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北米留学上級技術マニュアル - いよいよ現地に着いた


目次



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人脈作りと情報収集の第一歩

教授とアポイント

 宿についたら、さっそく学科のオフィスに電話して無事到着したことを知らせ、学科長(またはadviser)と会うアポイントを取ろう。飛び込みで先生を訪ねて長々と話し込むのは、ルール違反である。

 なお、初対面の時は相手も新しい学生がどんな人間か知りたがっているから、簡単なresumeを持参してその場で渡してもいい。そういう資料が手元にあると、教官もあれこれ質問がしやすいし、適切なアドバイスも与えやすいものである。(必要な情報は入学願書の中に入っているはずだが、必ずしもそのコピーが教官の手元に回ってきているとは限らない。)

先生に聞くこと

  • 「昨日ついたばかりで、まだ街のようすも大学のこともわからない。最初に何をしたらいいだろうか。」
  • 「まだアパートを決めていないので、これから探さないといけない。何かアドバイスをもらえないだろうか。」
  • 「銀行に預金口座を開きたいが、どの銀行がいいか。」
  • 「財政援助を求めている。情報源があったら教えてほしい。」
  • 「学期がはじまるまでに是非やっておくべきことはあるか。」
  • 「自分は特に〜の分野に興味がある。どの先生に話をしたらいいだろうか。」
  • 「最初の学期にどのコースを取るべきだろうか。」
  • 「来々学期の時間割はもう決まっているか。見せてもらえないか。」
  • 「先輩にあって話をしたい。特に、日本人の先輩にアドバイスを求めたいが、誰か紹介してもらえないだろうか。」
  • 「入学手続きのことは、誰に相談したらいいだろうか。」
  • 「コンピューターのラボはあるか。」
  • 「コンピューターを買いたいと思っている。マックとPCのどちらがいいだろうか。機種について、何かアドバイスはあるか。どんなソフト(特にワープロ)が学科内で広く使われているか。中古品の情報はどこへ行けば手に入るか。」

先輩に聞くこと

 上に述べたような情報について先輩からも意見を求めるほか、先生には聞けないような裏話も先輩になら聞きやすいものである。たとえば、

  • 「現学科長の任期と評判」
  • 「学問的に業績をあげている先生」
  • 「研究が停滞している先生」
  • 「Tenureの審査が近い先生」
  • 「そのうち、Tenureが取れそうな先生と危ない先生、その理由」
  • 「授業の評判のいい先生と悪い先生、その理由」
  • 「Adviserとして評判のいい先生と悪い先生、その理由」
  • 「学科内で発言力のある先生、その理由」
  • 「Secretaryは親切か」
  • 「お互い同士仲の悪い先生、その理由」
  • 「楽勝コースはどれか」
  • 「中古品を買うルート」

その他、学科内のゴシップ(別に外国まで行って芸能レポーターみたいな真似しなくてもいいけど、知っとかないと困ることもある。知らないでadviserのボーイフレンドをデートに誘ったりしたらコトだもんね。──とはいっても、こういう情報は人の輪の中にいれば自然と耳に入ってくるものなので、慌てて「突撃取材」することもないだろう。逆に自分から他人の悪い噂を広めるようなことはしない方が敵を作らないで済むのは、大人の常識である。)

留学生の先輩にきくこと

 留学生(特に、非白人)の先輩がいれば、次の点もきいておきたい。

  • 「大学の雰囲気は、外国人に対してフェアか」
  • 「学科の運営は、外国人に対してフェアか」
  • 「外国人学生同士が交流する場があるか」
  • 「卒業後、外国人学生はアメリカに残る者がいるか、みんな本国に帰るか」

日本人の先輩にきくこと

  • 「日本人会の有無、運営状況、近寄るべきか、よらざるべきか」
  • 「日本食の材料の入手先」
  • 「日本人と他の国からの学生の間に目だったいざこざはないか」
  • 「日本語で電子メール交信が可能か」
  • 「大学に、どんな日本人の先生がいるか」

「先輩」という観念

 アメリカ人には、日本人的な「先輩」という観念はないようである。先に入学しようが、後から入学しようが、要するに同じ学科で勉強している人間である。入学時期がたまたま早かった者の方が、部分的に大学に慣れているに過ぎない。大学院の場合は年齢と入学時期が一致しないから、この傾向が特に強い。年功序列にとらわれず、比較的自由にものが言える点は日本人にとって別天地といえる。

 しかしそれはまた、年齢が上だというだけでは尊敬も尊重もされない若者天下・現役中心社会でもある。(そういう社会だからこそ、喜寿の老人が宇宙飛行を目指しもするのだろう。)



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日本人の先生を訪ねる

 こういう人達、特に他学科にいる日本人教員とどうつきあうかも、考えないといけないところである。長年大学にいる人たちだから、いろいろ事情を知っていて耳寄りな情報を教えてくれるかもしれないが、へたに近寄って、やりたくもないような用事(例えば日本人会の役員)を義理でひきうけさせられたりしたら堪らない。
 とはいえ、長年外国で働いている日本人にしてみれば、概して新しく日本から来た学生が訪ねて来るのは悪い気がしないものである。あまり遅くならない時期に、「今度日本から来た〜です。御挨拶にうかがいました。」と訪ねて行って、手応えを見た上で初回はそこそこに引き上げて来るのがまずもって安全な戦術であろう。特に、同じ学部内や関連の深い研究分野なら早目に訪ねることをお勧めする。
 他学部の先生を訪ねるなら、誰かの紹介で行くか、特定の要件を持っていった方が無難だ(さもないと、「何しに来たんだろう?」といぶかられかねない)。日本での師匠の知り合いのところに挨拶に行くなら、師匠に頼んで、最近の論文の草稿を届けるとか何とか、きっかけになるような理由を作ってもらってもよかろう(これは、特にシャイな人の場合。)

