブの英文法知識はあやしげだから、「なぜ?」と聞いても的確な答えが返ってくるのは望み薄である。「何となくおかしい。」と言われるか、ひどいこじつけを教えられるかのどちらかになる可能性が高い。)こちらも相手の書いた日本語をみてあげるわけだが、そこまで書くことに入れ上げている日本語学習者は数から言えば少ないかもしれない。

 身近にそういう相手がいない場合、インターネットを介して遠隔の相手と組むことも可能である。双方に日本語で電子メールを処理できる設備さえあれば、すぐにもはじめられる。相手は、日本語学習者対象のメールリスト上で募集すると楽に見つかるであろう。

Native speaker's checkはあてになるか?

 大事な論文を提出する前にはnative speakerに目を通してもらいたいものであるが、このnative speakerというのが案外あてにならないことがある。大学1年生のnative speakerの学生の作文を調べてみると(地域・階層や人種を問わず)、三人称単数現在の動詞の-(e)sを抜かすなんていう間違いをしょっちゅうやっている。そういう連中に論文をみてもらっても、結果は察しがつく。もっと年齢が高くなってからでも、ある研究によれば、ある英文の言い回しが「正しい」か「間違い」かという判断を求めると、同じ個人の判断がわずか数週間の間にかわってしまうことが頻繁にあるそうである。ましてや、個人間での語感の差は、はなはだしい。したがって、native speaker checkを頼むなら、それなりに人を選ぶことが大切である。

 実際、同じくnative speaker's checkを頼んでも、おざなりの文法チェックしかしてくれない人とbrilliantな表現や言い回しを教えてくれる人とがいて、その差は甚だしい。Native speakerの中でも、「あいつはホントに英語がうまい!」ととりわけ感心させられる奴がいるものである(翻って、日本人だからといってみんな巧みな文章が書けるわけではないのと同様)。特に身銭を切ってnative speaker's checkを頼む場合(入学申し込みessayや学位論文など大事な文書の場合、それでも「引き合う」)、同じことならそういう人に協力を求めたいものである。

 かく言う筆者も、博士論文を出身校に提出するに先だっては、言語学の修士課程を終えたばかりのアメリカ人男性をproof-readerとして雇った。もちろん人選にあたっては学科長に相談したのであるが、その推薦の弁が「彼のwriting能力はexceptionalに素晴しい。なにしろ、何百ページもある修士論文の中で一箇所も文法を間違えなかっんだから。」というものであった。

アカデミックな文体

 日本語の学術論文で「でもさあ、そこんとこがさあ〜」なんて書き方は絶対しないのと同様、英語でも学術論文にはそれなりの文体というものがある。これを知らないと、たとえ文法は完璧でもなんともしまりのない論文ができあがってしまう。現に、会話はペラペラでも、こういうところでボロを出して教官からacdemic preparationのほどを疑われる人もいるようである。今のところ特効薬がないのが残念だが、折にふれて信頼のおけるネイティブから文体上の助言を仰ぐようにすべきであろう。

 因に、英語ネイティブといえども学問的な訓練を受けていないことには論文体の英語には習熟していないと思っていた方がいい。読者がteaching assistantとしてundergraduate studentsが書いたpaperを採点する機会があれば、幼稚な文体で書いてくる学生がかなりいることに気づかれるであろう。

Writing Clinic利用法

 大学のEnglish DepartmentやESL Departmentでは、作文教師志望の大学院生のトレーニングを兼ねて、無料のwriting clinicを置いていることがある。こういう所へ自分の書いた英文をもって行くとnative speakerの中でも言葉遣いのセンスに長けた学生が知恵を貸してくれ、「うまい書き方」を教えてくれる。定期的に自分の書いた英文を持ち込んでコメントをもらうようにすると、半年もすればかなりの学習効果が期待できる。(ただし、原稿をあずけておいて「〜日までに校正しておいてくれ。」というような依頼は受け付けてくれない。)

