北米留学上級技術マニュアル - 応募書類準備の実際
目次
- 願書
- 出願料
- 英文成績証明書
- 英文預金残高証明書
- 英文住民票
- Essay
- 自分を売り込む
- プロモーターになったつもりで
- 事実を効果的に表現
- 口説き文句の二つの基本
- 英語で謙遜する(ふりをする)法
- 志願者審査のポイント
- 大学院も「一芸入試」?
- 志望校研究をアピール
- Paragraph writingに従う
- 論文書式
- 隙のない論旨展開を
- 長いEssayを先に書く
- 推薦状
- 推薦人(referee)を選ぶ
- できるだけの準備をしてから
- サインは万年筆で
- 基本構成は「評価→実例」
- ほめことばの英語
- 誤解の芽を摘む
- Essayと推薦状でワン・ツー・パンチ
- 推薦状の投函は願書の後で
- "See the attached sheet."
- 封筒
- 英文履歴書
- テスト成績通知依頼
- 細かいところに気を配る
- 出願書類のコピーをとっておく
- 発送の心得
ここでは、応募書類の作成方法を基礎から解説する。Keith-Spiegelの "The Complete Guide to Graduate Admission"には、さらに詳しい情報が満載されている。
願書↑
必ずタイプすることにしよう。手書きの願書は、著しく印象が悪い。あまりタイプに慣れていない人なら、まず応募用紙のコピーをとってそこに手書きで下書きし、そのあとで実物にタイプするのが手間はかかっても安全である。大学によっては、おそろしく狭いスペースにやたらに多くの情報を書かせるところがあるので、そういう大学にはフォントも小さ目のものにしたほうがよかろう。
なお、多くの大学では、外国人(International student)用の応募用紙は自国民用のものとは異なる。正しい応募用紙を入手したか、確認をお忘れなく。
出願料↑
あたりまえのことだが、出願料は現地の通貨建てで送金しなければならない。銀行の外国為替窓口で送金小切手をつくるとかなりの手数料をとられるが、これはやむをえない出費とあきらめるしかない。出願料以外にも、留学試験の結果報告依頼や入学前払金などで、送金の必要な場合があれこれある。もし、アメリカやカナダの銀行にドルだての為替口座をもっているなら、その口座から小切手を振り出すことで、経費は大幅に節約できる。いずれにせよ、今後は日本でも金融・為替の規制緩和によって便利な送金方法がどんどん出てくると思うので、専門家に相談してみられたい。
英文成績証明書↑
出身校から、英文の成績証明書を出してもらうように要求する大学が多い。こういう英文書類を常備していない学校も多いので、早めに母校の教務の方に準備をお願いしておくべきであろう。日本の大学の教務にとっては、科目の英語タイトルを調べるなど、結構手間がかかるものなのである。(いったんオリジナルを作ってしまえば、2度目からはそのコピーを使えるので、手間は大幅に節減される。)
なお、「成績証明書は、出身校から直接郵送するように」と指示してくる大学もある。「そこまではできません。」と教務に断わられた場合、学科の封筒をいただいて志望校宛先をタイプし、切手も貼った上で教務の方にお渡しして、「どうぞ、これに証明書をいれて投函してください。」とお願いするしかない。
クイズを一問。↑
「ある大学の心理学科が、大学院志願者が提出する書類に見られる様々なデータと、入学後の博士号取得率との関連を調べました。次の指標の中で、相関が一番高かったのはどれでしょうか?」
(1)学部生時代の平均成績
(2)出身大学の「格」/知名度
(3)入学前の、サークル活動などでの活躍
(4)GREのQuantitativeの得点
(5)GREのVerbalの得点
(6)GREのAnalyticalの得点
(7)入学Essayの質
(8)推薦状の質
(9)推薦人の知名度
正解は(1)なのだそうである。つまり、学部時代の成績がよかった学生ほど、大学院入学後も中退したりせず確実に課程を終えて博士号を取得している(大学院進学にあたって専攻分野を大きく変針した場合ですら、やはり学部生時代の成績と大学院での学業成就には高い相関がある)。
