北米留学上級技術マニュアル - 「ハーバードよりいい大学」がたくさんある
目次
- Harvardよりいい大学
- WASP純粋文化の華Yale University(私立)
- 「アメリカの貴族」の学園、Princeton University(私立)
- 西部私立大学の雄Stanford University(私立)
- 工学界の花形 Massachusetts Institute of Technology = MIT(私立)
- 超ハイテクの最前線、 California Institute of Technology = CalTech(私立)
- スーパー・コンピューターの総本山、University of Illinois at Urbana Champaign = UIUC(州立)
- 認知・計算機科学の王者Carnegie Mellon University = CMU(私立)
- 全米最高の研究大学University of California, Berkeley = UC Berkeley(州立)
- ノーベル 賞学者がうようよ湧いて出る究極のresearch university、University of Chicago(私立)
- 桁外れのスケールで躍進する南部の獅子、University of Texas = UT(州立)
- 早期エリート教育の極致、Amherst College、Swarthmore College(ともに私立)
- 外国語教育のメッカ、Middlebury College(私立)
- 米欧両大陸の知性を結集するMcGill University(カナダ、ケベック州立)
- クラシック音楽の頂点、The Julliard School(私立)
- 州立のJuilliard、Indiana University(州立)
- 「ニューヨーク! マンハッタン! ウッディ・アレン!」 New York University = NYU(私立)
- 連邦政府お膝下の利をフルに活用する、Georgetown University(私立)
- 映画芸術の殿堂、California Institute of the Arts = CalArts(私立)
- コングラの最高峰、Ringling School of Art and Design (私立)
- 自分の「世界一の大学」を探す
Harvardよりいい大学↑
「北米で一番いい大学」といえば「Harvardに決まっている」と思っている日本人が多いが、実は色々な点でHarvardを凌ぐ大学がたくさんある。アメリカ人は日本人以上にものごとに順位(ランキング)をつけるのが好きな国民だが、その順位づけの尺度が一つだけでなく、「この指標ではここが一番」とさまざまに使い分ける点が日本と異なるように思う。ランキングという物差しを道具として使いこなす姿勢は、日本人がアメリカ人から素直に学んでよい。
ともあれ、この章ではそれら「ハーバードよりいい大学」のいくつかを紹介する。話を盛り上げるために、ここでは各大学専属のコピーライターになったつもりで思いっきりもちあげる記事を書く(欠点はここには原則として書かない)ので、そのおつもりでお読みください。
WASP純粋文化の華Yale University(私立)↑
http://www.yale.edu/
長年にわたるHarvardのライバルをもって自他ともに認めるのが、Yale大学。同じ東部のIvy League 校同士である。Harvardがいささか「野党的」で雑草的なタフさや多角的な視点を求めるのに対し、Yaleの教育方針はアメリカのメインストリームのWASP (= White Anglo-Saxon Puritan)文化伝統の継承におかれている。「アメリカのリーダーを育てるYale、世界で活躍する人材を産みだすHarvard」とでもキャッチフレーズをつくっておこうか。(そういう意味では、HarvardよりYaleの方が「東大的」であるとも言える。)因にアイルランド系のJ. F. Kennedy兄弟はHarvard出、典型WASPのブッシュ前大統領はYaleの卒業生である。(「WASPという神話」参照。)
1997年の雑誌US News & World Reportの学部課程ランキングでは、YaleがPrinceton、Harvardを抑えて一位にランクされている。大学院学部別のランキングでも、Yaleの法学部はここのところ不動の全米一位で、卒業生は主に保守派法曹人の中核として司法界を席巻している。コンピューター学科には長らく大御所Roger Schank教授(現在はNorthwestern University)がいて人工知能研究のメッカであった。
Ivy League↑
東部名門私立総合大学の総称。
- Harvard University http://www.harvard.edu/
- Yale University http://www.yale.edu/
- Princeton University http://www.princeton.edu/
- Columbia University http://www.columbia.edu/
- Brown University http://www.brown.edu/
- University of Pennsylvania http://www.upenn.edu/
- Cornell University http://www.cornell.edu/
- Dartmouth College http://www.dartmouth.edu/