事務手続き

キャンパスの地図を手に入れる

 大学に着いたら、ともあれcampus mapを手にいれよう。大学の案内所(Information Center)に行けばただでくれる。広い構内、これがなくては迷ってしまう。大学のホームページに地図を載せている大学が多いが、やはり広げてじっくり見るためには印刷したマップの方が使いやすい。

書類を集める

 campus mapの次には、下記の書類を手に入れられたい。特に、a、b、c、 eがないと、次の手続きがはじめられない。

a.来学期の時間割("Timetable")
b.授業登録用紙
c.授業内容の説明冊子
d.Course Catalogue(学則及びコース概要説明:ただでくれるか、Bookstoreで購入する。学部生用と大学院生用は別巻になっている場合が多い。大学院生なら、両方入手することをお勧めする。)
e.所属学科の履修規則などの詳細な説明(大抵、入学オリエンテーションの時にもらえる。)
f.外国人学生の為の生活ガイド(大きな大学では、外国人学生事務局がこのような冊子を配布することが多い)

入学手続き

 キャンパスについたら、しかるべき部局に出頭して書類手続きをすまさないと、入学が正式に確定しない。学生証の交付まで含めると、これが結構な大仕事である。外国人の場合、外国人学生事務局に出向く必要もある。また、現地の医療機関まで出向いてレントゲン写真を撮ってくることを要求する大学もある。こういう雑用は早めに済ませて、学期開始後に食い込まないようにしたい。図書館の貸出証や体育館の利用カードを学生証とは別に作る大学もあるが、その場合、学生証を持っていないと交付手続きが始められない場合が多いから、何はともあれ学生証を手に入れるのが先決である。

 学生証は大抵写真つきで、普通申請したその場で撮影することになっている。常時持ち歩く学生証に「いい格好」でうつりたいなら、それなりの服装で出かけよう。

 なお、入学手続きの際には、出願時に大学に送った書類一式およびそれに関してやりとりした書簡、送付年月日の記録などの資料を揃えて持参した方がいい。送ったはずの書類が「届いていない」などと変な言いがかりをつけられないとも限らないからである。そんな時、証拠をつきつけないことにはこちらが悪者にされてしまう。

結核菌退治

 筆者は(大半の日本人成人と同様)ツベルクリン抗体反応が陽性なのであるが、その結果を見たUniversity of Hawaii の医務局員は、体中の結核菌を殺し尽くすまで抗生物質を半年〜一年間にわたり継続的に服用し続けることを勧めてくれた。(費用は大学持ちである。)途中でやめたら抵抗力の強い結核菌だけが体内に残ることになるので、いったん服用をはじめたら絶対に最後まで続けないといけないのだそうである。別に結核の症状が出ているわけじゃなし、既に体に免疫作用ができて菌と仲良く共存しているわけなのだから、わざわざ副作用があるような強い薬など呑む必要もないと思ったのでお断りしたが、“さすがにボクシングの本場だけあって、相手を完全にノックアウトするまで手を緩めないのだなあ、日本軍もこんな相手と戦争するんじゃなかったなあ”と変なところで感心してしまった。

 因に、ツベルクリン検査が陽性反応だと、アメリカでは献血ができなくなる。「血液中に有害な病原体が入っているから」なんだと。そういや、まあ、確かにその通りなんだけど。

履修規定を徹底研究

 かつて新左翼運動のカリスマ的存在であった羽仁五郎氏は、「刑法は被告が権力側と戦うための武器である。」と喝破したそうである。別に左翼でなくてもこの精神は大いにみならい、学則やシラバスを留学生活の武器の一つとして最大限活用したい。(余談だが、アメリカの生粋の右翼はこういう点では大いに「反権力」的な姿勢をみせることがある。)

 必要書類が手に入ったら、大学の規定を精読なされたい。重要な部分にはマーカーを入れるなどしながら読むと内容が頭によく入るし、いざというときに必要な条項を迅速に見つけ出すことができるだろう。
 特に、単位制度に関しては徹底的に研究し、疑問があれば担当者に問い合わせる必要がある。(万一、将来学則の解釈について紛糾した時のために、だれがいつどういう説明をしたか、メモをとっておくといい。何かにつけてメモをとっていることを相手に知らしめると、教員や事務方もいい加減な返事はできなくなる。)

 他学部の授業をどの程度とることができるかなども、コース登録までに確認しておかれたい。学期開始後、何か不都合がおきた場合、受講取消の期日などのルールを熟知していることで命拾いするケースもある。

 また、それ以外にも、詳しく調べて見ると、大学の規定をフル活用することで意外な恩恵や救済措置を受けられることがある。筆者はUniversity of Illinois在学中、CICという近隣大学との単位交換制度を利用して三年にわたり他校の夏期講座に出たが(まともに授業料を払ったら何千ドルもとられるところ、交換制度のおかげで全額免除である!)、この制度を利用したのは、学生数100人を超える学科の中で、過去数年にわたって筆者一人だったとのこと。みんな、学則をよく読んでいないんですなあ。