考えようによっては実に意外な結果であるが、また考えようによってはあたりまえともいえよう。学部時代の成績は芳ばしくなくても、潜在的に高い能力をもった志願者ももちろんいるのであるが、そういう学生を入学させると、他のことに興味が移って簡単に大学院をやめてしまったりすることも往々にしてあるのだそうである。長丁場の大学院は、単に頭がいいだけではなかなか乗り切れない。一方、勉強癖がついていて好成績をあげるツボを心得ている人間は、例え天才的な能力はなくても、地道な努力を重ねて何とか卒業まではこぎつける、ということであろうか。
入学許可を与えるにあたって学科側が一番心配するのは、何らかの理由で学位を終えないままで大学を去ってしまうのではないか、ということである(卒業生が医師試験に受からない医学部が批判されるように、博士を生まない博士課程にも風あたりが強い)。したがって、学部生時代の成績はいまひとつだが才能がありそうな学生から願書を受け取った時、審査委員は採否をめぐって頭を痛めることになる。もし不幸にして読者の学部生時代の成績がいまひとつなら、そういう不安を払拭するような内容をessayや推薦状に盛り込むよう、意を払う必要があろう。
英文預金残高証明書↑
フルブライト奨学金などのスポンサーつきでない限り、一年間の留学費用(授業料+生活費)相当額程度の預金残高証明書提出を出願時に求められる。
都市銀行なら英文の預金残高証明書ぐらいはいやな顔をしないで出してくれるが、郵便局は融通がきかない。筆者の場合(もう20年以上前の話だが)、窓口で交渉しても埒があかず、ついに郵便貯金を全額解約してその足で向かった近くの銀行に新規口座を開設し、からくも残高証明書を手にいれた記憶がある。最近では、郵便局はもう少し柔軟になっているでしょうか?
なお、都市銀行でも、一遍に何通も残高証明書を請求すると理由を聞かれることがあるので、留学計画を示すような書類を持って行った方がいいだろう。
いずれにせよ、出願の時期にはまとまった残高があるようお金の動かし方を計画しておこう。留学に先立ち預金をおろして株や先物市場で一儲けしようとお考えなら、残高証明書が必要になる時期までには元金が戻ってくるよう時期を選ぶことが肝要である。
英文住民票↑
筆者がUniversity of Hawaii at Manoaに出願準備をしていた1983年当時、同校は応募者に英文住民票の提出を義務づけていた。筆者の経験では後にも先にも、出願時に英文住民票の提出を要求した大学はUniversity of Hawaiiだけであるので、この要求自体がかなり異例ともいえる(日本の役所に英語で書類を作らせろ、という要求自体がおかしいといえばおかしい)。
ともあれ、何とか書類を手にいれないことには応募もできない。ところが筆者の郷里・京都市の戸籍担当者は「そんな書類はここでは作れない。」の一点張りで、泣かされた記憶がある。8月の炎天下、市内の支所、本庁の間をタライ回しにされた。この時は結局市役所の本庁に出向き、そこで住民票の公式な翻訳を作ってもらって一件落着した。
この件に限らず、役所の人がよく言うせりふは「それは、〜課の担当だからそちらに行ってください。」である。同じ建物の中ならまだしも、遠く離れた別庁舎に行ったあげくそこでも処理できないことがわかったらたまらない。タライ回しを避けるためには、そう言った本人に電話をしてもらい、確かに〜課に行けば処理してくれることを確認してもらうことである。(自分から親切に調べてくれる人はヒジョーに少ない。)確認の電話をすることを渋るようなら、
「〜課に行って、できないことがわかったら、責任を取っていただけますか?」
というセリフでとどめをさす。(概してお役人というのは、「責任」という単語には異常に敏感である。)もう一段迫力を増したいなら、
「お名前を教えてください。」
「この支所の責任者はどなたですか。」
と聞いてみよう。答えをメモするふりをする(あるいは、本当にメモする)ことをお忘れなく。これでもまだこたえないようだったら、
「今『できない。』とおっしゃいましたね。それでは、そのことを紙に書いて日付けを明記した上で捺印してください。」