の8校からなる。このうちDartmouth Collegeは歴史的な経緯からCollegeの名を残しているが、中味は立派な総合大学である。また、Cornell University は実は、一部は州立大学、一部は私立という複雑な経営形態の公私連合体である(州立の部分に属する学科と、私立の部分に属する学科とが混在している)。そういう意味では、Cornellこそ文字どおりの"State Ivy"(「州立のアイビー」)であるとも言えるわけである。
「アメリカの貴族」の学園、Princeton University(私立)↑
http://www.princeton.edu/
良家の子女が集まることで有名なのがPrinceton University(う〜む、音の響きからして高級っぽい!)。いわばアメリカの貴族がやってくる大学ともいえよう。反面、minorityの勧誘には最近まであまり力を入れてこなかった。女子学生を受け入れるようになったのも、比較的最近である。学生一人あたりの大学の資産額ではHarvardを上回るという金持ち大学でもある。自ずと政治的には保守的で、学生の中では共和党(Republican Party)の支持者が常に多数を占めるそうである。所在地Princeton市は大学以外は何もない所なので、学生はこの保守的な空気にどっぷり浸って4年間を過ごすことになる。ただし、マンハッタンまで1時間の距離なので、週末New Yorkに遊びに出かけたりするのはよくあることらしい。
西部私立大学の雄Stanford University(私立)↑
http://www.stanford.edu/
最近のランキングでは、全米一の私立大学としてHarvardを抑えてStanford の名があがることがよくある。実際、広大なキャンパス・優れた設備・著名で優秀な教授陣・潤沢な予算・快適な気候・明媚な風光と、俗事に煩わされず勉学に打ち込むには最高の環境である。StanfordやUC Berkeleyが所在するSan Francisco湾周辺地区("Bay Area")は、Harvard・MITのあるBoston市近郊とともに、全米の2大学術センターといわれる。
なお、夭折した息子を記念して大学設立に巨費を投じたLeland Stanfordは今世紀初頭に大陸横断鉄道を築いた当時の鉄道王である。当然ながらStanfordは東部の有名私立大学の主流と違って、特定の宗派と結び付いていない。その分よく言えば新取開明的、しかし悪く言えば成金が金にあかせてつくった大学である。
ハイテクのメッカ・Silicon Valleyも近く、同地のハイテク企業の多くは何らかの形でStanfordとつながりがあるといわれる。今をときめくグーグルも、もとはといえばStanfordの大学院生であったLawrence Edward "Larry" PageとSergey Brinが自分たちの研究成果をもとに創始したベンチャービジネスである。こういう商売気のある学生を抑えるどころか、教授の方が優秀な学生を誘って会社を作ってしまうことが多いというから、日本の常識ではとうてい測れない。
Stanfordは実績を見ても、Harvardを上回る業績をあげる学部学科が目白押しである。最近の雑誌US News & World Reportの大学院ランキングでも、MBA・心理学・コンピューター工学の三部門で第一位に輝いている。さらに雑誌BusinessWeek(1997年6月23日号)の情報工学部門の研究機関に関する非公式調査でも、
「研究者が一番勤めたい研究の場」(X-Lab)
「陣容、実績などを含めた総合評価」
の両部門でStanfordが一位に就いている。このX-Labの質問項目がいかにもアメリカらしく気宇壮大でユカイなので次にご紹介しておこう。
If you were 35 and had just won the first Nobel Prize for Information technology, triggering invitations to the lab of your choice, which one would you pick?
総じて言うと、Harvardをプロ野球の(強かった頃の)巨人にたとえるなら、Stanfordはこれまた全盛期のソフトバンクホークスというところか。Stanfordは軍との結び付きが強いことでも有名。Stanford出身の第31代米大統領(1929〜1932在任)Herbert Hooverにちなんだ、Hoover研究所もStanfordにある。(アメリカでは大統領が退任すると、その名を冠した施設・機関を設けることになっており、その大統領の出身大学に設置される場合が多い。)
鉄道王の大学↑
アメリカにはStanford以外にも鉄道王の創立した大学がいくつかある。西部開拓時代、鉄道会社がアメリカの発展を牽引し主要財閥の中核を成していたころの名残りであろう。南部テネシー州のVanderbilt University、中西部インディアナ州のRose-Hulman Institute of Technologyはいずれも、Stanfordほど著名ではないにしろ質の高い教育をすることで知られた名門校である。
なお、このRose-Hulman Instituteを築いたHulmanというのは、日露戦争で日本が南満州鉄道の利権を獲得したあとその共同開発の提携相手として日本政府が一時期真剣に検討した相手である。(小村寿太郎らの反対で、単独開発に落ち着く。)
工学界の花形 Massachusetts Institute of Technology = MIT(私立)↑
http://www.mit.edu/
文理医学のHarvardに対し、工科の花形は言わずと知れたマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology = MIT)。雑誌US News & World Reportの工学部大学院ランキングの総合順位では、不動の一位である。数理経済学や理論言語学の分野でも令名が高い。Harvardとは単位交換も可能な、姉妹校でもある(HarvardとMITは地下鉄一本で容易に行き来できる、ご近所同士)。