 また、最近履修規則が変更になった場合など、自分には新旧どちらの規定が適用されるのか、もし旧規定なら、何年間在学しても卒業するまで変更がないのか、について充分確認しておこう。(こういう移行期のゴタゴタでつまづく人が、かなりいるものである。)

 なお、たとえ既に北米の大学での勉学経験がある人でも、新しい大学に移ったら、やはりその大学の規定を熟読する必要がある。同じく北米の大学といっても、細かい施行規則は千差万別である。なまじ経験があるばかりに「前の学校と同じだろう。」とたかをくくって確認を怠ると、思わぬ足元をすくわれかねない。

「熟読」とはいっても、単に字面を追っているだけでは内容が頭に入らないしすぐ眠くなってくる。こんな状態では、いざという時重要な情報が取り出せない。こういう文書を読む際は大学側と一戦交える日に備えて武器庫を整備するつもりで、マーカーを片手に重要な規定や期日・数値等をチェックしていってはいかがだろうか。(筆者の場合、こういう時は「俺は反体制派の敏腕弁護士だ」という想定で自己暗示をかけるとアドレナリンが湧いてくる。)こうやって「マーカーひき」という身体作業を加えることで眠気に抗することができるし、卒業要件で揉めた時など自説を支持する条項をたちどころに引用し、相手を論破することができる。

コンピューターアカウント

 コンピューターや電子メールの口座をくれる大学が多い。ただなら、なるべく早くもらっておこう。特に、電子メールの口座は、たとえ余分にお金を払ってでもぜひとりたいものである。商業ベースのプロバイダーよりは、ずっと安い。

キャンパス探検

 学期が始まったら必ずお世話になる施設が学内にいくつもある。なるべく早く見て回って、場所や中のようすを確認しよう。ざっとツボ所をあげると、

  • コンピューター・ラボ
  • 大学図書館
  • 大学内/最寄りの郵便局大学内/最寄りの銀行支店
  • 現金出納機 (cash dispenser)
  • 外国人学生事務局
  • 学生団体事務局
  • ブックストア(直訳すれば「書店」だが、実態は日本の大学の生協売店みたいなもので、本はもちろん文房具、衣類、その他いろんなものが置いてある。)
  • コンピューター販売店(普通はブックストアの中にある)
  • 食堂
  • 体育施設
  • コピー機
  • 防犯電話
  • 夜道の安全な経路
  • 構内バス(大きな大学にはつきもの)の乗り場と時刻表
  • 駐車場/ 駐輪場
  • 現金出納機

 また、大学近辺の次の施設も調べておくと、後で便利である。

  • 地元自治体の図書館(CDなども借りられる。)
  • コピー店(Kinko'sという全国チェーンがある)
  • 銀行
  • 郵便局
  • レストラン
  • スーパーマーケット
  • 貸ビデオ屋
  • 東洋食品店
  • 自転車屋
  • 日本書店
  • 日本食レストラン(洋食の方が好き、という方も、一度は顔を出して様子をみてくるとよい。こういう店にはしばしば日本人対象の地域ミニコミ誌がおいてあったり「売りたし買いたし」の広告が出ていたりして、地元に慣れるとっかかりとしては非常に役立つ情報がしばしば得られるからである。)

近隣大学の情報も

 近隣の大学がお互いの施設を共用できるような協定を結んでいる(consortium)場合、その施設を調べておくと得をすることがある。サウナ中毒の筆者がマサチューセッツ大学に就職したおりは、体育館にサウナがないのでショックを受けてしまったが、同大とconsortiumを結成している近隣のHampshire Collegeのジムのサウナが利用できることがわかり、週末にはせっせと通っていた。もっとも、consortiumの規定では他大学の体育設備を利用できるのは大学の職員だけだったが、大学院生でもgraduate assistantをしていれば大学職員としてこの恩恵にあずかることができた。

 まずはconsortiumの規定を研究し、学生が他大学の施設を利用できるかどうかを調べるのが先決であろう。

コンピューター・ラボ

 学生に開放しているコンピューター・ラボがあれば、場所、開室時間、機種、搭載ソフトウエア、プリンター接続と印刷料金、ネットワーク接続状況(たとえば、そのコンピューターから電子メールが送れるか)、使用規則などを調べておかれたい。学生用のラボといっても、中には特定の学部の学生以外は使用お断りというところもあるので、そのあたりも調べておく必要がある。

 また、大学によっては正規の授業とは別に、コンピューターソフトの用法を実習する講習会を開いていることもある。(有料のこともあるが、日本でパソコン学校に通うことを考えればタダみたいな値段である。)ところが、少しレベルの高い内容になると、コンピューター操作に気をとられている間に講師が言った大事な注意を聞きのがしてしまいそれ以後全くついていけなくなる、ということが結構よくある。これを防ぐためには、そのソフトの概要をあらかじめつかんでおくとよい。次項で述べるソフト学習用の視聴覚教材がそのために役にたつ。