というのが最後の奥の手である。そこまで証拠を残してしまったら、将来どんなお咎めがくるかわからないから、余程自信がない限り、お役人はこのあたりで多かれ少なかれ折れてくる。もし紙に書くことを渋るようだったら、
「後に証拠を残すと困るようなことを言ったのか。」
と逆襲できるわけである。
最後に、きちんと対応してくれた担当者には、立ち去る前に礼儀正しく御礼を言おう。
Essay↑
応募にあたって、応募動機や将来計画に関するessayを書かせる大学がある。大学院では、ほとんど常識といえよう。自分のことばで自分を売り込む最大のチャンスであるから、この機会を充分に活用されたい。以下に紹介するのは、いわば基礎編である。さらに高度なEssay writingの奥儀を究めたい方には、Asherの"Graduate Admission Essays"をお勧めする。
自分を売り込む↑
Mary "I am beautiful and I am bright and I deserve better."(Woody Allen 監督作品映画 Manhattan より)
効果的に自分を売り込む技術も、重要な社会的技能とみなされる。北米社会、特にアメリカの東北部(New England)の大都市(中でもNew York市)や南Californiaでは、「謙譲の美徳」は通用しないと考えておいた方がよかろう。(南部に行くと多少事情は異なり、いささか東洋と共通する行動パターンも見受けられる。)
といっても、いくらアメリカでも、やはりあまり露骨な売り込みは嫌味だと思われる。このあたりの匙加減も外国人には難しい。欧米文化に同化しようと努めているアジア人が、時として「やりすぎ」になり、アメリカ人からさえ眉をひそめられる、というケースもある。
プロモーターになったつもりで↑
自分を積極的に売り込む、というのは概して日本人が苦手にするところだが、照れてばかりいては仕方がない。自分を一人の「タレント」に見立て、そのプロモーターになったつもりで売り込み策を考えてみよう。一人でやっていると、自分のセールス・ポイントが見えにくいから、自分のことをよく知っている友人数人に頼んでブレーンストーミングをやってもらうのもよかろう。
事実を効果的に表現↑
あたりまえのことだが、事実に反することを応募書類に書いてはならない。これは重大な信義則違反になる。しかし、同じく「本当のこと」でも、表現の仕方によって印象は大きく違ってくる。
口説き文句の二つの基本↑
(1)「私はあなたが必要だ」
「自分はこれまでこんなことに興味をもってこんな勉強をしてきた。将来、こんな職業につきたい。そのために〜のトレーニングをうける必要がある。そのためには、貴校で勉強するのが一番だ。」など、過去の経験および将来計画と応募動機の関連をしっかり述べる。
(2)「私があなたに必要だ」
最低限、立派に卒業して将来社会で活躍してくれそうな人物を大学が好ましく思うことは言うまでもない。さらに研究に力を入れている学科の場合、特にどの教授の研究チームに所属するかが入学許可の際に決められるような学科では、あなた自身がどの程度研究チームの中で貢献できるかをアピールしないといけない。語学、コンピューターなどの技術、実地経験など、上手に売り込む必要がある。また、応募先が今何に力をいれており、どんな人間を必要としているかを見極める必要がある。
たとえMBAコースのように、学生を研究パートナーとしては重視していない場合でも、学科の重点分野に造詣が深いとなればやはり有利である。たとえば最近流通業でのコンピューター・ネットワーク活用を研究している教官が多いなら、そのあたりの知識経験を売り込むなど、やはり学校研究が大事なのである。
英語で謙遜する(ふりをする)法↑
仮に貴方が学会賞を受賞するなど赫々たる経歴・実績の持ち主ならそのことを出願書類に書くのに遠慮はいらない。とはいえ、あまり自慢たらしく書くと北米圏でもやはり嫌味な印象を与えることがある。
こういう時は文章表現を工夫しよう。たとえばstatement of purpose essayには
I was awarded...
のかわりに
I was lucky enough to be awarded...