全米有数の高地価地区であるBoston近郊の MITキャンパスにはもはやほとんど拡張の余地がないぐらいビルが林立しており、あたかも工場のような感すら受ける。ビルに固有名詞をつけず数字で呼びならわしているのも、いかにも工科大学らしい。
寄付集めのプロ↑
金集めに力を入れているのはMITだけではない。寄付金担当の専門職員をおいている大学は珍しくない。さらには何と、寄付金を出してくれそうな金ヅルを網羅したデータベースも出回っている。概して、私立大学はとりわけ寄付金集めに熱心なようである。身寄りのない高齢の富豪が生前、自分の没後に財産を出身大学に寄贈する約束をすることもある。(Stanford Universityのように、大富豪が私財を投じて大学をまるまる一つ作ってしまったこともある。)
なお、大学に寄せられた寄付金のうちかなりの部分は使途が指定されている。たとえば、「この寄付金〜万ドルで作った基金から揚がる収益は、医師を目指す中国系アメリカ人女子学生のための奨学基金として使う。」などと取り決めを結んだ上で寄付が行われるわけである。大口の寄付者(当然、卒業生が中心)に対する感謝の念をあらわすため、大学が寄付金で作ったFundや建物・施設に寄付者の名を冠することも広くおこなわれている。Beckman博士がその名を冠したベックマン研究所(The Beckman Institute for Advanced Science and Technology)を建設するために母校イリノイ大学に寄贈した金額は、なんと4000万ドルである。同博士は、ほぼ同じ時期にもう一つの母校California Institute of Technologyにも3000万ドルを寄付してやはり研究所を作らせているから、寄付金の総額は邦貨(当時)で100億円近い。(日本でも東京大学の安田講堂や大阪大学の松下講堂がそれぞれ出資者の名を冠しているのはご存じのとおり。)
ベックマン研究所ができたころ筆者はイリノイ大学で日本語のTeaching Assistantをしていた。寄付の額を聞いて羨ましさのあまり、受け持ちクラスの学生に対して「みなさん早くベックマン先生みたいに偉くなって、日本語科に新しいビルと研究基金を寄付してください。」と言ってしまった。
超ハイテクの最前線、 California Institute of Technology = CalTech(私立)↑
http://www.caltech.edu/
新入学生のSAT平均スコア、つまりセンター入試(のようなもの)の「偏差値」が全米で一番高いのがカリフォルニア工科大学(Califonia Institute of Technology = CalTech)。平たくいえば、アメリカで一番「頭のいい」学生が集まってくるところである。量子コンピューターなど、本格的な実用化が21世紀中葉以降を待つといわれる超ハイテクの研究開発では、MITより CalTechの方が先を走っているとみなす専門家も多い。かの米国宇宙航空工学の総本山たるジェット推進研究所(The Jet Propulsion Laboratory)もCalTechの附属機関である。
場所は気候温暖な南CaliforniaのPasadena、しかし車社会Los Angeles 近郊の山地をひかえた内陸寄りは、日中に海から寄せる風が街中の自動車の排気ガスをかき集めてふきだまり、大気汚染がひどいので呼吸器系が弱い方にはおすすめできない。日中、上空から大Los Angeles圏(=Los Angeles市と近郊の衛星都市をあわせた総称)を見下ろすと、大気が黄色く濁っているのがよくわかってゾッとする。Pasadenaは光化学スモッグの名所でもある。
スーパー・コンピューターの総本山、University of Illinois at Urbana Champaign = UIUC(州立)↑
州立大学最大の工学部↑
私立工科大学の頂点をMITとすれば、州立大学最大の工学部を擁するのがイリノイ大学(University of Illinois at Urbana Champaign = UIUC)である。
スーパーコンピューターの総本山↑
とりわけ現代科学技術の進歩に不可欠の最強兵器、スーパー・コンピューターの研究開発利用ではイリノイ大学は全米の総本山である。SFの巨匠、Artuhr Clarkeの名作『2001年宇宙の旅』に出てくる超高性能コンピューター「ハル9000」も、生誕の地はイリノイ大学工学部があるIllinois州Urbana市と設定されており、それが縁でClarke氏がUIUCのスーパー・コンピューター研究所の式典に招かれたこともある。作中「ハル9000」の誕生年とされる1997年には、その記念行事(Cyberfest 1997)も盛大におこなわれた。
最強の科学技術者陣↑
さらに1987年版の"Who's Who in Technology" (「全米科学技術者名鑑』)の掲載者数では、MIT、UC Berkeleyを大きく引き離して大学別第一位、さらにはIBM、NASAをもしのいだことでも名をはせた(下の図を参照)。

スポーツ天国イリノイ↑