図書館

 まじめに勉強していれば、おのずと図書館には頻繁に足を運ぶことになる。どんな設備があるか、早めに熟知しておこう。特に人文社会科学系の場合、図書館をどの程度有効に使いこなせるかが研究の成否の別れ目にもなる。学位論文を書くころともなると、研究生活の拠点を図書館に移す学生も多い。そういう人達の為に、鍵のかかる専用研究室を図書館内に準備してくれる大学もある。各種のデータベースやカードによる図書検索に精通しておくのはもちろんだが(そのための講習会を開いている大学もある)、その他、自分の図書館においてない本でも、interlibrary loanという制度を通じて他大学から取り寄せる制度もある。このあたりは、漫然と図書館の中を歩いているだけではうかがい知れない。そなえつけのパンフレットをていねいに検討するとともに、定期的におこなわれている図書館ツアーにも参加しておくとよかろう。

 主なチェックポイントは:

  • 本館および分館の場所(学部単位で、独自に図書を管理している場合もある)、開館時間
  • 自習室の場所と使用規則
  • 大学院生は、個人専用の勉強室を借りることができるか
  • コピー機の場所、方式、機能
  • コピーカードは、どこで買えるか
  • 参考図書の場所
  • 蔵書の検索方法(コンピューター管理されているか、カード式か、コンピューター管理なら、館外からアクセスできるか)
  • 図書の予約方法(コンピューターで予約可能か、送本してくれるか)
  • 文献の検索システム(CD-ROMなどの電子化されたデータベースが利用できるか)
  • EndnoteやProciteなどの市販の文献データベースに、直接データを取り込むことができるか
  • 雑誌、定期刊行物の場所、特に自分の専攻分野の雑誌の棚 
  • 日本語の書籍の場所(一括管理か、英語の本と一緒か)
  • 書庫の中に入れるか
  • 日本語の新聞や雑誌は入っているか
  • Interlibrary loan officeの場所と申込方法
  • 新しく本や雑誌を入れてもらいたい場合、どこに希望を出せばいいか
  • 新規購入図書は、最初どこに配架されるか
  • 視聴覚ソフト(ビデオ、CD-ROM教材、DVDなど)にはどのようなものがあるか

 最後の視聴覚ソフトというのが、結構ばかにならない威力を発揮することがある。筆者はハワイ大学在学中にSASという統計パッケージの用法実習の授業を受講したのであるが、あまりにわかりにくい授業だったのでアタマに来てしまった。そこで何かわかりやすい参考書はないかと図書館で探し回ったところ、同ソフトのビデオ解説版があることがわかり、さっそく視聴してみた。これが実によくわかるのである。カバーしている内容は初級レベルどまりながら、その初級の基本概念がいま一つつかめず難儀していたので、このビデオにめぐりあえて大助かりだった。(今にして思えば、講義がはじまる前にビデオを見ておくべきであった。)

 その他のコンピューターソフトも、わかりやすく解説したビデオ教材やCD-ROMなどが出回っている。こういう教材は結構高いので、図書館で借りて見ることができればそれにこしたことはない。なにしろその種の教材は業界屈指の名インストラクターが自ら企画・出演することが多いので、概して内容はかなり信頼できるといっていいだろう。中味も濃く、一時間ぐらいのビデオでも相当な情報をカバーしている。マニュアルには書いてないような「秘伝」「ノウハウ」の類を教えてくれることもあり、一度見ておいて損はしない。コンピューターソフトの使い方を実習する授業やワークショップに出られる方も、その前に一通りでも「予習」を済ませておくと全体の脈絡がよくつかめ、何も知らずに受講するよりはるかに多くを実習から吸収することができる。

 なお、よほど分野に精通しているのでない限り、この種の視聴覚教材の内容を一度見ただけで完全に理解するのは困難である。流しっぱなしにするだけのでなく、わからないところは巻きもどして後でもう一度見るなどすると内容がずっとよく頭に入る。(最初見るとき、後でもう一度見たいところをメモしておくとよい。そういうユーザーのために、画面の一角にトピック名が刻々と表示されるビデオもある。)

 もちろん、「勉強」でない娯楽用の映画などのライブラリーもあるので、それを週末に借りて見るのもいい気分転換になる。(ただし、テープは持ち出し禁止の大学もある。)

 自分が見たいビデオやCD-ROMが図書館になければ、遠慮なく購入希望を出すとよい。駄目でもともとである。特に、「授業に関連がある」とか「研究にぜひ必要だ」とか書き添えておくとそれなりに考慮してくれる。ただし、もし希望どおり買ってもらえたなら、義理でも一度は見るのが礼儀というものでしょう。

コピー機

 コピー機は、図書館、学生寮など学内のあちこちにあるから、場所を確認して、地図にマークしておこう。学期末になるとこみあう(当然、故障や紙切れも多くなる)から、なるべくいろいろなところにある機械を知っていた方が有利である。また、用紙のサイズ、両面コピーがとれるか、などもチェックポイントである。コピーカード(プリペイド方式のカードを使った方が、毎回コインを入れるより安くて効率的)の入手方法も調べておかれたい。大学によっては、図書館、学生寮などにあるコピー機全てで同じコピーカードが使えるようにしてあって便利である。コピーカードは学期開始以前に入手しておきたい。