と書けば、「受賞したのはたまたま運がよかったからです」と謙遜している(あるいは、謙遜しようと努力している)かのように響く。このように、実は一番強調したいことながらストレートに書くと反感をかう恐れのある内容は従属節の中に入れるなどして、一見さりげなく表現するのも英文作法の一つである。
もちろん、受賞に関する詳細は履歴書にしっかり記載しておく。
志願者審査のポイント↑
Delamont, Atkinson & Parrty "Supervising PhD"は、博士課程の志願者を選抜するポイントとして次の6つの特性を挙げている。
- skill and abilities
- highly motivated
- work independently
- intellectual creativity
- to be able to write
- critical of previous work
著者らはイギリスの大学の教授だが、アメリカの大学院でも求めるものは大同小異であろう。したがって、志願者は応募書類を準備するにあたって、これらを立証するべく努めなければならない。
大学院も「一芸入試」?↑
「官約移民百年」を記念して宝塚歌劇団花組がハワイ公演に訪れた1985年の夏、とある伝手があって知り合いになった劇団のマネージャーさんからハワイ滞在中の筆者が聞いた話。宝塚音楽学校では入学応募者の採否を決めるにあたってまず、 歌でも踊りでも芝居でもいいから「少なくとも何か一つできる」ことを重視するのだそうである。一つキラリと光るものがあれば、あとはそれを核にしながら芸域を広げ ていくことができる。ところがそういう軸になるものが何もないと、伸ばしてやりようがない。(本題と全く関係ないことだが、宝塚の入学審査にあたり顔の造りは世間が思っているほど重要な要素ではないとのこと。実際、宝塚風のお化粧をすると原形をとどめないほど違った容貌になることは筆者も舞台裏で現認している。)
さらに要求が厳しい学科では、博士課程入学の時点で既にレフェリーつきの学術雑誌 に自著論文を掲載していることを求めることもある(例えばハワイ大学の第二言語習得研究課程)。博士課程を終了して就職を探す時点でまだ出版業績がない候補も珍しくな いことを考えるとこれは非常に高いハードルであるが、「うちは最高レベルの研究者を育てるためのエリート教育をする から要求が厳しい。それができない奴は来るな。」というのは同学科(当時)のマイケル=ロング教授から読者への伝言である。
志望校研究をアピール↑
審査にあたる教官としては、同じことならカリキュラムや教授陣を充分に研究した上で自校に惚れ込んで「ぜひ入学したい」と言ってくる学生を採ってやりたいのが人情である。志望校研究の成果をさりげなく願書に盛り込むべきことは、言うまでもない。
「貴校には〜という特徴があり、それは自分の研究興味や将来計画にぴったりだから、是非入学したい。」
と書くわけである。具体的な研究方法としては、学科に直接資料を申し込む他、各大学のホームページからも情報が入手できる。さらに、特定の先生の研究に興味があるなら、直接手紙を書いて最近の論文を送ってもらうのも手である。論文のタイトルだけでもわかれば、図書館でコピーできるかもしれない。在学生や卒業生に個人的にコンタクトできれば、生の情報が手に入る。
Paragraph writingに従う↑
入学願書のStatement of Purpose Essayはparagraph writingにしっかり則って書かれたい。これができているかどうかで、審査教官は志願者のgeneric academic preparationの程を判断してしまうからである。Native speaker's checkを頼む時も、ただ文法の間違いをチェックするだけでなく、こういう構成そのものについて助言をしてくれる相手を選ぶことが肝要である。業者に依頼する場合、チェックをするのがそういう点での教育を受けた人間かどうか、確認されたい。
論文書式↑
もしエッセイの中で文献を引用したり図表を挿入する際にそれが自分の専攻分野で使われる論文書式(APA styleやMLA styleなど)をきちんと守っていると、「おぬし、できるな!」(トーシロさんではないな)と思わせることができる。ただし、そういう小細工ができるのはかなり長文の小論文の場合に限られるだろう。
隙のない論旨展開を↑
筆者は仕事柄、何人もの方から応募essayにコメントを求められたことがあるが、英文essayを書き慣れていない日本人に共通して言えるのは、論述に隙が多いということである。「隙」というのは「飛躍」といいかえてもいい。例えば、