 せっかくこういうサービスがあるのなら、タームペーパーの時期にだけ駆けこむというのでなく、その他自分が書いたいろいろな英文をひんぱんに持ち込んで知恵を貸してもらうのが賢明な大学利用術というものである。手元に適当な英文がないというのなら、以前書いたタームペーパーや電子メール、奨学金の応募エッセイ、「売ります買います」広告など、とにかくclinicの規定の許す限りいろんなものをどんどん持ち込んでみよう。(一度に長いものを持ち込んで中途半端で終るより、適当な長さのものをこまめにもっていった方が、全文にわたり細部まで助言が受けられ達成感が味わえる。)

 筆者は職探しをはじめるにあたり、cover letterを持ち込んでコメントを求めたことがあるが、この時も有益なコメントがもらえてよかったと思う。もっとも、writing clinicのコンサルタントは必ずしも就職活動の専門家ではないので、後でもう一度就職指導のオフィスに最終稿を持ち込んで目を通してもらった方が安心ではある。

プロに英文を添削してもらうとこれだけ改善するという実例が載っていて参考になる。
↓↓↓↓


中年英語組―プリンストン大学のにわか教授
作者:岸本 周平
出版社/メーカー:新書
集英社
発売日:2000-12
メディア:集英社
Wiki

何はともあれ音読

 筆者がWriting Clinicを訪れた際は必ずといっていいほど、持ち込んだ英文を最初に音読させられた。(これはハワイ大学の在学中、チューターの訓練を受けた際にもよく言われたことである。)そうして声を出してみると、間違いの半分ぐらいは自分で気がついてしまうのである。長過ぎる文、リズムの悪い文なども、音読してみるとよくわかる。それなら何もクリニックを訪ねるまでもなく、英文を書いたら必ず音読する習慣をつければそれだけでかなり英語の質が向上するはずである。

ITの活用

ワープロに「音読」させる

 音読が有効であるとはいえ、実際には自分で書いた長文の論文を一々音読するのもかなりの精神力を要するものである。書き疲れでとても音読する気力がない、というなら、ワープロについている音読機能を使ってコンピューターに読ませてみてはいかがだろうか。最初は機械の出す合成音が気になるが、それでもやらないよりはよい。聞いていてすんなり頭に入ってこない文は、読んだ時もわかりにくいことが多い。

スペルチェッカーと文法チェッカー

 まともな英文ワープロなら、綴りの間違いを見つけるスペルチェッカーは勿論、Grammar Checkerなるものまでついてくる。文字どおりとれば、外国人が書いた英文の文法的な間違いをなおしてくれる画期的なシステムだが、実効のほどはどうか?

 筆者が試してみた限りでは、日本人が一番苦労する冠詞や前置詞の間違いなどはほとんど検出できないようである。逆にやたらに多く出てくるメッセージは「この文は受け身文です。能動文に書き換えてはいかがですか。」というものだが(英作文の流儀で、「受け身文はなるべく使わないように」という作法があるらしい)、科学論文を「受け身文なしで書け」といっても無理である。こういう役にたたないメッセージは、もう出てこないようにdisableしておいた方が時間が節約できる。文法チェッカーが出す中で比較的役に立つメッセージは、punctuation markersの用法に関するものである。主語と動詞の一致の誤りも見つけてくれることがある(間違った警告も多いが)。「同じ単語(たとえば"the")が2度続けて使われていますよ。」という警告も、ワープロでの編集ミスを防ぐ上で助かる。いずれにせよ、現状では、native speaker's checkの代わりになるようなものではとてもない。とはいえ、term paperや手紙を人目にさらす前に、一応チェッカーをかけておくぐらいのことはするべきだろう。

 一方、スペルチェッカーは勿論非常に有効なものである。自分がよく使う固有名詞や専門用語、略語などを追加登録しておくことで、どんどん使いやすくすることができる。(その為にも、自分のコンピューターを持っているのが有利。)