レジャークラブ真っ青の体育施設

 概して、アメリカの大学の体育設備は、日本とはくらべものにならないぐらい立派である。(筆者の母校University of Illinoisには、テニス・コートは言うに及ばず、50メートル室内温水プール、屋外50メートルプール、飛び込み台、シャワー室、サウナ、スカッシュ・コート、ラケットボール・コート、フットボール・スタジアム、さらには何とゴルフ・コースまであり、体育館ではタオルやロッカーも貸してくれた。)しかも、体育の授業やクラブ活動以外でも、一般の学生がこれらの施設の多くをふんだんに利用できるようになっているところがすばらしい。設備の詳細や使用規則をしっかり調べておくと、絶対トクをする。なお、新学期開始直前の2〜3日は手持ち無沙汰の学生がつめかけて大混雑するので、下見や書類手続きはそれ以前に済ませておいた方がいい。

 なお、温水プールの水温設定は大学によってかなり異なる。イリノイ大学は冬期に水温をずいぶん低くおさえていたようで、筆者のように気分転換のためにのんびり泳ぎたい人間には少しつらかった。(もちろん、競泳選手がいい記録を出すためには水温は低目の方がいい。)

外国人学生事務局(International Student Office)

 これから、ビザのことなどでずっとお世話になる部局である。ビザに関すること以外でも、外国人のための色々な催しの情報が集まってくる場所なので、定期的に顔を出しておくことである。滞留資格のことでここへ行く時には、パスポートを持参するのが効率的である。

学生団体管理事務局

 在学中にサークル活動に参加したいなら、まず登録団体にどんなものがあるか調べ、代表者に連絡して活動状況を聞き出す必要がある。そういう団体のリストはしかべき部局が一括して管理している。代表者の電話番号や電子メールも教えてもらえる。

診療所

 少し大きい大学なら、怪我の応急治療や風邪薬の処方ぐらいはできるようなクリニックを置いていることが多い。場所や経路を確認するとともに診療システムを聞いておくと、いざというときあわてないで済む。(発熱して体がだるい時にクリニックの場所を探してさまようのは大変な苦痛である。)筆者はUniversity of Illinois在学中、毎年大学の診療所で花粉アレルギーの薬をもらっていた。日本では入手できなかったスプレー式の鼻腔消炎剤(当時は覚醒剤扱いされていた──帰国時に持ち帰るのも御法渡)を学生健康保険で処方してもらってたちまち鼻スッキリになり、助かった記憶がある。

ブックストア

 北米の大学のBookstoreとは、日本の大学の生協売店みたいなものだと思えばいい。本だけでなく、文房具、コンピューター、ジャージー、さらに大学のお土産品にいたるまで色々なものを売っている。観光客で賑わうHarvard UniversityのBookstoreなどは、ちょっとしたデパート並みである。UCLAのBookstoreに至っては、レジに日本語の掲示まで出ている。

 ただし大学のBookstoreは利益をあげることを目的にしているので、店内の商品のねだんは必ずしも市中の文房具店にくらべて安いとは限らない。教授によっては、コースの指定教科書をBookstore以外の店から買えるように手配することもある。(そういう店の方が融通がきいて、割引価格を設定してくれたりするものである。)

 Bookstoreに来学期の教科書がならんだら、他学部のコーナーも含めてざっと見てまわるとコース内容の一端がうかがえて興味深いものである。教科書を見ているうちに、その授業を覗いてみたくなることもある。なお、教科書は最初の授業に出るか、先生に確認をとってから買った方がいい。先生によっては、指定教科書になっている本でも後になってから、使わないことに決めたりすることもあるからである。(もちろん、個人的な興味で是非その本を入手したいならこの限りでない。面白そうな教科書なら、自分がとるコースでなくとも買ってしまってもお咎めはなかろう。)いずれにせよ、教科書を買ったならその領収書はしっかり保存しておこう。コースがキャンセルされた場合など、本を返品する時に必要になる。

 なお、教科書コーナーにはしばしば古本が並んでいる。当然、新品よりも安い。なかには古本でも新品と同じぐらいきれいなものもある。そういうのが見つかったらラッキーである。しかし、もっといいのは、重要なポイントが一目でわかるように丁寧に下線や有益な書き込みのなされた古本である。(どこに下線がひいてあるかを見るだけで、前の持ち主の学力が推定できる。)

 最後に、新学期早々は、教科書を買いに来る学生でBookstoreが大混雑する(そのため、この時期に限って早朝開店したり夜遅くまで営業するBookstoreも多い)。少しでも行列を避けるためには、朝早くBookstoreに行くなどの戦術が必要になる。

方眼入りのノートを

 主に工学系の学生のために、方眼の入った特製のノートが作られている。別に工学専攻でなくても、数学や統計学など図表をふんだんに描かねばならない科目を受講する時は、そういうノートを使うと便利である。(余談ながら、筆者は日本語を受講する学生にもそういうノートを勧めている。)ただし、罫線が濃かったり方眼のマスが細かすぎると目がチカチカするので、何種類か見比べた上でなるべく目にやさしいものを選ぶことを御勧めしたい。経験的にいって、罫線が青よりは灰色(クリーム色)の方が目が楽である。これまで筆者が使った中で一番気に入ったのは

  • 5 Squares per inch 100 sheets 5 x 5 Quadrille (No. 1185-Q) , F. W. Woolworth Co., New York, NY 10279 USA

次いで

  • MA 01041 USA; Heavyweight White Paper 4 x 4 Quadrille (33-688, 50 Sheets) , National Brand, Dennison National Company, Holyoke

であった。

インターネット書店

 インターネットの発達によりAmazon.comやVarsitybooks.comなどオンライン書店から教科書を買うことも可能になっている。値段もオンライン書店の方が安いことが多い。ただし、授業の初日に先生の指示を確認してから注文して次回の授業に間に合うかどうかも考慮した方がいい。オンライン書店だとコースがキャンセルされた場合などの返本も面倒である。