「(1)私は(今は会社員をしていますが、)英語がすきです。
(2)だから貴校の大学院で英語教育学を専攻したい。」
と書くだけでは相手を納得させられる志望動機の説明にならない。(1)と(2)の間のギャップが大きすぎるからである。
- 「英語教育に興味があるのに、どうして日本で英語の先生にならなかったの?」
- 「どうして、今の会社をやめたいの?」
- 「今の職場で、英語を使う仕事はできないの?」
- 「英語を使える仕事がないなら、どうしてそんな職場に就職したの?」
- 「英語がすきなら、どうして英文学を専攻しないの?」
- 「どうしてイギリスでなく北米の大学に進みたいの?」
- 「どうして他校でなく、うちの大学に来たいの?」
- 「北米で英語教育学の修士をとって、将来どんな仕事に就きたいの?」
など、たちまち様々な疑問が湧いてくる。入学願書を審査する方はプロであるから、こういう隙はたちどころに見抜かれてしまう。
したがって、筆者が留学に関してご相談を受けた際は、まずessayの草稿を拝見したあと、それを肴にして、こういう意地の悪い質問を次々にさせていただくことにしている。さぞかし底意地の悪いやつと諸方で恨みをかっていることと思うが、そこでくじけずに論陣をたてなおしてこられた方は、初稿とは見違えるような立派なessayを仕上げておられるのも事実である。(かと言って、完全無欠なロジックなどというものが現実社会に存在するわけではもちろんない。どんな論理にも自明のこととされている前提(「公理」)があり、その公理自体は証明のしようがないわけであるが、そこからの推移のステップが、概して欧米流のessayに不慣れな日本人の書いたものは特に粗い、ということはいえる。「日本人は論理に弱い」などとは安易に言いたくないが、英語圏のインテリの間で通用しているような論述形式に日本人の多くが不慣れである、ということは否定できない。)
質問をしているうちに「そんなことまで、わざわざ書かなくたってわかるでしょ。」という反問をしばしば受けるが、これが重大な落し穴である。書いている方にとってはあたりまえのことであっても、読み手には想像がつかないこともある。たとえ大体の見当はついても、大事なことはしっかり本人の口から言ってほしい、というのがアカデミックの世界の綴り方作法というものである。多民族、多文化社会の北米では特に「言わなくったってわかるでしょ。」が通用しない傾向が強い。(とはいえ、とてつもない大先生になれば、途中の論証をすっとばして結論だけ書いても、それで通用してしまう。「わからないのは読む方の頭が悪いから」ということにされてしまう。残念ながら、入学志願者は相手に「選ばれる」弱い立場であるから、こういう手は利かない。)
と、ここまで読んで、「な〜んだ、それじゃ就職面接と同じじゃないか。」と思われた読者がおられると思う。ご明察の通り、「どうしてわが社に入社したいのですか。」という質問と、「どうして我が学科に入学したいのですか。」という設問とは重なる部分が多い。入社試験でも、応募動機が曖昧だと思われると、
「どうして(金融やメーカーでなく)うちのような商社に就職したいのですか。」とか、
「どうして専門商社でなく総合商社に入りたいのですか」、
「どうして(業界上位の住友商事や三井物産でなく)わが社に来たいのですか。」
とか突っ込まれて、準備不足の応募者はぼろぼろになってしまう。こういう質問に対しては付け焼き刃は利かず、自分の将来目標に照らした就職戦略を徹底的に練るしかない。この点、質問に即座に返答しなければならない口頭面接にくらべれば、時間をかけて存分に文案を練ることのできるessayの方が、相手を自分のペースにひきこむのが容易だといえよう。
この論理構築についてさらに詳しく知りたい方は、津田久資・下川美奈『ロジカル面接術』を研究なさるようお薦めしておく。
長いEssayを先に書く↑
大学によってEssayの長さの制限語数が違う。なかには、長さに制限をもうけない大学もある。あなたの志望校3校のEssayの語数制限がそれぞれ700語、500語、300語だったとしたら、まず一番長い700語のEssayを先に書くべきである。そのあと、それを短く削って500語や300語以内にまとめれば、他の2校へのessayも自然にできあがる。(逆に先に短いessayを書き上げてからそれを膨らませようとすると、どうしても内容が薄くなりがちである。)
推薦状↑