早く書くコツ

 多読・濫読ということばがあるが、実は書く練習こそ「雑に、多く」が大切なのだそうである(と、筆者の高校時代の英作文の先生が言っていた)。理論的な説明は後からつけられるとして、確かに下手でもたくさん書いているとなんとなくリズムが身につく(ような気がする)し、スピードもあがってくる。日本語を介在させずいきなり英文が浮かんでくるようになったら大進歩である。

 とはいっても、手書きで下書きしてからワープロ打ちをする習慣があるかぎり、そのスピードがなかなか上がらず、頭が「翻訳モード」から抜けられない。最初からワープロを使って下書きができるようにしたいものである。(いきなりそうするのが無理なら、最初はtopic sentenceだけ準備してコンピューターに向かい、paragraphの肉付けにあたる文はその場で作るようにするとよいだろう。こうすると自ずと論文の組み立てをしっかり考えるようになり、paragraph writingの練習にもなる。)

 とはいっても、学術的な内容で、しかも他人に見せることを前提にする文書を書くとなるとつい構えてしまい、文法やスタイルが気になってスピードどころではない、とおっしゃるかもしれない。書いている最中に英語でどう言ったらいいかわからなくなるたびに一々和英辞典をひいていたらこれまた思考の流れが中断してしまう。そこで、対応する英語の表現がわからない時はとりあえずローマ字書きしておき(例えば、"SHOOSHIKA-KEEKOO ( 少子化傾向) is an increasingy serious problem in Japan.")あとでまとめて辞書をひくようにすると、リズムを失うことなく書きつづけることができる。

考えを引き出してくれるソフトウエア

 さらに、他人の目を気にせずとにかく自分に使える範囲内の英語で(これが大切!)書いて書いて書きまくる練習には、"Eliza"というコンピューター・ソフト(フリーウエア)が役にたつ。このソフトの原理を簡単にいうと、キーボードを通じて入力された英文をオウムがえしにといなおすなどして投げ返すというもので、アルゴリズムそのものは簡単なパターン・マッチングとリスト処理の域を大きく出ない。そういうと「なあんだ、それだけか」とがっかりなさるかもしれないが、実際に使ってみると、コンピューターが「どうして?」、「もっと説明して」などと問いかけてくるのに対してまた真剣に答えようとするうちどんどん熱くなってくる。(Mac版には、コンピューターに音声で応答させる機能もある。)Web 版もいくつか公開されている。

http://www.manifestation.com/neurotoys/eliza.php3
http://www-ai.ijs.si/eliza/eliza.html

 実はこのソフト、もともとさる高名なコンピューター工学者が「非指示的」といわれるカウンセリングの流派のパロディをコンピューターでやってみようと遊び心で試作したものである。ところが当の制作者の秘書がこのソフトを相手に真剣に身の上相談を始めてすっかりのめりこんでしまい、それ以来制作者は人工知能研究に対して批判的な立場をとるに至った、といういわくつきのものである。
 そういう意味ではちょっとコワいソフトといえなくもないが、逆にそういう特性を利用して外国語学習を楽しくすることも可能なはずである。特に、入学願書のエッセイを書いておられる方は一度"Eliza"を相手に志望動機を説明してみると、「どうして?」、「わかんないや、もっと詳しく話して」などと徹底的に問いただしてくれるので、自分の考えのはっきりしない部分を洗い出す道具としても有効だろう。Elizaが次々繰り出す質問に懸命に答えているうちに、自分が何をやりたかったのかはっきりしてくるようなこともある。(なお、Elizaの日本語版も市販されているそうだが、残念ながらMacやWindowsで走るフリーウエアはまだ探し出せていない。情報をご存じの方は、御一報いただけたらありがたい。)

 もっとも、Elizaとの「会話」は、一歩間違うとハチャメチャなものになってしまう。相性がいいかどうか、一度ためしてみられるとよかろう。ご参考までに、筆者がElizaと交した交信の一部をご紹介する。(筆者但し書き:相手が機械だから気楽にやったが、人間が相手の時はこんな汚い英語を使ってはいけませんよ。)