 なお、例えばAmazon.comの場合、自分が管理するホームページ上に同社が指定する方法で本の広告を掲載しそこをたどって誰かが本を注文した場合にはホームページ主に売り上げの5〜15%の報奨金が分配されることになっている。(わずかの金額の収入に対して税金の申告などするのは面倒だというなら、報奨金の入金先としてボランティア団体や同窓会などを指定しておくとよかろう。)ただし自分のホームページ上の広告を経由して注文してもこの恩恵にはあずかれない。

 ひょっとしたら、友達と組んでお互いのページ上の本の広告から注文しあうということも可能かもしれない。今のところ、Amazon社のデータベース上の商品レコードに同社指定の方法でリンクを貼るためには最低限のHTMLの知識が必要で、やってみると結構めんどうくさい。それにくらべ、ブログやWikiを使うと比較的簡単にリンクが作れるようである。



俺流amazonの作り方―Amazon Webサービス最新活用テクニック
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Wiki

コンピューター店

 多くの場合、大学のBook Storeの中に併設されている。北米では教育用のハードやソフトの値引き率が極めて高く、学外で買うのの何分の一かの値段で買える場合もある。新学期開始の前後は特別セールの時期でもある。(ただし、通信販売で買った方が安いものもあるというから、購入前には値段を比較なされたい。)

関連学科のオフィス

 所属学科でなくても、関連分野の学科のオフィスには足を向けて、講義の要目をもらっておこう。(時間割だけでなく、講義の概要や指定教科書を記載した詳しい要目を配布している学科がある。)また、大きい学科では定期的に講師を招いて講演会を開くこともある。オフィスで頼んでおくと、事前に案内を送ってきてくれる。

夜道の経路を調べる

 街中は言うまでもないが、田舎の治安のよい地区にある大学でも、夜道は気をつけた方がいい。自動車通学の方は、屋内駐車場が特に危険なことも頭に入れておかれたい。女性ならなおさらである。自衛策としては、まず、

  • 夜遅く出歩かない。

それが無理なら

  • escort service(大学の護衛員が夜道を送ってくれる;大抵、送ってもらえるのは女性のみ)を利用する、
  • 一人歩きを避けて知人と一緒に行動する、
  • 照明が充分な道を選ぶ、
  • いざという時の為に、据え付けの緊急電話の場所を確認しておく(通常の公衆電話とは別に、こういう緊急SOSの為の直通インターフォンを学内各所に設置している大学もある)、
  • 防犯笛や通報ブザー、防犯スプレー、携帯電話を携行する、

などが考えられる。

  • 防犯スプレー(催涙ガスが内蔵されていて、とりようによってはこれ自体が一種の武器であるとも言える)

については賛否両論あるが、筆者には判断するだけの材料がないので、事情に詳しい方に意見を求めた上で判断なされたい。Escort serviceや、キャンパス内の屋外照明については、Campus Policeに問い合わせてみられるとよろしかろう。夜道の推薦経路を指定している大学もある。

 また、夜、図書館やコンピューター・ラボへ行かなければならない日にはその都度、同行して帰りにうちまで送ってくれる男子学生を募っていた女子学生もいた。(余談ながら、この女性には婚約者がおられたが、生活のペースが違うためその人に送ってもらうわけにはいかなかったらしい。)こういうやりかたをいやがる女性もおられるが、このあたりは個人の価値観に属することなので、「ご自分でご判断ください。」と申し上げる他ない。

 なお、キャンパスが特に物騒になるのは、春休みやThanksgiving休みなど人通りが絶える時期、およびHaloweenである。Halloweenの時期には、器物破損などの犯罪もおこりやすい。寒冷地では、長くつらい冬をひかえて屋外で騒ぐ最後のチャンスということもあって、荒れるHaloweenがしばしば見られる。群衆心理や、仮装からくる匿名性ももちろん手伝っているのであろう。

ここまでやってくれるアメリカの大学

Campus Police

 田舎町にある、ある程度の規模の州立大学になると、大学直属の警察組織をかかえていることが珍しくない。学内で盗難や暴行事件があれば、まずはこういうcampus police(制服を着用しパトカーに乗り拳銃も警棒も逮捕権も持ったホントのおまわりさん)がやってくるわけである。こういう暴力装置を大学自らが擁していれば、学内で事件が起きてもその都度外部から機動隊をよんだりする必要がなく、「大学の自治」も守られるわけだと納得できる。

全米総危険地帯説

 アメリカで日本人が銃犯罪の犠牲になると、すぐにアメリカ全土が凶悪犯罪多発地帯であるかのような報道が日本の新聞や雑誌に載るものである。確かに麻薬の蔓延や銃規制への取組の甘さをみると、将来そうなる可能性も否定はできないが、現時点に限ってみれば、そのような報道はかなり誇張されたものという他ない。


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Wiki

 とはいえ、以前は夜も鍵をかけずに安心して眠れた地域が、急速に「戸締り用心」ムードになりつつあることは否定しようがない---というのが筆者の滞米中(1994年夏まで)の趨勢だったが、その後治安が飛躍的に改善したということである。1999年になって凄惨な銃撃事件が続いて起きたが、それでも全国統計をみると往年よりは凶悪犯罪は減ってきているようである。