推薦状を書くのは、頼まれる方にとっては億劫なものである。外国語で書かないといけないとなると、なおさら。日本では欧米式の推薦状の書き方が広く知れ渡っていないこともあり、書いてもらう人にはまず推薦状の機能を知ってもらわねばならない。この項はこのままコピーして、推薦人にお渡しいただいてもいいように書いたつもりである。
推薦人(referee)を選ぶ↑
現役の大学生なら、推薦状は全部大学の先生に頼む場合が多いが、他に色々な経験があるなら、その人脈を生かすことも考えてみられたい。ビジネスマンがMBA留学するなら、仕事ぶりに関する上司の推薦状は必須。スポーツ・コーチ学を学ぶなら、クラブの部長または監督の推薦をもらっておきたい。「そんなにあちこちで頼むと、3通では収まらなくなる。」というなら、追加の推薦状を提出してもさしつかえない。「推薦状3通」を要求している大学に5通ぐらい送るのは許容範囲内であろう。
「恩師の共同研究者である〜教授の下へ留学したい」、というのであれば、何をおいても師匠の強い推薦状をもらわねばならないことは、言うまでもない。
できるだけの準備をしてから↑
わざわざ推薦状を書いてもらうなら、できるだけの下準備をしてからにすべきだ。推薦状用紙の中で応募者が記入できる部分は自分でタイプしてから推薦人におわたしすべきであろう。
また、推薦状用紙には、「この推薦状を後で見る権利を放棄しますか。」という質問項目が設けられている。放棄しなければ後日、どんな推薦状を書かれたか、ファイルを開けて見せてもらうことができるわけだが、逆に推薦状があとで被推薦人に読まれることを前提に書かれたとなると、「推薦人は本音を書いていないかもしれない。」と志望校側に思われてインパクトが弱くなる。また、「いいことを書いてもらえないかもしれない。」という応募者の自信の欠如のあらわれとも受け取られかねない。ここは当然、「放棄します」の方を選ぶべきである。(その場合でも、推薦人が自発的に「こんな推薦状を書いたよ。」と被推薦人に教えることは一向にさしつかえない。現に、筆者もある先生に推薦状をお願いした際は、後日そのコピーを送っていただいたことがある。)
サインは万年筆で↑
推薦人が万年筆をお持ちなら、それを使ってサインしていただくようにお願いしておかれたい。北米社会はボールペン全盛で万年筆を持っている人自体が少ないので、逆に万年筆でサインをする人はそれなりの地位と権威のある人だとみなしてもらえる。「えらい人」から推薦状をもらったと思われて損はしない。
もちろん、サインの筆記具がボールペンか万年筆かだけで合否が左右されるなどと主張しているわけではない。第一、推薦状を読む方もサインのインクなんか気にも止めないかもしれない。しかし、こういう細かいポイントが意識下で積み重なって、微妙に印象に差を与えるということは往々にしてあるものである。何よりも姿勢の問題として、些細な点も含めできる限りの配慮を払っておくにこしたことはない。「もし目の前にボールペンと万年筆が両方あるなら、万年筆でサインしてもらう」というぐらいにおとらえいただきたい。
基本構成は「評価→実例」↑
米人の審査教官の目から見ると、日本人が書いた推薦状の大半はほとんど判定の参考にならないのだという。なぜなら、記述があまりにも抽象的で、その人物の特性がつかめないから。「〜氏はとても優秀です。」だけでは駄目で、どんな点で優秀なのか、実例(たとえば、卒業論文のデータ分析で高度な技法を使ったとか、ゼミの討議での立論がしっかりしていたとか、3年生の時からサーバー管理をやっていたとか)がないと、他の応募者と比較することもできない(誰の推薦状を見ても、必ず「優秀だ」と書いてあるもんね。)推薦状の基本は、評価(「几帳面だ」、「頭がいい」、「〜に詳しい」など)を必ず具体例で例証することである。乱暴な言い方をすれば、推薦状の基本構成単位は、形容詞(評価)と動詞(実例)のペアである、と表現できよう。
ほめことばの英語↑
日本語なら同じく「頭がいい」でも、bright, brilliant, smart, intelligent, clever, wise...と、それぞれニュアンスが違う。「勤勉」も、diligent, hard-working, industrious など、やはり微妙な違いがある。推薦状にあげられた具体例と評価のことばがぴったりマッチしないと、効果が半減してしまう。これらの類義語を知るためにはthesaurus、そしてそれぞれのニュアンスの違いを調べるためには、英々辞典や大型の英和辞典が役にたつ。わざわざ辞書を引くのが面倒くさい人には、WWWでも検索可能である。