Eliza: HELLO. MY NAME IS ELIZA. WHAT'S YOURS?
Client: Iユm Yoshinori.
Eliza: WHAT WOULD YOU LIKE TO TALK ABOUT TODAY, IユM?
Client: I said, I am Yoshinori!
Eliza: DO YOU EVER STAY AWAKE ALL NIGHT?
Client: Yes, I stayed in my office until 5am this morning.
Eliza: TAKE IT EASY.
Client: I had to finish grading mid-term exams.
Eliza: WELL, THAT'S GOOD TO HEAR.
Client: Thatユs not good to hear. I feel very tired.
Eliza: SETTLE DOWN.
Client: I also have to make final exam questions.
Eliza: DO YOU RELISH HAVING TO MAKE FINAL EXAM QUESTIONS?
Client: This is my job.
Eliza: PARDON ME?
Client: I have to do this, otherwise I will lose my job.
Eliza: SORRY, BUT I'M CONFUSED.
Client: I am hired to teach, and if I donユt, I will be fired.
Eliza: WHAT IS THAT SUPPOSED TO MEAN?
Client: My employment will be terminated.
Eliza: YOUR EMPLOYMENT WILL BE TERMINATED?
Client: Yes!
Eliza: I AM GLAD THAT YOU ARE SO SURE.
Client: Come on! I am serious!
Eliza: FINE.
Client: You idiot!
Eliza: YOU'RE NOT REALLY TALKING ABOUT ME, ARE YOU?
Client: Yes, I am!


「やっぱり人間が相手でなくちゃ」とお考えの方は電子メールのディスカッションリストやIRCも当今はやりだが、英語でやっているIRCというのはどういうわけかやたら話題が「落ちる」ものが多く、筆者は1〜2回で飽きてしまった。

お役立ち辞書・教本

Collocationを学ぶための辞書

 英単語の微妙なニュアンスの違いを知るには英和辞典よりも英々辞典の方が役にたつことが多いが、反面、英々辞典は外国人が知りたいcollocationに関する情報が不足しているのが常である。たとえば、「可能性が大きい」は、Probability is highか?largeか?bigか?こういう言葉の慣用的な組み合わせを収めた新機軸の辞書がCoBuild Dictionaryである。コンピューターを駆使して膨大なテキスト分析を行った成果というだけあって、随所に斬新なアイデアが盛り込まれている。



Collins Cobuild Learner's Dictionary (Collins Cobuild)
作者:Collins Cobuild
出版社/メーカー:ペーパーバック
Heinle
発売日:2005-01
メディア:Heinle
Wiki

 なお、筆者の経験からいって、書くために調べた単語や表現は確実に頭に残る。(反面、読んでいる最中に調べた単語は、かたっぱしから忘れる。)そのためにも、手元にいい辞書を揃えておくべきだろう。「書く」ことを念頭におきながら他人の書いたものを読むと、使えそうな表現などが自然に目にとまるようになり、吸収の度合も高まるようである。

ライティングのお説教本

「こんな時はこういう」という対症療法ではなく「こうも言えるはずなのになぜその表現を使わず別の表現をするのか?」という理由にさかのぼってじっくり説明してくれる稀有な本。著者Mark Petersen氏の日本語表現の素晴らしさにも脱帽である。それでもって「きわめて不自然な日本語」とイヤミな謙遜までするのだから、ヤなやつだね。



日本人の英語
作者:マーク ピーターセン
出版社/メーカー:新書
発売日:1988-04
メディア:岩波書店
Wiki



続・日本人の英語
作者:マーク ピーターセン
出版社/メーカー:新書
発売日:1990-09
メディア:岩波書店
Wiki

パラグラフ・ライティングを学ぶ

入学準備勉強法」より「論文作法:paragraph writing」を参照。



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