 ともあれ、慎重であるにこしたことはない。どんな田舎街の大学であっても、女性には(というより、男女を問わず)深夜の一人歩きはお勧めできない。

大学新聞は 貴重な 情報源

 大学内での行事や主な出来事を掲載した、無料の大学新聞を発行している大学が多い。最近ではそれをWebに載せているところもある。目を通しておくと、アルバイト・奨学金情報や思わぬ面白い講演、会合を見つけたりすることもある。

キャンパス=メ−ル

 学生寮から先生のオフィスあてに手紙を出す時、わざわざ切手を張ってポストに入れる必要はない。Campus mailという、学内の文書配送システムがあり、学生も無料で利用できる。ただし、大きい大学ではこみあう時期は著しく配達が遅れることもありうる。

ホスト・ファミリー

 外国人学生の為に「ホスト・ファミリー制度」を設けている大学がある。地元の篤志家庭を募って、外国人学生の「里親」役をやってもらおう、という制度である。具体的な運用は各家庭に任されているが、ThanksgivingやChristmasのpartyに呼んでもらったり、一緒にpicnicをしたり、というのが代表的なやりかたである。筆者もUniversity of Hawaii at Manoa 在学中は、日系米人三世のご夫婦にお世話になり、おかげでハワイの日系人社会に対する理解を深めることができたと大いに感謝している。

 せっかくの制度なので、積極的に活用することをお勧めしたいが、それなら、一刻も早く申し込むべきである。というのは、条件のいいホスト・ファミリーから先にわりふられていく傾向があるので、申し込みが遅れると、いわゆる「ファミリー」の雰囲気が充分に味わえない場合もあるからである。

 なお、この制度はご家庭の善意にもとづくものではあるが、はじめてお宅に呼んでいただいた時には、金額のはらない、気のきいたお土産をもっていくとよろこんでいただける。日本でお土産用の小道具を買い集めておくとよかろう。あまり高価なものは、避けた方がいいと思う。(一軒の家庭に2人の学生が割り振られることもある。そういう場合、相手の学生とのバランスも考えるよう、気づかいするのが大人の知恵というものでしょう。)

新入学オリエンテーション

 新入学生のためにあれこれorientationの行事をやるのが恒例で、新学期開始の1週間ぐらい前からはじまる。大学や所属学科が主催するものの他、各種の学生団体や教会が開くこともある。大学のシステムを色々な角度から知るとともに、人脈を築くチャンスである。積極的に参加なさることをお勧めしたい。

Campus tour

 学期開始が近づくと、新入生対象の構内見学(campus tour)が催される。時間の都合がつけば、参加なさるようお勧めしたい。ただの建物めぐりだけでなく、大学史上の意外なエピソードなどもその折りに披露してくれて興味深いものである。こういう話をいくつか知っていると何やら「通」になった気持ちで、その後自信をもって自校のことを語れるようになる。

街の様子を調べる

 街の地図も早目に手に入れて、交通経路を研究しておこう。大学および住居から街の主要な地点(スーパーマーケット、ショッピングモール、ダウンタウンなど)への経路は、特に念入りに調べておく価値があろう。

公共交通網

バスの路線図や時刻表は大学のしかるべき部署がまとめて揃えていることがある。それを一式もらえれば手間が省ける。さもなくば、バスに乗る度に運転手からもらうしかない。もちろんWeb siteにまとめて掲載してあれば一番便利である。

タウンガイド

ある程度以上の大きさの街なら、レストランや娯楽施設などの広告と関連記事を満載した無料のタウンガイドがスーパーマーケットなどで手に入ることが多い。割引券が入っていたりすることもある。何はともあれ一部入手しておこう。

ダウンタウン

 日本語でいう「下町」とは全く違って、英語でいうdowntownとは銀行の本店や役所などが居を構えるオフィス街のことである。最近では、それがスラム化しているところもよくある。

これと逆にuptownといえば住宅街である。

東洋食品店

 北米では、韓国系の移民が東洋食品の流通経路を牛耳っている。タイ人経営の東洋食品店もあるが、韓国系や中国系、日系の店主の方が漢字が読めるだけ品揃えが日本人にとって好都合である。(たとえば、そうめんつゆの瓶と醤油の瓶の区別は、漢字が読めないと難しい。)

市営図書館

 娯楽用のビデオ/CDや児童書は大学図書館より市営図書館の方が充実していることが多い。税金申告の相談会も、市営図書館でやることが多い。特に家族持ちの方にとっては、使い方次第でかなり役にたつ施設である。市内に住んでいさえすれば、外国人でも利用証を発行してくれる。筆者はイリノイ大学時代、文章理解過程の実験素材を探すために市営図書館を利用したこともある。

文房具のデパート

 少し大きい街へ行くと、文房具の卸売りをする問屋みたいな店が一般客にも門戸を開いている。大量仕入れのおかげで、フロッピー・ディスクやノートが他所では考えられないぐらい安く手に入る。品揃えも豊富で、納得のいくものが選べる。事務用品の標準化は概して北米の方が進んでいるので、日本では容易にお目にかかれないようなおもしろい品物に出くわすこともある。文房具に凝る人なら、半日いても飽きないぐらいである。特に、一年間を一覧できる大型の壁面予定表は、学生には必需品である。北米版の能率手帳のようなものも、こういうところで手に入る。ただし、北米では文具も何かにつけて日本よりひとまわり大ぶりなのはいたしかたあるまい。折角出かけるなら、車で行ってまとめて買い込むのもよかろう。