こんなサイトもあります。
Resumes: Top 300 Action Verbs
http://www.imahal.com/careers/management/resumes/resumes_verbs.htm
誤解の芽を摘む↑
例えば推薦状の中で「彼/彼女は弁が立って、常にゼミの議論をリードしていた。」と書いたとする。これを読んだ審査教官は、「ひょっとすると、相手構わず議論をふっかけて辟易させてしまう屁理屈屋なのではないか?」という危惧の念を持つかもしれない。(欧米圏でもやはり、時と場合をわきまえないで議論をふっかける人間はあまり好まれない。)この例に限らず、同じ行為や特性が、ポジティブにもネガティブにも表わせることは頻繁にある。
したがって、推薦状を書く側としては、こういう悪い印象を残さないようにするためには、例えば「同時に彼/彼女は、相手の意見に耳を傾けた上で判断をくだす、慎重な人物でもある。」と書いてあげるのが親切というものである。もちろん自分の知らないことは書けないから、応募者について色々な側面から観察してから書いた推薦状ほど、説得力のあるものとなる。
Essayと推薦状でワン・ツー・パンチ↑
願書の売り込み文句を裏付ける証言が推薦状の中にあらわれていれば、効果は倍増する。たとえば、essayに「PC上でのデータベースの開発が得意だ。」と書いてあり、上司の推薦状に「Accessを使ってこんな高度なシステムをつくってくれた。」とあれば相手の印象にも残りやすいだろう。このように推薦状を含めた応募書類全体を整合性のとれた効果的なものにするためにも、推薦状をお願いする相手には、履歴書、願書、essay等をふくめた送付書類一式のコピーを渡しておくことをお勧めする。(逆に言えば、正式に推薦状をお願いする段階では、他の書類はすでにできあがっていなければならないのである。)さらに徹底するなら、たとえば自分の大学時代の恩師に推薦状を頼む場合、その先生の授業で書いたレポートなども揃えて持っていくと、書く方としてはネタがそろって仕事が楽になる。
推薦状の投函は願書の後で↑
多くの学科の事務局では、願書が到着した時点でその志願者に関するファイルを作るのが慣例である。もしそれ以前に推薦状が届いてしまうと、入れるべきファイルがないので書類の「定住所」が定まらない。紛失など、事故の起こるもとである。こういう危険を避けるためには、願書を投函して少なくとも数日たってから推薦状を発送してもらうように、打ち合わせをなさっておかれるとよかろう。
"See the attached sheet."↑
規定の用紙に推薦文をタイプするのが億劫だ、というのなら、用紙には推薦人の名前などの必要事項を記入しサインをした上で真ん中に
"Please see the attached sheet."(「別紙参照」)
と書き、実際の推薦文は別の紙に印刷することも可能である。こうすればマージンなどに気を使わずに使い慣れたワープロでそのまま打ち出せるし、書き損じてもまた印刷すればいいだけだから、書く側の労力が軽減される。
封筒↑
推薦状は、それぞれの推薦人の勤務先の公用封筒に入れて送ってもらうのが正式なやりかただが、場合によってはそれが簡単に入手できない場合もある。そういう時は志願者が市販の封筒を用意し宛先をタイプした上で推薦人にお渡し、推薦状を同封して投函していただくようにお願いするしかない。その場合、応募先の大学側からあらぬ疑いをかけられぬよう、各推薦人に渡す封筒やそれに貼る切手はそれぞれ種類の違うものを使うなどの点にも気を配られたい。(自分の名義で出す願書などを入れる封筒は、宛名を手書きしてもさしてマイナスにはならないが、推薦人名義で出していただく封筒だけはタイプしないと推薦人に対して失礼である。)
英文履歴書↑
英語のresume(1〜2ページのもの)、curriculum vita (長いもの)は、日本でいう履歴書とは随分趣きを異にする。日本の文房具店で売っているような定型の履歴書用紙というものが欧米にはないので、各自自分が効果的と思ったレイアウト、構成で書くことになる。様式が一定していないのは読む方には不便だと思われるかもしれないが、逆にどういう書き方をしているかで、応募者が何をアピールしたいのかを読みとくカギにもなるといえるだろう。
英文履歴書の構成↑
Resume(履歴書)の書き方の詳細は専門の文献を見ていただく必要があるが、とりあえず:
- 自分が強調したいことを前半(あるいは、各ページの上の方)の目立つ位置に書く。