さらにスポーツや福利厚生の施設も抜群で、ジェット旅客機が昼夜をわかたず定期就航する大学付属の空港(Willard Airport)に降り立ち、見渡す限りの広大な大学附属実験農場と牧場を通り抜けてキャンパスに向かう道の右手にはさながら巨大な空飛ぶ円盤のようなバスケットボール館、左手には古代ローマのコロセウムを彷彿とさせるアメリカンフットボールのスタジアムが見えてくる。全米屈指といわれる幾何学的均整美に溢れたキャンパスに至れば、多目的室内競技場、50メートル屋内プール・屋外プール、サウナ室、スカッシュコート、ラケットボールコート、かぞえ切れないほどの数のテニスコート(屋内コートを含む)、世界的な演奏家がしばしば訪れる瀟酒なコンサート・ホール(Krannert Center for the Performing Arts)、そしてゴルフ好きの方は大学直営の本格ゴルフコースもただのような料金で利用できる。
「身体障害者に優しい大学」↑
それでは身体強健なスポーツマンばかりが優遇されるのかといえばさにあらず、「身体障害者に優しい大学」ランキングでも全米一位である。その充実ぶりは、朝日新聞の記事(2000/10/13)でも紹介された。さらに同紙には、松江美季さん(1998年朝日スポーツ賞受賞)が当時留学中であったイリノイ大学について詳しいレポートを連載している。
http://www.kanamori.com/goku/friends/matsue/matsue.html
充実の教育課程↑
もともと理工農学系を中心に発展した大学ではあるが、心理学科や教育学部も非常に充実している。心理学科と教育心理学科を総合したイリノイ大学の心理学研究陣にはおよそ弱点というものがなく、認知・言語・学習・教育・比較文化・臨床・発達・計量・神経生理…とあらゆる分野で超一流の学者を揃えており、深さと広さのバランスを勘案すれば全米最高の心理学研究環境である、というのが筆者の評価である。現に、 1999年発行のUS News and World Report誌大学院ランキングは各大学を個別分野別に評定しているが、そこに挙げられている基礎/応用心理学の6分野─「教育心理学」(3位)、「臨床心理学」(4位)、「実験心理学」(6位)、「発達心理学」(5位)、「産業心理学」(4位)、「カウンセリング」(10位)のすべてにわたって十傑入りしたのは全米でただ一校、イリノイ大学のみである。
その強味を生かして、心理学・コンピューター工学・神経生理学・哲学・教育学・言語学・文化人類学・生化学・生物理学など諸分野の権威を一堂に集めて最先端の学際的な研究を推進しているのが4000万ドルの巨費を投じて設立された世界の脳科学研究のメッカ、ベックマン研究所(The Beckman Institute for Advanced Science and Technology)である。バイオテクノロジーの分野では光合成の研究でも世界一。さらに図書情報科学(全米1位)、建築学(全米1位)、会計学(全米1位)のような実学でも全米最高の課程を擁している…。
と、つい肩に力が入ってしまったのは、筆者の熱い母校愛(1986〜1992年在学)の発露と笑ってお見逃しいただきたい。
逃した大魚↑
思わず知らず、身贔屓が過ぎたようである。このままでは他校関係者の手前、気がひけるので、イリノイ大学の悪い面も少し書いておこう。
Mosaicを世に送り出して一躍インターネット時代の最先端に踊り出たイリノイ大学だったが、その後がいけない。「これは金になる」と思ったのか、開発の主役だった当時二十歳前後のundergraduate の学生達に大学当局が余計な注文をつけはじめ、大学の官僚機構の中でもみくちゃにされてたちまち開発は停滞してしまった。
そこに目をつけた辣腕の経営者がJim Clark博士である。大学の「エラい人」にあれこれ口出しされてすっかりしらけていた当初のMosaic開発チームの学生達を、新しく自分が作ったベンチャー企業、NetScape社にごっそりスカウトしたのである。今度は「打倒、Mosaic!」を合言葉にCaliforniaに結集した彼等が新開発のNetscape Browserのマスコットにしたのは"Mozilla"という、Mosaicを喰い殺す緑色の怪獣であった。その後文字どおりNetscapeに喰われる形で、イリノイ大学はほどなくWeb Browser開発の一線から姿を消してしまう。その後のNetScape社が世界のインターネットの桧舞台で縦横無尽に活躍する優良企業に成長し遂にはあの大マイクロソフトをして経営方針の大転換を余儀なくさせるほどの脅威を与えるに至ったことは、今さらここに繰り返すまでもなかろう。
この一連の事件が起きたころには筆者は既にIllinoisを離れていたのでその詳しい経緯は後にNHKの『新・電子立国』を見てはじめて知ったのであるが、筆者の在学中の経験に照らしてみても、あながち偶然の出来事とは思えない。せっかく第一級の設備と人材を擁しながら、とかく経営管理のセンスが悪く杓子定規で柔軟性を欠くためにその潜在的な力量を充分に発揮しきれないのは、イリノイ大学の通弊といえる---と愚痴るのもまた、筆者の母校愛の屈折した露われなのである。
ナンバーワンシンドローム↑
これは筆者の印象に過ぎないので反対意見をお持ちの方もおられると思うが、1980年代末ごろを境に、主に人文科学系のスター教授クラスがイリノイ大学から他校に引き抜かれるケースが目立つようになったような気がする。高等教育の世界では力のある研究者の方がいざとなると動きが早いことが珍しくない。移ろうと思えばいつでも他所の大学から引く手あまたなのだから、当然ともいえよう。
また各種の大学ランキングをみわたすと、全米3位や5位以内に入る学科はイリノイ大学にうようよあるのに、どういうわけか「1位」の学科が少ない。そのため総合力のわりに知名度が低いのもイリノイ大学の泣き所である。そのせいかどうか、イリノイ大学関係者は「一番」と言われると異常に喜ぶ。1986年のこと、キャンパス内で『2001年宇宙の旅』がリバイバル上映されたおりも、作中でハル9000(未来型コンピューター)が
"I became operational at the Hal Plant in Urbana, Illinois..."