教会とのおつきあい

 読者が特定の宗教の信者で、現地におけるその宗教系列の教会や寺院を探しておられるのなら、日本にいる間にその宗教関係の方を通じて現地の機関を紹介していただくとよかろう。このあたりは筆者は全く門外漢であるので、いいアドバイスができない。次に書くのは、宗教的な興味以外からの、教会とのおつきあいについてである。

 キリスト教会やクリスチャン系の学生団体が、外国人学生を招いて親睦の催しをおこなうことがある(他の宗教でもやっているのかもしれないが、お目にかかったことがない。)食事をしたり、映画を見たり、ゲームをしたり、まずまずネットワーくを広げるとっかかりとしては適切であろう。多くの場合、無料か極めて安い参加料ですむ。こういう催しは学期開始前後が一番さかんだが、その他の時期にも開かれることがある。せっかく人と知り合うチャンスだから、参加して損はない。筆者の経験では、しつこく入信を勧められるようなこともなかった。食事の前にお祈りの時間があるぐらいだが、キリスト教徒でないため「アーメン」とは言えないというなら、神妙な顔をして座ってさえいれば、文句はいわれない。おみやげに聖書をくれたら、ありがたくいただいてかえっても、ばちはあたるまい。

 たまにカルト系の団体もあって、そういうところは勧誘が猛烈らしいから、それには注意が必要だが、このあたりの見極めが難しければ、アメリカ人の学生にきいてみれば事情を教えてくれる。概して、大宗教、大宗派として確立したところの方が、あせって強引な勧誘などしないものである。

 また、集団での行事でなく、個人的に「教会の集まりへ来ませんか。」と誘われることがあるが、こういうのは入信勧誘の意思あり、と疑って(?)みた方がよかろう。行きたくなければ断わればいいのであるが、1度ぐらいは覗いてみたい、でも入信はしたくない、という場合に筆者が使った手は「北米文化の基礎としてのキリスト教の慣習には興味があるが、自分は仏教徒であって改宗する意思はない。それでもいいか。」と最初に宣言してしまうことである。(「私は〜教徒」と先に宣言してしまうという戦術は、梅棹忠夫著『モゴール族探検記』岩波新書から拝借した。)


モゴール族探検記
作者:梅棹 忠夫
出版社/メーカー:単行本
発売日:1956-09
メディア:岩波書店
Wiki

 ただし、クリスマスのミサなどは年中行事で、大きい教会には信者以外の人も訪れる。正月の初詣みたいなもの、と言ってしまうと言いすぎか?とにかく、一見の価値のあるものだと思う。特にカトリック教会は、建物だけでも芸術品といえるものが少なくない。
 地域コミュニティーのためにボランティア活動をしてみたいと思っておられる方にとっても、地元の教会は色々なルートを紹介してくれる、格好の連絡経路として活用できると思う。この場合も、入信の意志が全くないのならそのことをはじめに断わっておいた方が面倒がないだろう。

若気の至り・その1

 筆者が1990年の12月に米南部を訪れた折り、キリスト教系の某団体が作ったクリスマスカードを偶然目にして腰を抜かしたことがある。カードの最初のページには、「神になろうとした人間はたくさんいますが…」という(英語の)見出しの下にシーザーやナポレオンなど十数名の肖像が並べられ、その次のページには生まれたばかりのキリストが聖母マリアに抱かれている絵に「神様は人間の姿をとって地上に現われました。」という趣旨の説明(三位一体説に則ったものであろう)が付されていた。筆者が頭に来たのは、前段の「神になろうとした人間」の一人に釈迦が入れられていることであった。

 これでは異宗教蔑視を煽っているようなものではないか。第一、どういう基準でナポレオンと釈迦を同列に扱うことができるのか。これが私的な会話ならまだしも、クリスマスカードとして毎年全米の家庭にばらまかれ判断能力の乏しい子供の目にまで触れてはたまらない。

 普段はカルト団体の勧誘を避けるために"Buddhist"を名乗っているだけのズボラ仏教徒の筆者だが、突如として全仏教徒代表のような気分になってしまった。旅から帰った後すぐに発行元の団体に再考を求める手紙を出しておいたが、結局返事はもらえなかった。手紙の中では、富貴な王国の王子として生まれ贅沢三昧で一生を送れるはずだったお釈迦様が一切を投げうって修行の道に入られたことも説明しておいたのだが、ちゃんと読んでくれたかなあ?

 余談ながら、仏教の開祖のお釈迦様はヨーロッパから移住して北インドに定住したシャカ族の後裔で人種的にはコーカソイド族(Caucasian)つまり広い意味では「白人」、一方キリスト様はユダヤ人(セム族)家庭に生まれたから有色人種(これもヘンなことばだが)。そう考えると、その後の東西を逆にした布教展開は皮肉な結果である。

…というようなことを書いていたら、ダライ・ラマがノーベル平和賞(1989年)を受賞したのを契機にアメリカで仏教徒が増加していると報じる『タイム』1997年12月8日号が届いた。ロックの大姉御ティナ=ターナーが創価学会の会員だということは知っていたが、映画の中では大量殺戮をやっているスティーブン=シーゲルや名うてのプレイボーイのリチャード=ギアがチベット仏教徒とは初耳であった。



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