- 入学志願の場合、学歴、職歴、研究/職務業績、その他の情報(特殊技能、賞罰など)の順で書くのが普通。
- Counter-chronological order、 すなわち新しいことからはじめて古いことへさかのぼる(例:大学院→大学の順)。
の三つの大原則を頭にいれておかれたい。
出願の際に詳しい履歴書をつくっておくと、あとでいろいろなアルバイトなどに応募する際にも再利用できる。
テスト成績通知依頼↑
留学試験の正式な結果を実施機関から志望校に送ってもらうように手続きをしないと、せっかくとった得点が認められない。これにも、手数料が必要である。受験の際に結果の送付を依頼していたなら、あらためて依頼を出す必要はない。
テストの成績報告書のコピーを同封↑
TOEFL、GREなどの得点報告書のコピーを願書に同封しておくと、万が一実施機関のETSから大学への正式報告が遅れた場合でも、猶予をくれる場合がある。時間的にあまり余裕がない場合、この手も検討してみられたい。
ただしその場合、正式な報告は後日テスト機関から直接大学宛に郵送される旨を書き添えておいた方がいい。さもないと、(正式な成績送付依頼を実施機関あてに出していないのだろう)と早合点される恐れもある。得点報告書のコピーの上に目立つ色で、"An official report is being sent to you from ETS."とか書いておけば、間違えられる可能性は低かろう。
細かいところに気を配る↑
- フォントは11ポイント以上、
- 改行したらあたらしいパラグラフの最初は数字分字下げをする、
- 封筒には Air Mail と明記、
など、細かいところにも気を配ろう。できれば、留学経験のある人に目を通してもらうとウッカリミスがかなり防げる。
万が一、応募書類の内容で揉めた時のため、必ず提出書類のコピーをとって手元に残しておこう。どの書類を何月何日の何時にどの郵便局から投函したかも、すべて記録を残しておくことをお勧めする。
出願書類のコピーをとっておく↑
後日のために、提出書類は全てコピーをとって手元に残しておこう。入学が決まって渡航する際も、その書類の控えは持参したほうがいい。現地について、入学手続きが完了するまで油断は禁物である。とっくに受け取っているはずの書類を自分が紛失しておきながら、「お前まだ書類が揃ってないぞ。」なんてひらきなおるオソロシいオバサン職員に、筆者もえらい目にあわされたことがある。(はっきり言って、イリノイ大学の事務職員の質は玉石混交なのである。)その時はたまたま別の職員が、提出済みの書類をファイルの中から見つけてくれたのでことなきを得たが、それがなければ面倒なことになっていた。
発送の心得↑
願書は大型封筒で↑
志願者が自ら発送する願書等の書類は折らずに大型封筒で送った方がいい。非定形郵便物になってしまうので少し余分に郵送料がかかるが、紛失される危険が少なくなるし、コピーをとる際なども、折り目が入っていない方が作業がスムーズに済むからである。(出願書類はコピーをとった上で選考委員に配布される。事務職員のミスやコピー機の不具合で大事な書類が複写洩れのまま審査を受けることになったら、損害を被るのは志願者の方である。)
書き留め郵便で↑
「出した」「つかなかった」の押し問答になるのを防ぐため、願書は書き留め郵便で送ろう。 書き留めは通常の航空便にくらべて到着まで3〜4日余分にかかるが、特に郵便事情の悪い地区では(首都ワシントン市近辺は特にひどいらしい)、こういう転ばぬ先の杖が肝要である。
内容物を明記↑
書類の処理を迅速にやってもらうため、封筒の表に赤字で
Application documents enclosed
と明記しておこう。そうすれば入学事務担当者の手元に迅速に届けられる。
自宅住所を英語で書くとどうなるか↑
「〜丁目〜番地〜アパート〜棟〜号室」をどう英語で書くか、考えると頭が痛くなってくる。「大字」「小字」なんてどう訳したらいいんだろうか?大きな郵便局には簡単な冊子がおいてあるが、それでも埒があかない場合、中央郵便局で教えてもらうのが一番である。いったん使い始めた表記を途中でかえては余計に混乱するので、最初にしっかり正しい書式を調べておかれたい。
宛名書きはボールペンで↑
ペンで封筒に宛名書きすると、雨でにじんで配達困難になることがある。ボールペン書きが安全だ。(もちろん、タイプしてもいい)。
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