と名乗るくだりで場内は万雷の拍手に包まれた。その中でもひときわ熱烈に喝采を送っていたのがかくいう筆者であることは、言うまでもない。
Sykesの著書Prof Scamにも、イリノイ大学に関して辛辣なことが書いてある。イリノイ大学志望の方は、一応目を通しておかれてはいかがであろうか。
認知・計算機科学の王者Carnegie Mellon University = CMU(私立)↑
http://www.cmu.edu/
ソフトウェア、システム面のコンピューター研究、応用では、Carnegie Mellon University が全米一かもしれない。心理学や言語学、経営学、さらには英語学、歴史など人文科学の研究にまで広範にコンピューターがとりいれられており、認知科学のメッカとしてもしられる。
学生一人あたりのコンピューター台数でも、ダントツの全米一である。1980年代に早くも全米の大学の先陣を切り、全学生にパソコンを購入することを義務づけたことからもその未来指向がうかがい知られる。
その先進的な教育研究の成果を示すエピソードにはことかかない。史上最強のチェス・チャンピオンといわれるGarry Kasparovとの世紀の六番勝負に逆転勝ちを収めて(1997年)世界を驚愕させたIBMの超高速コンピューターDeep Blueの開発にあたっては4人の工学博士が中心メンバーとして心血を注いだが、そのうち2人までがCMUの卒業生である。この二人のCMU同窓生こそがDeep Blueの真の生みの親といってよい。しかも、その業績の基礎は学生時代に既に築かれている。当時CMUの博士課程に在学していたFeng-hsiung Hsuが自ら考案したチェス専用のマイクロチップを土台に、級友のソフトウエア専門家Murray Campbellの協力を得て作り上げたコンピューターChiptestこそ、後年IBMのDeep Blueとして世界に知られるようになった超マシンの原型なのである。
ただし、CMUの研究は何かにつけて間口の狭い一点豪華主義で(私立大学は概してその傾向がある)、例えば心理学科は、人工知能研究は最高レベルだが社会心理学や臨床心理学は手薄である。
そういう限界をある程度補ってくれるのが、CMUのキャンパスから歩いていける距離にあるUniversity of Pittsburgh (Pitts)との提携関係である。「何でもコンピューター」のCMUにくらべるとピッツバーグ大学のカラーはやや「ソフト」で「文化系的」に見えるが、実はPittsは全米のスーパー・コンピューター利用の拠点の一つである。同校の心理学科は認知学習・教授理論にかけては全米最高峰といわれていることもお忘れなく。(こういう狭い範囲で頂点を極める大学の名は、おしなべての全米大学ランキングには埋もれてしまいやすい。)なお両校の所在するPittsburgh市はかつては鉄鋼王Andrew Carnegieが築いた製鉄業の街として知られていたが、いまではハイテクとシンクタンクの拠点に変貌している。
全米最高の研究大学University of California, Berkeley = UC Berkeley(州立)↑
http://www.berkeley.edu/
法営文教理工の全分野にわたってバランスよく超一流の陣容を揃えている点では、UC Berkeleyにかなう大学はない。玄人筋には、全米最高の研究大学院大学として Berkeley の名をあげる人が多い。ノーベル賞受賞学者が現役教授陣の中に10名以上いるのも驚異的。
なお、若き日のダスティン・ホフマンが主演した映画『卒業』("The Graduate")の舞台となったのも、 UC Berkeleyである。かつてはベトナム反戦運動の中心地であり、同時にヒッピー運動のメッカでもあったことに象徴されるとおり、時流に敏感に反応する先進性でも知られる。そういう意味では、 Berkeley は「映画にしやすい大学」でもあるのだろう。
ノーベル 賞学者がうようよ湧いて出る究極のresearch university、University of Chicago(私立)↑
http://www.uchicago.edu/
全学1万人にも満たない小規模校なのにノーベル賞受賞者がうようよ湧いて出るのがUniversity of Chicago。卒業生、現・元教授陣を含めた受賞者は30余名。勿論、ダントツの全米一位である。伝統的にシカゴ大学の学問的トレーニングは、ことのほか理論を重視する。少数精鋭主義で、一流の学者を育てることのみを目的にしているような大学。まさに「学問の鬼」の集まりという他ない。
実はこういう大学院中心主義・研究至上主義は、research universityと呼ばれる大学がみな目指しているところなのである。しかし、大学が歳入の多くをundergradate studentの授業料に頼っている以上、学部教育を簡単に切り捨てるわけにはいかない。その、他校が「やりたくてもやりきれないこと」を徹底してやるために、シカゴ大学はフットボール・チームを解散してしまうなど思いきったリストラを行なった。今日の盛名も、その「成果」である。シカゴ大学こそ、究極のresearch universityといってよかろう。
ただし、場所は Chicago市南部のスラム街のど真ん中。最寄りの地下鉄駅で降りると、明らかに麻薬をやっているとわかるオニーサン達が昼間からあたりをふらふらしている。夜中に遊びに出たら命がけなので、部屋にこもって勉学に専心できるのかもしれない。
大学近辺の治安↑
シカゴ大学、南カリフォルニア大学、コロンビア大学など、都会の著名大学の周囲が治安上危険な状態になっているケースは珍しくない。もちろん最初からそんなところを狙って大学を作ったわけではなく、昔は高級住宅街だったところがいつの間にかスラム化するなどして昔からの住人が転出し、大学だけが残ったというのがほとんどである。
むろん大都市圏の大学の周辺が全て危険だというわけではなく、ハーバード大学やジョージタウン大学、トロント大学などの近辺は今も閑静な街並みを崩していない。こういうことを気になさるなら、大学選びにあたって一応調べておかれた方がよろしかろう。
桁外れのスケールで躍進する南部の獅子、University of Texas = UT(州立)↑
http://www.utexas.edu/
石油王国Texas州の最高学府、University of Texas(本校所在地Austin)の資産額は、1970年代に一時Harvardを抜いて全米第一位となった。石油景気隆盛のころは、うなる札束にものをいわせてMITのノーベル賞学者を引き抜き、MITの学長を激怒させたこともある。その分、設備にも金をかけている。学問的にも、土木工学、石油化学などでは全米最高レベルである。言語学、心理学、教育学、コンピューター工学なども超一流の学者を擁している。
昨今は一時期ほどの派手さはないが、依然UTが南部の眠れる獅子であることはまちがいない。大学所有の敷地内に石油が湧き出しているという一事からも桁外れのスケールがうかがいしれよう。
早期エリート教育の極致、Amherst College、Swarthmore College(ともに私立)↑
http://www.amherst.edu/
http://www.swarthmore.edu/
Liberal-arts Collegeとは、独自の大学院課程をもたずundergraduate educationに専心する4年制大学のことで、そのほとんどは私立であるが、その中ではAmherst CollegeとSwarthmore Collegeが双璧と言われる。大きい大学ではどうしても大学院での研究が主体になって教授もundergraduate studentsに目がいきにくくなる傾向がある。(詳しくは、SykesのProf Scamを参照されたい。)大学1年生の時から少数精鋭で徹底したエリート教育を受けたいと思えば、むしろ質の高いliberal-arts collegeの方が適しているかもしれない。そういう大学では在学中、齢十代にして既に教授と共著で研究論文を学術雑誌に発表する学生もいる。教授陣が博士候補生やpost-doctoral fellowsの相手で手一杯のHarvardやUC Berkeleyにあっては、滅多に望めない贅沢である。授業料が高い分、概して一流私立liberal-arts collegeの施設は調度や建物、コンピューター・ラボなども含めて金がかかっており、学生一人あたりの設備の充実度では大きな州立大学を凌ぐことも多い。
現にAmherstやSwarthmoreの卒業証書はIvy Leagueの学士号とくらべて何ら遜色がないとみなされ、そこを卒業したあとIvy Leagueの大学院に進む学生も多い(現在の日本にはこれに相当する存在がないので理解するのが難しいが、戦前の旧制高校「一高」や「三高」のようなものと考えておかれれば多少ニュアンスがつかめるのではないであろうか)。日本政府の外務省も若手の外交官をAmherst Collegeに留学生として送る研修プログラムを長年にわたり続けている。これらの大学の教授陣も一流のresearch universityに匹敵する業績をあげ、なおかつ教育者としても優れていなければならない、という非常にハードな要求をこなしているあたりは、感服するほかない。
ただ、liberal-arts collegeの宿命は大学の規模が小さいため広い視野にまたがる知的刺激が不足しやすいということと図書館の蔵書の貧しさだが、Amherst Collegeから歩いて行ける距離にはUniversity of Massachusettes (UMass) at Amherstという規模の大きい州立大学もあり、UMassを含む近隣4大学と単位の交換が可能なので(Five College Consortium)、時には足を延ばして他大学の雰囲気も味わえる。
なお、Amherst Collegeでは、自分のクラスの学生との「交際費」として各教授になにがしかの予算をわりあてているとのこと(自宅に学生を招いて、パーティーを行う費用の足しにする教授が多い)。大きな大学ではとても考えられないことである。一番大事な「お得意様」としてこれだけ大事にしてもらっているだけに、有名liberal-arts collegeの学生は概して頭が高いという印象を持たれているようである。
外国語教育のメッカ、Middlebury College(私立)↑
http://www.middlebury.edu/
北米の大学の中で一番密度の高い外国語教育が受けられるという名声が高いのがMiddlebury College である。外国語の1クラスの人数は10人以下、など、非常に恵まれた条件で授業が受けられ、コンピューター利用にも力を入れている。普通の大学では語学学習用のコンピューターラボの担当技官は目立たぬ「縁の下の力持ち」的存在だが、Middleburyでは副学長直属で腕が振るえる、「陽の当たる」ポジションである。力の入れようもうかがわれると思う。ラボの設備は勿論、最新鋭である。実際、教育技術に長けた教授陣を揃えているとのこと。
Middlebury はまた、全米に名高い夏の外国語集中講座が開かれる舞台でもある。
米欧両大陸の知性を結集するMcGill University(カナダ、ケベック州立)↑
http://www.mcgill.ca/
認知発達研究の巨人、Jean Piaget(フランス系スイス人)が長らく米国の心理学界では受け入れられなかったことをはじめとして、アメリカの学界は概して欧州大陸諸国との結び付きが弱い。ロシア心理学界の泰斗Vygotskyの業績がアメリカで認められるようになったのも、比較的最近である。アメリカ人が概して外国語に弱いこともその一因であろう。アメリカが「巨大な島国」といわれるのも、由なきことではない。
それにくらべれば、カナダは外国語教育に国をあげて取り組んでおり、多文化共存の伝統もあって、少しおおげさに言えば「バイリンガルはあたりまえ」というお国柄である。とりわけフランス語圏で大陸東岸に位置するQuebec州はフランス文化圏と直に結び付いていて、ヨーロッパ大陸での新しい研究動向がいちはやく伝えられる。地続きのアメリカとももちろん密接に交流している。偏りなしに米欧両大陸の研究動向を把握してそれぞれの長所を学びとろうと思えば、これに勝る土地はないかもしれない。
その州都Montrealにある英語系大学の最高峰McGill Universityともなれば、まさに英米文化圏とフランス文化圏の両方の学問の粋を吸収するには最高の環境と言えよう。フランス系住民とアングロ系住民がせめぎあう土地柄を反映して、McGill Universityの心理学科はbilingualism研究の世界最高峰である。その他の分野でも、大脳生理学の大御所Penfield博士をはじめ、McGill Universityは世界をリードする研究を続々と送り出している。
クラシック音楽の頂点、The Julliard School(私立)↑
http://www.juilliard.edu/
New York市にあるJulliard Schoolといえば、いわずと知れたクラシック音楽家養成の最高峰。日本では「ジュリアード音楽院」と呼ばれることが多いが、実際には音楽のみならず、ダンス等の部門も擁するperformance artsの総合教育機関である。ジャズピアノ専攻の学生が世界的なクラシックピアニストから個人レッスンが受けられるなど、ジャンルの壁を越えた英才教育を施すことでも知られている。
州立のJuilliard、Indiana University(州立)↑
http://www.indiana.edu/
中西部の片田舎にあるためもあってJulliard Schoolほど派手ではないが、実質的なレベルでは優にJulliardと互角の勝負ができるといわれるのがIndiana University at Bloomington の音楽学部(School of Music)である。理論と実技の両面にわたってバランスのとれた教育をしていることに特色があり、アメリカの音楽理論家の養成機関としての名声は揺るぎない。
「ニューヨーク! マンハッタン! ウッディ・アレン!」 New York University = NYU(私立)↑
http://www.nyu.edu/
巨匠Woody Allenや鬼才Spike Leeを生んだのが、New York University の映画学科(US News & World Reportの1997年の大学院ランキングで、全米一位)。そのせいか、二人ともNew York Cityを舞台にした作品が目立つ。自分の作品を撮れるようになるまでに長年助監督を勤めて…という下積みの慣習がアメリカの映画界にはないので、若い才能がどんどん開花していくのは「さすが」という他ない。
New York市といえば全米一の国際都市で、その中心マンハッタンは国連本部のお膝元でもある。その国際法の分野でもNew York University 法学部はHarvardと首位をわけなあうなど、これまた堂々の実績である。
連邦政府お膝下の利をフルに活用する、Georgetown University(私立)↑
http://www.georgetown.edu/
【以下、ジョージタウン大学日本語科ディレクター・森美子博士(イリノイ大学教育心理学科博士課程卒業)からいただいたお便りをもとに、原文の文体を尊重しながら筆者が補足・編集・再構成したものです。文責は筆者にあります。】
Georgetown Universityの最大の強みは、首都ワシントンの政府機関に近いという土地柄と、国際政治・国際法の研究教育の質の高さでしょう。School of Foreign Service (SFS「国際関係学部」) は言うまでもなくGeorgetownの看板学部です。SFSからはアメリカだけでなく国連などの世界機関で活躍する人材を続々と生み出しており、その中にはビル・クリントン大統領や緒方貞子氏(国連難民高等弁務官)も含まれます。(クリントンはハーバードの卒業生ですが、Georgetownでも勉強しました。)
- 連邦政府国務省
- 連邦政府国防総省
- 連邦国会図書館
- Center for Strategic and International Studies (CSIS「戦略国際研究所」http://www.csis.org/)
など研究のフィールドと素材と資料が山ほどあります。
ワシントンという土地柄、学生はundergraduateの時からよく連邦政府のinternなどをして、経験を積んでいます。(因みに、連邦政府のintern制度といえばクリントンの浮気の相手・Monica Lewinskyがホワイトハウスのインターンだったことで一躍注目を浴びましたが、Lewinsky自身はGeorgetownの学生ではありません。)
米連邦政府の外交官試験に合格した人の半分ぐらいはGeorgetownの卒業生と言われています。連邦政府に勤めたい学生の中でも、特に国務省に入って外交官になりたい学生がどっとGeorgetownに来ます。アメリカ人にとって外交官になる一番の近道というわけです。
Georgetownの学生は、よくも悪くもcareer-oriented。undergraduateのときから、将来の目的がはっきりしていて、そのためには
「いい成績をとって、internで経験積んで」
と考えている。academiaっていうより、非常に質の高い職業訓練校って感じ。
Asian Libraryも非常に充実している。日本語の本もたくさんあります。ワシントンのハーバードって言ってもよい感じ。George Washington UniversityやAmerican Universityの先生が言っていたけど、ワシントン近辺では必要な日本語の本を探しているときGeorgetownに来るのが一番早いそうです。
もう一つ、Georgetownは全米屈指の規模と陣容の応用言語学課程を擁しています。Faculty of Languages and Linguistics (FLL)という、Foreign Languages とLinguisticsを専攻する学生のために独立したSchool(日本の「学部」にほぼ相当する)がある大学って、Georgetownだけぐらいとちゃう?普通は、Department(「学科」)なのにねぇ。で、外国語科と言語学部は全部このFLLの下に組織されているのですわ。ここのLinguistics (現在はApplied Linguistics色が非常に濃いけど)が伝統的にいいとされているのは、きっと
「私たちは独立したSchoolなのよ〜ん!」
という自負から来ているのではないかと私は思っています。
さらにおもしろいのは、ここを卒業すると、BS(Bachelor of Science「理学士」)がもらえるのですわ。Arts(「人文科学」)ではなく、Science(「理学」)ですよ!私は、他の大学のことはあまり知らないんですけど、Foreign LanguagesやLinguisticsを勉強してScienceのDegree が貰えるというのもここだけとちゃうやろかと思っています。今それをBA(Bachelor of Arts「文学士」)に変えようとしているそうなんだけど、卒業生の猛反対にあって、うまく進んでいないんだそうです。これもGeorgetown卒業生の
「我々は、科学者だ!」
というアメリカらしい誇りから来ている気がします。
さらに、応用言語学や外国語教育の研究者にとっても
- 連邦政府教育省(http://www.ed.gov/)
- The National Capital Language Resource Center (NCLRC http://www.cal.org/nclrc/)
- Center for Applied Linguistics(CAL http://www.cal.org/)
などの機関が地元にあることの有利はいうまでもありません。
ね、なかなかいい大学でしょ?
映画芸術の殿堂、California Institute of the Arts = CalArts(私立)↑
http://www.calarts.edu/
映画芸術の専門家の登竜門とされるのがCalifornia Institute of the Arts。1961年の創立はWalt Disneyのお声がかりだった。場所もDisneylandのお膝元である。
コングラの最高峰、Ringling School of Art and Design (私立)↑
http://www.rsad.edu/
コンピューター・アニメーションだけに限れば、FloridaにあるRingling School of Art and Designを全米一とみなす専門家も多い。因みにRinglingというのは往年のサーカス王の名前である。
自分の「世界一の大学」を探す↑
長々と書き連ねたが、ここで様々な大学を御紹介したのは、「これら有名大学のどれかに入れなければ留学する意味がない」などと言いたいからではない。むしろ全く逆である。どの大学が「いい」かを判断するには多様な尺度・物差しがあり、どの尺度ではかるかによって大学の優劣評価は様々に分かれうることを例証したかったのである。
またこの章では、紹介した諸大学が「ハーバードよりいい」プラス面を強調したが、内側に回ってみればどの大学にも何らかのマイナス面が伴うことはこれまた世の常識であろう。(イリノイ大学については、内部を知る者として上に御紹介したとおりである。)
大学を選ぶ立場としては、自分の将来目標に照らして適切な大学評価基準を検討することが何よりも大切である。それにしたがって応募先を決定し、入学選考委員を納得させられるような願書や必要書類をそろえるという作業が続く。(状況によっては、今取り組んでいる研究をまとめあげることが入学許可を得るための最短距離である場合もある。)入学するために必要なTOEFLスコアをどうやってあげるか、というような技術論もその戦略目標達成のための手段としてはじめて意味を持つ。
結局、世の評判・知名度や既成のランキングは、参考程度にしかならない。上級留学を志すなら、自分にとっての「世界一の大学」を自力で探し当てるぐらいの覚悟が必要である。学問的にもその他の点でもあなたが最大限に成長できる機会を与え、将来を充実させてくれる大学が、あなたにとっての世界一の大学なのである。
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